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祭りの前2

 さて、クレーティオが無事にアノン達と仲良くなってくれたので、俺の方は聖女達との顔合わせを済ませようと思う。

 模擬戦の際は解説のために話をしたのだが、実際には名前すら知らないので、折角こうしてスプリトゥス聖国に来ているので、聖女という異世界らしい存在達と友好を深めることにしよう。


 ヘリコニアだけは何度か話したことがあるので、それ以外の聖女達だ。

 今はヘリコニアを含め、聖女達はアルジェの元へ集まっているので丁度良いだろう。


「あら、ヨゾラさん。こちらに来たのですね」

「ああ、聖女達と話をしてみたくてな。紹介してくれよ」

「分かりました。ほら、あなた達」


 アルジェが声を掛けると、それまで話をしていた聖女達が話を辞めてこちらを向く。


「ヘリコニアは知っているので……セロ、あなたから自己紹介を」

「風の聖女をやらせてもらっています、セロです。よろしくお願いします、魔王ヨゾラ様」

「セロ、いつも通りの口調でいいですよ」

「ってアルジェ様は言ってるけど、いいかなヨゾラ君?」

「別に構わないぞ、ヘリコニアの時にも同じやり取りをしたしな」


 やはり聖女とはいえど、一国の王である俺にはまず丁寧に話すみたいだ。

 セロは模擬戦の時に素の口調が出ていたので、敬語を使われた時は違和感を感じた。気軽に話せるならばそれでいい。


「イキシアとベラも」

「では私から~。光の聖女イキシアです~、よろしくお願いします~、魔王様~」

「闇の聖女ベラ。よろしくヨゾラ」


 妙に力の抜ける話し方をするのがイキシアで、逆に抑揚の無い話し方をするのがベラか。


「よろしくな。ちなみに水と土の聖女っていないのか?」

「土の聖女は現在いません。水の聖女に関しては、身体が弱くてこの場には来ていませんね」

「そうなのか……後で会いに行っても?」

「そうですね……ええ、あの子も喜ぶかと思いますので会いに行って上げてください」


 この世界で力ある奴は、みんなそれ相応に身体も強い奴らばかりだったのだが、水の聖女に関してはそれが当てはまらず身体が弱いみたいだ。

 ステータスや、称号による補正で肉体的にも強くなるとなんとなく考えていたのだが、もしかすると聖女という立場が少し特殊なのかもしれない。

 普通に身体が弱いならば、レベル上げも困難なので、ステータス的に高くなることもないが、もし聖女が先天的な資質により決まるのならば、身体が弱くても納得はできる。

 精霊という特異的なことも関係していそうだ。


「戦争の時は手を貸してくれたみたいで助かった。戦場の方がどんな感じだったか俺はあまり知らないんだけど、聞いた話だとかなり活躍してくれたみたいだな」

「私とヘリコニアはアルジェ様と一緒に誰とも交戦してない英傑と戦ってたわ。イキシアとベラの方は帝国騎士の手助けをしてたみたい」

「そうですね~、少し苦戦してそうでしたので手助けをしました~」

「セシルとルーシェっていう帝国騎士」


 イキシアとベラはセシルとルーシェを助けてくれていたのか……話だと2人も英傑と戦っていたみたいだし、友人を助けてくれたことにも感謝だな。


「でも~、あの2人もかなりの実力者でした~。更に時間を積めば~英傑にも届くかもしれません~」

「うん。2人は強かった」


 どうやら聖女の評価でもセシルとルーシェはかなり強くなっているみたいで、友人として俺も誇らしい。

 どうせならばセシルとルーシェも呼べばよかった。


 そんなことを考えていると、ベラが俺のことをぼーっと見つめてくる。表情があまり出ていないので、何を考えているか分かり難い。


「どうかしたか?」

「ヨゾラは闇属性の魔法が得意?」

「どうしてそう思うんだ?」

「魔王だし」


 どうやらベラは俺が闇属性の魔法が得意かどうか気になっているみたいだ。

 確かに魔王って聞くと闇属性の魔法が得意なような感じがするのは分かるが、残念ながら俺はどちらかというと光属性の魔法の方がよく使う。

 闇の聖女としては、魔王が使う闇属性の魔法が気になるのだろう。


「いや、闇属性の魔法はあんまり使わないんだ。そもそもあまり知らなってのが大きいかな……どっちかっていうと光属性の魔法の方がよく使うんだ」

「そうなんだ……」

「それは~私が気になる話題ですね~」


 今度はイキシアが食い付いて来た。やはり気になるのだろう。


「魔法に関してはセラフィの方が詳しいし、セラフィを交えて話をしようか」

「ん、それはとても魅力的な話」

「確かセラフィ様は光と闇の理級精霊様なんですよね~? 私もとても気になります」


 やはり光と闇の聖女として、その二属性の理級精霊であるセラフィのことは気になっているのだろうな。


「おーい! セラフィ!」


 いつまでも飯を食っているセラフィを呼ぶと、皿を持ったままのセラフィとサクラがこちらにやって来る。


「なんじゃヨゾラ?」

「いや、この2人がセラフィと話してみたいらしくてな」

「光の聖女のイキシアです~。よろしくお願いしますセラフィ様~」

「闇の聖女ベラ、です。よろしくお願いします」


 ベラが慣れていなさそうな敬語を使っているのを見ると、やはりセラフィは聖女にとってそれだけ大きな存在なのだと思う。


「ふむ、アルジェや聖女は儂が囚われていた時に手を貸してくれたんじゃったな。感謝する」


 セラフィが感謝の言葉を告げると、聖女達は声にこそ出さないものの、かなり嬉しそうにしている。


「それで、俺とセラフィに何を聞きたいんだ?」

「ん、普段使ってる魔法とか教えてほしい、です」

「それは良いんだが、無理に敬語を使わなくていいぞ。セラフィは普通に気にしないからな」

「それじゃあ、うん……よろしくセラフィ様」

「うむ、よろしく頼む」


 どうやら様はどうしても外せないようだ。


「普段使ってる魔法か……俺が普段使ってるのはフォトンレイっていう光属性の王級魔法だな。使い勝手がいいから、かなり重宝してるな」

「フォトンレイ……ですか~……私の知識には無い魔法ですね~」

「まあ、俺が作った魔法だしな」

「魔王様のオリジナルですか~!? それはとても気になります~」

「フォトンレイくらいならここで使っても大丈夫か……」


 イキシアが目を輝かせながら見つめてくるので、どうせ大して被害が大きくなる魔法ではないので、使ってみせることにした。


「それじゃああそこに置いてある林檎に向かって撃つぞ」


 俺はテーブルの上に置かれた林檎に視線を向けて、俺は光の玉を出してフォトンレイを放つ。

 当然林檎を貫通するが、セラフィが何かの魔法を使ったようで、壁を傷つけるのを防いでくれた。


「熱光線を飛ばして攻撃する魔法で、速度と貫通力が高くMPのコスパがいいんだ。ただ、大きな傷を付ける魔法じゃないから、でかい魔獣とかを相手にする時はしっかりと弱点を狙うか、数を打った方がいいな」


 説明しながら俺は光の玉をさらに五つ出す。

 当然それを全て放つ訳じゃないが、複数打てるということを教える為だ。


「もう一つ、フォトンブラストっていう聖級魔法があるんだが……流石にここじゃ打てないから見るのは我慢してくれ。原理はフォトンレイと同じなんだが、規模を大きくして破壊に特化した魔法だな」

「なるほど~……ちなみに私が使えるようになる可能性はありますよね~?」

「ああ、使えるようになると思うぞ。原理はそれほど難しくないから、あとはイメージ次第だな」


 フォトンレイは俺がまだこの世界に来たばかりの時に覚えた魔法で、それ程難易度が高いものではない。

 魔法を使う上で大切ねイメージさえしっかり出来れば、光の聖女であるイキシアであれば使えるようになるだろう。


「セラフィ様は、普段どんな魔法を使ってる?」

「儂か? 儂はあまり同じ魔法は使ったりはせんな。強いて言えば儂もフォトンブラストを最も使っておるが、状況によって光属性の魔法も使うし、闇属性の魔法も使っておる」

「何か、火力がある魔法があったら教えてほしい。闇属性の魔法は、火力が不足しているものが多いから」

「ふむ……であればアビスという魔法が丁度いいじゃろう」

「アビスってお前が入学の時に使った光属性の神級魔法じゃなかったか?」

「あれの闇属性バージョンじゃな。ただ、当然ここじゃ使えん。じゃから、ベラに直接MPを流し魔法を発動させる感覚を掴ませてやろう」

「そんなことできるのか?」

「儂を誰と思うておる。任せておけ」


 当然ここで魔法を使える訳も無いので、ここまで来たら一旦テラスに出ようということになった。

 空に向かって放てば被害は出ないので大丈夫だろう。


「それでは始めよう。すまんな、少しだけぬしの主を借りるぞ」


 セラフィは何もない場所に向かって言う。恐らくベラが契約している精霊に向かって言ったのだろう。


「ベラよ、空に向かって手を向けておけ。後は身体に流れる感覚に身を任せるのじゃ」

「わ、分かった!」


 セラフィがベラの背中に両手を当てる。

 神級の魔法なので発動までは多少の時間が掛かる。ベラの方にはセラフィから送られてくる感覚があるようで、少し苦しそうな表情をしている。


「ほれ、いくぞ」

「んっ!」

「サクラ、なんかある?」

「では、こちらを」


 セラフィが合図を送る。

 前に入学の時に使った魔法の効果と似たものならば、何か目標が無いと効果が分かり難いだろうと咄嗟に思い、サクラに何かないかと聞くと、空になった皿を手渡してくれた。

 それをベラが手を向けている方向に投げると、丁度魔法が放たれて更に当たる。


「きゃっ!?」

「大丈夫か?」

「は、はい……ありがとうございます、ヨゾラ様」


 皿に魔法が当たると、大きな衝撃が襲い掛かってきて、近くにいたサクラがよろめいたので抱き支えてやると、嬉しそうにお礼を言う。

 聖女達も大きな衝撃で倒れないように踏ん張っている様子だった。


 皿は勿論跡形もなく粉々になっており、対象が皿だったとはいえその威力は分かりやすいだろう。


「どうじゃベラ、感覚は掴めたか?」

「う、うん! ありがとうセラフィ様!」


 興奮した様子でセラフィにお礼を言うベラは、見た目通り子供っぽくて何だか微笑ましかった。


 その後、ついでなのでフォトンブラストも披露し、イキシアにも喜んでもらえて良かった。

 何だかんだセラフィも、自分を助けるために手を貸してくれた聖女達に感謝しているようで、普段のセラフィだったらここまではやらないだろう。


 セロにも何かをしてやれれば良かったのだが、風の魔法に関することは何もできないので、今度何かあれば力になるという約束をして聖女達との顔合わせは終わった。

自由な女神「これで聖女ちゃん達がもうちょっと強くなるね! 後は水の聖女ちゃんだけだけど、身体が弱いみたいだね……」

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