閑話:???
――生まれたのは突然だった。一体どのようにして生まれたのか、それを知る人間はいないが、ソレは知っている。
生まれた理由だけではない。自身がどういった存在か、どのような力があるか、その全てを生まれた瞬間に理解し、それを正確に飲み込んだ。
(ここは……何処かの森の中か)
何の変哲もない森の中を見渡すと、周囲には自身を敬うように飛ぶ自身と同じ存在だが同格ではない存在と1人の人間の姿があった。
(この人間が儂の生まれた理由のようじゃの。今はまだ大した力は持ってないようじゃが……内に秘めたものが凄まじいな)
その存在は果てしなく大きな可能性を持って生まれてきた。しかし目の前の人間はそんな自身と比べても見劣りしないどころか、その果てが見えない程の力を秘めている。
恐ろしいと感じるが、それと同じくらい誇らしいとも感じた。その人間は自身のパートナーであり、生涯を通して寄り添っていくことに異論はない。喜んで力になろうと思う。
ソレは早速自身のパートナーに挨拶しようと近づく。
(よろしく頼む―――儂にはまだ名前が無いのでな、何か良い名前でも付けてくれ)
嬉しいという感情がソレの口調を嬉々としたものにさせる。
(おい、聞いておるのか? ―――よ、儂はここだ!)
しかし、どれだけ声を掛けようとも人間が気が付く様子は無い。周りをグルグルと飛んでみたりもするが、それでも何の反応も示さなかった。
(儂に気付くのだ! ちょ!? 何処へ行く!?)
人間はそのまま何処かへ歩いて行こうとする。慌てて追いかけるが、気付かれていない以上はこうして追いかけてきても意味がないことだった。
ソレは考える、どうすれば自身のパートナーに気が付いてもらえるのかを。だが、どれだけ考えても答えが出ることは無い。ソレは生まれながらに自身に関することや、それ以外にもある程度の知識を持って生まれてきたが、自身のパートナーに気が付いてもらう方法は知らない。
(おい……待つのだ……)
焦燥感と忌避感に駆られ追いかけていたが、やがてその感情は絶望感へと変わり、遂にはその場に止まってしまった。
(辛い、なんなのだこの感情は……)
感情、というものをまだ深く理解している訳ではないが、この感情を抱いたままここで立ち止まってしまっては、本当に全てを失ってしまう気がした。
(ダメだ、思考を停止してはいかん。気が付かないのは姿が見えていないのと声が聞こえてないせいか……そもそも儂を認識する術がないのならば気が付かんのも仕方がない。ならば、―――がその術を手に入れるまで近くにいよう。その時に儂が近くにいなかったせいで同種の弁えないやつがパートナーとして認識されては堪らん。―――には儂を生み出した責任もある。しかと責任は取ってもらわねば)
今はダメでもいつかは、そう思ってまた動き出す。たとえ認識されていないのだとしても、傍にいるのがパートナーの役目だとソレは疑わず、ただ今は付いていくのみだった。
その存在は―――の意図しないところで物語に介入していく。神すらも簡単には介入することのできない物語に介入したというのは本来ならば在り得ないことなのだが、まるで運命にでも導かれるように何の違和感も無く。
それは特異な存在がそれを強く願ったからなのか、いつか出会うことが道理なのか……いずれにせよ、強い意志のもとで綴られ始めた物語なのは間違いない。
国から国へと渡った―――と、ソレが出会う日は近い。その出会いが物語にどのような影響を及ぼしていくのか、どのような関係へとなっていくのかは、ただ1人の物語を綴る作者であり主人公でもある人間次第だ。
自由な女神「何か重要な出会いがありそうな予感!? いつ出てくるか楽しみだね」




