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サクラと精霊祭

 祭りの日程も半分に差し掛かり、しかし人の多さは初日よりも増えている気がする。

 よく聖都にここまでの人達が泊まれたものだ。


 今日はサクラと精霊祭を回る日だ。

 特に待ち合わせなどしたりはせずに、サクラが俺の部屋にやってきてから2人で外に出た。


 サクラは基本的に和服のような恰好をしており、基本的に俺の城にいるメイド達はしっかりとメイド服なのだが、だからこそかサクラのメイド長としての存在感はしっかりと出ていた。

 和服に関しては完全に俺の趣味なのだが、サクラは嫌な顔一つしないし、むしろ気に入っている様子なので良しとしよう。


「何だか、ヨゾラ様と2人きりというのは、随分久しぶりな気がします」

「確かに、そうだったかもな」


 俺の近くには大体セラフィがいるし、サクラと2人だけというのは、そもそもあまり無かった。

 セラフィとは時々2人で出かけてはいるようなので、そっちはあまり珍しくないが、俺と2人の時でも、大体その後にセラフィも巻き込んで何かがある時なので、2人きりとは言い難いのだ。


 何だかんだ、最近はサクラとの時間も少なかったし、俺としてもこうして祭りを回れるのは嬉しい。


「どこか行きたいところとかあるか?」

「でしたら聖都の東側に行きたいです! あちらはまだあまり回れていないので」

「よし、じゃあそっちに行ってみるか」


 前までならば、こうして聞いた時は絶対に俺が行きたいところがないか逆に聞き返してきたものだが、最近のサクラはしっかりと自身のことも考えて物を言うようになってくれた。

 俺としては、やはりもう少し我儘を言ってくれてもいいのだが、そこまでは難しいらしい。

 サクラは立場的に俺とセラフィのメイドだが、ずっとそうだが俺はサクラをメイドというよりは家族だと思っている。

 今、城の中で俺がそう思えているのはセラフィとサクラとビャクだけだ。この3人に関しては、俺は損得鑑定抜きで助けてやれる、大切な存在だ。

 勿論、俺の周囲で慕ってくれている奴らも、何かあれば無理のない程度には助けてやるが、命を掛けたりするほどではない。

 城の中を含めないと、アノンやセシルやルーシェもそうだ。

 前では考えられないくらい、大切な存在が増えたものだ。


「お、サクラ、ちょっと待ってくれ」


 そんなことを考えながら歩いていると、装飾品などが置いてある屋台に、サクラに似合いそうな髪飾りを見つけた。

 ピンク色の花の髪飾りで、サクラの花を連想させる。


「店主、その髪飾りをくれ」

「はいよ! そっちの子にかい? もし良かったら付けてかないかい?」

「それじゃあそうするよ。って言っても俺じゃあ上手く付けれないかもしれないから、頼んでもいいか?」

「そりゃ勿論! ほら、こっちにおいで」

「え? あの……はい」


 とんとん拍子で話が進み、ついてこれてないサクラは戸惑ったまま、言われるがままに店主の方へ行く。

 店主は慣れた手付きで、サクラの髪に髪飾りを付けて、満足そうに微笑んだ。


「ほらできたよ! 似合ってるから見せてやりな!」

「ど、どうでしょうか、ヨゾラ様……」


 サクラは恥ずかしそうに髪飾りが見えるように向きを変える。


「うん、良く似合ってるよ。サクラの可愛さも三倍増しだな」

「も、もう……すぐそういうことを言うんですから」


 普段から俺とセラフィはサクラのことを可愛い可愛いと褒めちぎっているのだが、未だに言われ慣れていないらしい。

 本当に可愛いんだからもう少し自信を持っても良いと思うのだが、こうして照れているサクラも可愛いので、もう正直どちらでもよかった。


 俺は店主に金を払ってからサクラの手を引いてその場を離れる。そうでもしないと、照れているサクラが固まって動かないからだ。

 ちなみに手を引いているせいで、余計に顔を真っ赤にしているが、俺にとっては役得でしかないので放置しておこう。


「そろそろ腹も減ったし、なんか食うか」

「は、はい、何か食べましょうか」


 基本的にサクラは相当不味いものでなければ、何でも食べる。

 食に関して我儘を言わないのは、素直に良いことだろう。


 ここまでは、スプリトゥス特有の物を食べていたが、流石に目新しい物も無くなってきた。

 そんな訳で、適当に美味そうな店に入り、食事を済ませて、祭りを楽しむことにした。


 祭りというのは、特に何もしなくても、回っているだけで意外と楽しい。

 やはり雰囲気というのは、大事だというのが分かる。

 隣を歩くサクラも、非常に楽しそうにしている。


「ノーヴィストではお祭りとかはやらないんですか?」

「今回スプリトゥスの祭りに来てみて、やってみるのも面白そうだなとは思ったよ。ただ、俺はアルジェと違って、統治者としては殆ど何も出来ないからな……それこそ、ビャクとか、城の使用人達に負担がいくことになるのがな……」

「誰も負担だなんて思いませんよ。むしろ、張り切って動くのではないですかね? それに、最近は私もそういった方面の勉強をしているので、任せてください!」

「そうなのか? いつの間に」

「いつでもお役に立てるように、色々なことを勉強します。まだまだ浅いものが多いので頑張らないといけませんが」


 俺の知らないうちに、サクラがどんどん頼もしくなっているみたいだ。

 別に役に立つとか、そんなことを気にしなくてもいいのだが、話している感じを見ていると、その勉強も楽しいようで、声も弾んでいる。


「あんまり無理はするなよ」

「はい! ヨゾラ様とセラフィ様にご心配をお掛けしてしまうようなことにはならないように、しっかりと出来る範囲でやっています」

「ならよし。祭りをやる時も期待しとこうかな」

「ということはっ!?」

「ああ、かなり前向きに考えとくよ」


 話に出した時から薄々感じていたが、どうやらノーヴィストでも祭りをやりたいみたいだ。

 サクラがやりたいのならば、出来る限り叶えてやりたいとは思っている。

 それに、折角色々と学んでいるのなら、それを活かせるいい機会にもなる。

 今度ビャクにも本格的に相談してみることにしよう。


 サクラとの祭りは、こんな感じで今後のことや、他愛ない話をしながらゆっくりと楽しむものになった。

 むしろ、これが普通の祭りの楽しみ方な気もする。サクラとという理由もあるが、特別なことをしなくても、とても楽しめた。

 もしかしたら、前数日がそれなりに内容の多い感じだったので、それを察して気を遣ってくれたのかもしれない……

 ただ、楽しそうにしているサクラを見ていると、それをわざわざ聞くのは野暮だと思った。


 なんだか、無性にサクラの頭を撫でたくなり、優しく撫でる。


「……?」


 サクラはくすぐったそうにしながらも、それを振り払うことはなく、少ししてから嬉しそうに笑い、俺に撫でられるがままだった。

 頭を撫でながら、これからもサクラを大切にしようと思った。


自由な女神「サクラちゃんらしいお祭りの回り方だったね。相変わらず健気でかわいい子だよ」

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