セラフィと精霊祭2
macの文字打ちに感動
「それにしても、この世界は本当に変わったのう……こうして見ているだけでも人間じゃない種族が溢れかえっておる」
「そのあたりは俺にとって一番嬉しい変化だな。まあ、その筆頭は確実にお前だろうが」
「ふむ、思えば儂は最古の獣人という扱いになるのか……あまり実感は湧かぬな」
俺がこの世界に転生して、初めに変化を願ったのは、人間以外の人種……今で言う獣人が現れることだった。
現れたと言うよりは、俺が生み出したのだが、その獣人がしっかりと世界に根付き、その後の変化まであったのは、大変嬉しいことだ。
その獣人の中で、初めて生まれたのがセラフィだ。
言われてみなければ考えることもなかったが、確かにセラフィは最古の獣人ということになる。
まあ、その威厳があるかと言われれば甚だ疑問ではあるが……基本ポンコツだし。
「む、なにやら失礼なことを考えておるな」
「な、なんでバレた……!?」
「ヨゾラと最も長くおるのは儂じゃからな」
最近のセラフィは無駄に鋭くなった気がする。
いや、まあ無駄ではない部分ももちろんあるのだが……
なんだか、ノーヴィストで暮らすようになってから、セラフィにもだいぶ変化が出てきた。
正確に言うならば、サクラと出会ってからか……周囲をよく見るようになり、様々なことに気が付いたり気遣ったりできるようになっている。
元々セラフィは、基本ほとんどのものに興味を持っていなかった。
当然対象に抱く感情の強弱はあれど、大雑把に言えばだ。俺や、ゆで卵、友人であるセシルやルーシェやアノン、俺の恩人兼友人であるクレーティオ以外のほとんどにだ。
だが、サクラという家族と呼ぶに近い存在や、一応守護の対象であるノーヴィストに住む獣人達がいることにより、世界に向ける目が広くなった。
今のセラフィは以前に比べて、圧倒的に人らしくなったと言えるだろう。
もちろんそれは嬉しい変化だ。俺があまり言えた口ではないが、人同士の付き合いを最もっと深めていってほしいと思う。
「にしても、求められる実力も相対的に高くなったよな。500年前の俺、ほとんど世界最強っぽい立ち位置にいたのに」
「まあ、今も世界最強レベルまできているのは間違いなかろう。世界最強と言い切れぬのが、今の世界の怖いところじゃがな」
まだ知らないだけで、強者がいそうなのが今の世界なのだ。
実際、先の戦争ではレナードとかいう化け物みたいな奴が出てきた。疲労していたからこその苦戦はもちろんあっただろうが、万全の状態でも全然負ける可能性はあったと思う。
味方だが、アルマも俺に対抗しうる強者だ。魔王の対として限りなく高いポテンシャルを有し、実際本気で戦いことになった場合は勝敗がわからない。
それ以外にも世界は広い。俺が知っているのは3つの国だけだが、その外……海なんかを超えた先に大陸があれば、まだ見ぬ強者が存在している可能性もゼロではない。
まあ、そちらには俺が生み出した獣人がいるわけではないので、獣人がいなかった時の世界レベルかもしれないが……
「儂もまだまだ強くならねばな……あんな醜態は晒しておれん」
「なんだ? 珍しく弱気になっているのか?」
「うむ、まあそうかもしれんな……実際儂は何もできんかったし、多くのものに迷惑をかけた。ヨゾラも、失うところじゃったしな……」
あの時のことを思い出して、本気で弱気になっているみたいだ。
俺もセラフィの前で無様にもボロボロな姿を晒してしまったし。それを見ていることしかできなかったセラフィが自分を責めているのは想像できる。
前に、ケルベロスとかいう魔獣相手にボロボロになったときも散々心配されたしな。
「まあ、あれだ……そんなに切羽詰まって強くなろうとすることはないぞ。無理はしてほしくないしな」
「じゃが戦争の時も、アノンの時もその前も、儂はヨゾラの危機に何もできないことが多かった。せめて……ヨゾラがこちらを気にせずに戦えるくらいには強くならねばなるまい。自身を守れぬ者が他者を守れるわけがないのじゃ!」
セラフィにはこれまで沢山助けられてきたし、実際に俺とセラフィの強さがそれほど離れているわけではない。
実際場面によっては俺よりもセラフィが強いなんていくらでも起こり得る。
だが、それだけでは満足できないのが、俺の相方としていいところであり、セラフィのいいところだ。
こうしてセラフィが俺のために強くなろうとしてくれていることは素直に嬉しい。それは間違いのない事実だ。
それでも、俺にとってセラフィは何を犠牲にしても守るべき存在だ。当初まだセラフィが精霊だった時には抱いていなかった感情が大きく膨れ上がり、それが守るという気持ちをさらに後押ししている。
だからこそ、弱気になっているセラフィに対して、気持ちを聞いたとしても俺がかける言葉とそこにある感情は変わらない。
「セラフィのことは何があっても俺が守るよ。どんなにボロボロになっても、死にかけてもな。敵はどんな奴でも排除できるように強くなってな」
セラフィの頭を撫でながら言う。
思えば、強くなると言いながらも、ノーヴィストでの生活で平和ボケしていたのかもしれない。
上には上がいて、油断をしていれば危機は訪れる。
セラフィが奪われた戦争で、その辺の意識はしっかりと刻まれた。これからも苦戦することはあるかもしれないが、気は抜かない。強さは常に目指していくことにする。
「ヨゾラ……」
もちろんセラフィだけではなく、この世界でできた大切な者たちは全力で守るつもりだ。
しかし、その気持ちの最も大きな部分がセラフィなのは間違いない。
しばらく俺に撫でられていたセラフィだが、少しして俺の方を真っ直ぐに、強い瞳で見つめる。
「ヨゾラがそう思っておるように、儂も何があってもヨゾラを守りたいのじゃ! 守ると言ってくれたのは素直に嬉しい。じゃが、儂の気持ちは変わらぬ。もっと強くなってヨゾラを何者からも守れるようになる」
セラフィもまた、俺と同じで何を言われても変わらない意思があるんだろうというのが伝わってきた。
先程までの弱々しい感じはなく、確固たる意志を持って伝えてきている。
無理はしてほしくないと言ったのは俺だが、それでもただ嬉しかった。
こんなセラフィだからこそ、俺は誰よりも好きになってしまったのだろう。
自由な女神「あ、あれ……? 精霊祭は? 祭り回なのに普通にイチャイチャしてるよ……これが、メインヒロインかっ!?」




