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秘境

 秘境という場所は世界中に存在する。そのいずれもが、人類にとっては最悪の場所であり、種族として大きく発展してきた人類を根本から否定するかのように力によって拒み跳ね返してきた。

 それでも人類は、その場所に夢を求めて挑み続ける。未知というのは感情を様々な方向に沸き立たせる要因であり、期待や恐怖がさらに人類を深みへとハマらせていった。


 仮にそれとはまた別の感情を持って秘境に挑んだとしよう。するとどうなるか……結果は変わらない。激しい生存競争の中で進化を続けていく秘境は全てを平等に拒むのだ。


「クッソ! どうなってんだこの場所は!?」


 3匹のグランバードを退けたかと思えば、明らかに強そうなライオンのような魔獣が襲ってくる。


「精霊魔法!」


 俺の合図と共に精霊は俺の中に溶けるように入っていく。俺はそれを確認してから迫りくるライオンのような魔獣に斬りかかり、一撃でその体を真っ二つに斬り裂く。俺の剣の腕で秘境の魔獣を一撃で倒すことは出来ないが、ステータス上でそれが可能な相手ならば理級精霊の使える精霊魔法により一撃で倒せるように攻撃することが出来た。


 秘境に入って1週間程が経っただろうか。辛うじて精霊魔法のお陰で怪我無く戦えているものの、休んでいられる時間が極端に短い。1度戦闘が起これば、しばらくは気を休めることが出来なかった。

 この秘境は果ての秘境と呼ばれる場所で、どこの国の領地でもない本物の秘境と言える場所だった。その為国の領地にある秘境と違い情報が一切無く、挑んだとしても生きて帰れる保証は秘境の中でも一番低いとまで言われていた。


 では何故そんな秘境に挑んでいるのかというと、魔力が豊富にある場所だからだ。

 魔力とは空気中に浮くMPのようなもので、その魔力を人が取り込むことによってMPと呼ばれるようになる。つまり魔力が多いところでは、失ったMPの回復速度も非常に早く、場所に適応さえすれば魔法を使う者にとっては絶好の場所なのだ。


 俺はレジケル王国で魔法のことを詳しく知った。魔法の種類もかなりの量を目にして、今であれば一般的に使われる魔法ならば大抵は使うことが出来る。

 様々な魔法を覚える中で、とある資料にあった闇魔法に目が留まった。

 一時的に姿を変えることが出来る魔法であり、俺が生み出そうとしている魔法に限りなく近い魔法と言える。その魔法は、姿を変える段階で大量のMPを消費し、且つ姿を変えている間もMPを消費するという燃費の悪いものだった。

 俺が生み出す魔法は完全に別の種へと至らしめる魔法なので、一度変えてしまえばMPを消費するということは無いだろうが、姿を変える段階でどれだけのMPを消費するか分かったものじゃない。言語を統一する効果なども付けたいので、一体どれだけのMPが必要なことか……

 だが、MPの最大値さえ上げてしまえば、魔法を使って姿形を変えながらMPを回復するのが間に合うんじゃないかという考えに至り、この秘境を選んだのだ。


「そっちは頼んだ! 俺はこっちをやる!」


 俺は現在拠点とする場所付近の魔獣を片っ端から狩っていた。精霊魔法を使って家でも作ろうかと考えていたのだが、如何せん周囲に敵が多すぎる。これでは家を作っている段階で邪魔が入ってそれどころではない。仕方がないので、周囲の魔獣を狩りつくすまでは岩肌に穴を開けて魔法で塞ぎ、そこで寝ていた。


 倒しても倒しても魔獣は出てくるので、このまま終わらないのではないかと思ったこともあったが、日に日に出てくる魔獣の数は減りつつあった。この調子ならば、数日後には大半が片付きそうだ。


 それにこの魔獣狩りは無意味ではない。レベルという形で、確かな糧となっていた。

 ちなみに現在の俺のステータスはこんな感じだ。



【ヨゾラ】

 レベル228 HP2816 MP4078 攻撃1634 防御1290 特功3565 特防1153 素早さ1555

 精霊:理級光精霊

 魔法:平級火属性 平級水属性 平級土属性 平級闇属性 豪級闇属性 王級光魔法 理級精霊魔法

 称号:ヨゾラの作者 理を歩む者



 精霊と契約してからのレベルの上がり方が半端じゃない。どれだけ秘境という場所が過酷なのかはステータスを見ただけでも分かるだろう。


 ちなみにこの世界で最強格の人達は、ステータスが全体的に5000を超えているらしい。特出したものに関しては5桁いっているそうだ。レジケル王国で耳にしただけなので本当かどうかは分からないが。

 俺は理級精霊のお陰でどうにかなっているが、本来ならばそのレベルの者達が挑むような秘境なのだろう。この秘境を全て探索しきれるかは、そのレベルになっても分からないが。

 果ての秘境と呼ばれる場所はひたすらに広大で、俺が今いるこの場所もまだ中腹にすら辿り着いていないだろう。基本的に秘境は奥に行くほど魔獣が強くなるらしく、こうして秘境の魔獣と戦っていて思うが、最奥に生息する魔獣に勝てる奴などいるのだろうかと思ってしまう。


「ふぅ……」


 一先ず魔獣ラッシュは終わった。昨日に比べて違和感を覚える程少なかったが日も落ちてきたことだし、今日はこの辺で終わるのが妥当だろう。


 精霊に手招きをして、今日は終わりにすると伝えて仮となっている拠点に戻ろうとした時、突然地面が揺れた。地震の揺れ方ではない、何か大きなものが近くに落ちたような揺れ方だった。

 十中八九魔獣だろう。俺は収めた剣を再び構えて、周囲に意識を集中させた。耳を澄ませていると、何かがこちらに近づいてきている音が聞こえてくる。

 徐々に近づいてくる音の方向に目を向けた瞬間だった。強大な赤いドラゴンが大きな口を開けて迫ってきていた。


「やっべっ!?」


 俺は反射的に伏せる。奇跡的に判断は正しく、スレスレで回避し、股の間を潜ることに成功した。


「グㇽㇽㇽㇽㇽㇽッ」


 ドラゴンは立ち上がる俺を睨みつけながら威嚇するように唸り声を出している。あまりの恐怖から即座に逃げだしそうになるが、そうしてしまえば簡単に追い付かれてやられるので気合でこらえる。


「もしかして魔獣が少なかったのはこいつから逃げたからか……? 俺を見れば襲ってくるくせに、明らかに強い奴相手には一目散に逃げるのかよ」


 先程感じた違和感の正体は確実にこのドラゴンのせいだろう。明らかに俺が狩っていた魔獣とはレベルが違う。


「勝てるか……いや、勝つしかないのか……」


 俺がいつでも仕掛けられる体勢に入ると、精霊もやる気満々、やってやるという感じで俺の横に並ぶ。


「精霊魔法で一撃で決められるか?」


 精霊は2度点滅する。以前に決めていたことで、1度の点滅で肯定、2度の点滅で否定となっていた。つまり、今の俺じゃあ精霊魔法込みでも一撃じゃ仕留め切れないということだ。


 ドラゴンから目を離さず一瞬だけステータスを開いてMPが回復しきっていることを確かめた。


「周囲のことは考えなくていい。MPのこともだ。出来うる手段を全て使って攻撃してくれ」


 精霊は1度点滅する。やろうと思えば聖級の魔法も行使できるが、これまでは周囲への影響を考えて使用を控えさせていた。威力が高すぎる為に岩肌なんかも簡単に崩してしまうので、俺にも危険が及ぶ可能性があったからなのだが、出し惜しみをしてドラゴンを仕留められなければ同じことだ。


 精霊は溜めに入る。光聖級魔法のフォトンブラストを使うつもりのようだ。

 俺は自身が食らわないように一歩下がると、精霊はフォトンブラストを発動させる。光のレーザーがドラゴンに向けて一直線に飛んでいく。

 ドラゴンは回避を選択するかと思ったが、口から炎のレーザーを吐き出してフォトンブラストを迎え撃った。


 2つのレーザーが拮抗している間に俺は側面からフォトンレイを打ちながら接近した。

 フォトンレイが直撃したドラゴンの鱗には少しの傷しか出来ていないように見えたが、小さな範囲でもしっかりと肉まで届いており、炎のレーザーが少しだけ弱まった。

 そのおかげもあって、フォトンブラストを抑えきれなくなり、顔面にレーザーが直撃してドラゴンがよろけた。


「精霊魔法!」


 聖級魔法の直撃を受けてよろけただけなのが驚きだが、チャンスなのには変わらない。俺は精霊魔法を使って少しでもダメージを稼ぐために斬りかかった。

 精霊魔法によりあまりいい剣と言えない剣でもドラゴンに傷を負わせることが出来ている。確実にドラゴンの体には傷が増えていき、血も流れ出した。


 ドラゴンが体勢を立て直すタイミングで精霊魔法を解除し、魔法による攻撃に切り替える。

 精霊も小さいが確実にダメージを与えられるフォトンレイや、手数の多い聖級魔法であるフラッシュレインといった魔法を使って攻めている。このままいけば、その内に勝つことが出来そうだった。


 が、認識の甘さを直後に思い知らされる。ドラゴンは翼を広げて巨体からは考えられない速度で上空に飛びあがった。

 かなり高くまで飛ばれたために魔法が届かない。止まって何かをしようとしているようだったが、目視することも叶わなかった。


 嫌な予感がした。その瞬間、ドラゴンの口辺りが光ったかと思ったら、地面を縦に分断するかのような軌道で炎のレーザーが地上の俺に牙を剥く。


「があっ!?」


 何とか炎のレーザーが直撃するのは避けたものの、巻き上げられた周囲の岩の破片が俺の腕に突き刺さる。


「ってぇ!!」


 無理やり岩の破片を引き抜いて応急処置(キュアーバンド)を巻きつける。その間にもドラゴンは俺目掛けて落下してきていた。

 無理やり回避したこともあり、次の回避が間に合わない。絶体絶命かと覚悟したが、精霊が俺とドラゴンの間に飛んできてフォトンブラストを放った。

 フォトンブラストはドラゴンに直撃する。しかし多少のダメージは覚悟しているのか、速度は落ちているがそのまま落下してきている。


 こんなところで終わるのか……終わりたくない、まだ異世界を満喫していない!


 俺は痛む身体に鞭を打って立ち上がる。


「精霊魔法を!」


 俺の言葉に精霊は否定するように点滅する。


「いいから早くしろ!」


 余裕のない俺の怒鳴り声で、精霊は意を決したように俺の中に入っていった。

 迫るドラゴン、どんな人間であってもあんな巨体に潰されれば死んでしまうだろう。


「俺は……ヨゾラ物語の、主人公なんだよ! こんなところでドラゴンに潰されて死ぬか! 主人公ならこの逆境で倒すもんだろ! そういうもんだ!」


 俺は叫び、レベルの上昇により上がったステータスを余すことなく使って跳ぶ。

 迫るドラゴンから目を逸らさずに睨む。言葉にしたからだろうか、本当に負ける気がしなかった。


 剣とドラゴンが触れる。やけくそに振り抜いた俺の一撃は、驚くほどすんなりドラゴンの体に食い込んでいき、縦に綺麗に斬り裂いた。

 大量の血を浴びながら着地する。地面に落ちた2つに割れたドラゴンに目を向けるが、勿論起き上がってくることはない。


「はぁ……はぁ……見たか! これが主人公の力だ!」


 言葉を吐いてから地面に座り込む。精霊は俺の中から出てきて心配かけさせるな! とでも言っているように点滅しながら俺の周りをグルグルと回っていた。


「どうだ、道理を越えてやったぞ。これがお前のパートナーだ」


 笑いながら精霊に言ってやると、精霊は呆れたような嬉しいような様子で俺の肩の上で落ち着いた。


 俺は平級水魔法で血と汚れを落としてからドラゴンをアイテムボックスにぶち込んで仮の拠点に戻る。

 夕食でドラゴンの肉を焼いて食ったが、あのタフさが嘘のように柔らかく美味しかった。満足である。


 その日は死んだように寝て、次の日にはレベルアップの影響か身体が軽く、魔獣狩りが捗ると思って意気揚々と出て行ったが、魔獣は数匹しか見つからなかった。どうやら殆どの魔獣は逃げ出したまま帰ってこないみたいだ。魔獣は気配にも敏感なので、ドラゴンを倒した俺に恐れて簡単には近づいてこないだろう。


 死ぬような戦いだったが、終わってみれば拠点を作るのに最適な環境が整っていたのだった。






自由な女神「ヨゾラ君は秘境の中でも特に難易度の高い場所を選んだみたいだね。勿論僕くらいになると他の秘境と変わりないけど、ヨゾラ君にとってはかなり違うだろうから今後も気を抜かずに頑張ってほしいね」

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