祭りの前3
食事をしながらの顔合わせも無事に終わり、俺は自分の部屋に戻ってきた。
セラフィとクレーティオも俺の部屋に来ており、寝るまでの時間までゆっくりしていくみたいだ。
「何だかんだで大所帯になったな」
「そうじゃな。これだけの人数だと祭りを回るのも大変そうじゃな……」
今回の祭りはスプリトゥス聖国での初めての祭りということもあって、俺達のように招待を受けた奴を抜いても、話を聞きつけてかなりの参加者がいるようで、多くの人が行き交う中をこの人数で回るのは中々に無理がある。
「だったらさ、日にちを分けてヨゾラ君と周る子を変えるってのはどうかな?」
「俺とか?」
「そりゃそうだよ。折角の祭りだし、ヨゾラ君とゆっくり周りたい子もいるだろうからね。僕とかさ」
まあ、グループを分けて周るというのは理に適っている。
それぞれにも見たい場所はあるだろうし、ゆっくり楽しむことも出来るから、クレーティオの案は否定するようなものではない。
俺としてもクレーティオ達と祭りを周るのは、何だか特別な気分に浸れそうで悪くない。
「分かった、それでいこう」
「それじゃあ、順番も決めないとね!」
「そうじゃな。とりあえず儂らである程度決めて、後でアノンやサクラに確認してみよう」
別に順番で何かがある訳では無いので、こちらで適当に決めてしまっても、アノンもサクラも文句は言わないだろう。
「順番なんだけど、僕は最初でいいかな? こうしてゆっくりしてるけど、実際にはあまり時間がある訳じゃないんだよね」
「そういえば厄介事があるって言ってたな。それじゃあ、最初はクレーティオでいいか」
「儂は最後がいいな」
「それはいいが……セラフィはいつでもいいと言うと思ってた」
「まあ、儂にも色々とな……クレーティオみたいに厄介事がある訳じゃないから安心せい」
何か意図があるみたいだったが、セラフィが言わないのならば、別にわざわざ俺が聞いたりするようなことでは無いのだろう。
そうしたらクレーティオが初日、セラフィが最終日で、その間にサクラとアノン。今の予定だと数日の空きがあるので、そこはビャクやもしかしたら他に予定が入る可能性もあるので開けておけばいい。
そもそも俺達は招待されて来ただけで、祭りの概要やどんな出店があるか等、細かいことは何も知らない。
聖都全体で行われるのならば、そもそも一日では周りきれないので、後でアルジェから祭り中の地図か何かあればもらい、それぞれの日程で一緒に回る奴が行きたいところに行けばいいだろう。それで、周りきれなかったところに空いた日に行くのでもいい。
「話は変わるが、クレーティオから見てヘリコニアはどうだった?」
忘れていたが、食事の前にクレーティオとヘリコニアは模擬戦をしている。聖女達ともその辺の話をしようと思っていたのだが、結局しないで終わってしまった。
「んー、難しい質問だね」
「難しい?」
「うん。そもそも僕ってアドバイスにあまり向かないんだよね。こう言っちゃ悪いんだけど、今日戦った子程度の相手なんていくらでも見てきたし。僕からすれば、まだアドバイスする段階に無いんだ。前にヨゾラ君の友人に助言をしたことがあったけど、あれも正直適切だとは思わないし……あの時はまだあまり強くなかったヨゾラ君とセラフィちゃんが戦っているのを見たからまだしも、今回みたいに僕自身が戦ったとなると、正直良く分からないって感じかな」
なるほど……クレーティオの言いたいことは何となく分かる。
仕事に置き換えると分かりやすいかもしれないが、仕事が出来る側からすれば、出来ない奴はなんで出来ないのかが分からないのだ。
手を早く動かすだけとか、考えなくても分かるとか、そういった感覚だ。
今回のことを言えば、もう少し重い攻撃をしろとか、早く動けとか、そういった感じなのだろう。
平たく言えば単純にステータスが足りないのだ。そしてクレーティオのアドバイスは単純に今のステータスではどうしようもないということで、前回セシルとルーシェにアドバイスをした時は俺とセラフィが戦っているのを見ていたからできたものであり、今回の相手はクレーティオで内容自体もクレーティオにとっては適当に相手をしたから、そもそも相手の技量すらよく分からないのだろう。
「これがヨゾラ君やセラフィちゃんだったらまた違うんだけどね……今の2人には既に僕を殺せる程の力が備わってるからね」
「負ける気は無いくせに……」
「そりゃね。まだまだ頼られたいのだよ」
ステータス面ではまだまだクレーティオには届かないが、それでも殺せる可能性があるということは、称号なんかが関係しているのだろう。
セラフィの理級精霊としての力は言わずもがな格上相手にも勝利できるポテンシャルがあるし、恐らく俺の『ヨゾラの作者』にも何かしらがあって、クレーティオも把握しきってはいないが、俺よりも何かしらを掴んでいるからこそだろう。
それに、クレーティオには俺でさえ知らない奥の手があるはずだ。
前に、ステータスだけで見れば神の中ではそれ程強くないとクレーティオ本人が言っていた。しかしクレーティオはその辺の神には負けないとも言っていた。ならば、俺やセラフィ同様に、ステータスだけでは測れない何かがあるはずだ。
まあクレーティオが自分から言わない限りは聞き出したりしない。
クレーティオと殺し合うなんてことは、今後もないだろうしな。
「しかし久しぶりに会ったけど、やっぱりセラフィちゃんが秘めてるものは凄まじいね。今日戦った子も精霊を連れてたみたいだけど、セラフィちゃん程のものは感じなかったしなぁ」
「儂からすれば、おぬしにそんなことを言われるのは妙な気分じゃがな」
「いやいや、そんなことないよ。はっきり言ってヨゾラ君と同格ってかなりやばいしね」
「そういえば、アノンと話したんじゃろ? まだ契約していないとはいえ、アノンにも儂と同格の精霊が近くにおる。そっちはどうなんじゃ?」
「んー、確かに強い力は感じたけど、まだよく分からないかな……実際に契約してみてからだとはっきり分かると思うんだけど……でも今のところ、やっぱりセラフィちゃんには届かないかな? それだけセラフィちゃんが特別なんだよ。多分ヨゾラ君の影響もあるかな……」
俺の影響か……それはセラフィが生まれた時のことが関係しているのか、それとも擬人化した時のことが関係しているのか……はっきり言わないということはクレーティオも多分と言ったように確証がある訳では無いのだろうが、俺の個人的な予想で言えば後者な気がする。
セラフィは元々光属性の理級精霊であるのは間違いなく、そこに俺の魔法が加わったことにより闇属性も備えた存在となった。
しかし、他に擬人化した者達が闇属性を備えたりしたわけではない。そう考えると前者も影響しているのか? 考えてもキリがなさそうだ。
「何だか分からないことが多いね。やっぱり君達と話してるのは面白いね」
「そりゃ何よりだよ。久々に会ったけど変わらないな」
「僕は僕だからね。本当はもっと会いに来たいんだけど、やっぱりしばらくは無理かな……だからまあ、祭りの時は楽しませてね!」
「んまあ、それは頑張るよ」
そろそろ時間も遅くなってきたので、クレーティオはそれだけ言って自分の部屋に戻って行った。
「相変わらず賢いのか阿呆なのか分からぬ奴じゃ」
「まあ実際のところ相当賢いんだろうけどな……欲望に忠実過ぎてあんまりそうは見えないんだろ」
「そんなあやつがおぬしの為に厄介事を抱えてるなら力になってやりたいものじゃが……」
「その辺は祭りを周る時に聞いてみるよ」
「そうか……儂にも出来ることがあれば言うんじゃぞ?」
「ああ、頼りにしてるよ」
頼りになる言葉を残していってセラフィも自身の部屋に戻った。
クレーティオのこともあるし、今回の祭りは色々とありそうだ。
アノンの精霊についても気になるし、個別で話をできるのはこうして考えるとありがたい。
祭りを楽しむことも忘れずに、色々と消化していくことにしよう。
自由な女神「次回からお祭りが始まるよ~! それぞれのヒロインとどんな進展があるかな?」




