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クレーティオVSヘリコニア

 クレーティオからしてみれば、聖女と呼ばれる目の前の女さえ、特にその辺の奴と変わらない。

 ステータスだけで見れば、前回ルーディスに来た時の頃のヨゾラと大差ないくらいで、それでもヨゾラは可能性を感じさせる称号を持っているが、それに比べヘリコニアは持ってない。相当手を抜かなければ、それこそ一撃で終わってしまう程だ。


 流石にそれではつまらない。それに、折角ヨゾラと久々に会えてかなり気分も良く、模擬戦自体はどうでもよかったがこうして承諾した。であれば、ヨゾラ達を楽しませる戦いをしようとクレーティオは考えていた。


「これなら剣でも借りればよかったかな?」


 対峙するヘリコニアは剣を構えているのに対して、クレーティオは丸腰だ。

 一応クレーティオは剣を使って戦うことも出来る。少なくとも、その辺の兵士というレベルではなく、それこそ普通に見れば達人レベルに使うことができるが、そもそも好みの問題であまり使っておらず、当然今回も用意している訳も無かった。


 ただ、クレーティオが剣を持ってくればよかったかなと言った理由は、単純に見栄えだけの話だ。特にそれ以外で問題がある訳では無く、言った本人であるクレーティオも適当に呟いただけだ。


「さて、どっからでもおいで」

「そんじゃ、胸を貸してもらおうかな!」


 クレーティオが何も考えずに放った挑発にも聞こえる言葉に、ヘリコニアは歯を見せて返す。






 ――――――――――






 さて、クレーティオとヘリコニアの模擬戦が始まった。

 こうして向かい合っていると、クレーティオはとても強そうには見えず、大してヘリコニアはとても強そうだ。

 しかもクレーティオは剣すら持っていないので猶更だ。


「2人とも動かないようですね~」


 金髪の聖女が緩い口調で呟く。


「クレーティオは仕掛け待ちだな。余裕があるからこそできるんだ。それに対してヘリコニアはタイミングを伺っている状態だな。クレーティオが格上ってのは理解しているからこそ、初撃のタイミングをミスらないようにしてるんだろ」


 話したことは無いが、とりあえず今はいつもの口調で解説をする。


 実際、クレーティオの方は何が来ても対処できるという自信と余裕が見えるが、ヘリコニアの方はそんなクレーティオの様子にかなり警戒しているようで、どう仕掛けるか迷っている様子だった。

 ヘリコニアの性格的に、とりあえず仕掛けそうなものだが、まだ始まったばかりでも実力差は感覚的に感じているようだ。


「お、仕掛けるみたいだぞ」


 腹が決まったのか、ヘリコニアが動き出す。

 剣に炎が纏い、それを構えてクレーティオに突っ込んでいく。あの剣に炎を纏わせる技はロウもやっていた。ロウのものと同じ原理なら精霊による力だろう。火の聖女らしい使い方だ。


 鋭い踏み込みから放たれる剣による攻撃をクレーティオは涼しい表情で身体を少し動かすだけで回避する。ヘリコニアは負けじと重そうな大剣を軽々しく振り休み暇もない連撃で攻めるがやはりクレーティオには当たらない。


「あそこまでの密度の攻撃……どうやってあんなに簡単に避けてるの……?」

「単純にステータスの差だな。ヘリコニアの攻撃がどれだけ早くても、クレーティオには全部見えてるし、クレーティオの方が早い。見て避ける、言っちゃえばそれだけの行動だ」


 黒い髪の聖女が呟くように質問してきたのに対して簡単に答える。


 確かにヘリコニアの攻撃は早く、炎を纏っているので範囲も剣の軌道よりも大きくなっているが、クレーティオにはそれを見切るだけの自力がある。

 攻撃が及ぶ範囲を正確に見切って、当たるか当たらないかのギリギリで全てを避けているため、傍から見ればどうやって避けているのか分からないのも無理はない。俺も、もう少しステータスが低かったら、ヘリコニアの攻撃がクレーティオに当たらないように放たれているように見えていたかもしれない。


 しばらくは同じような攻防が繰り返されたが、ようやくクレーティオが動き出した。

 クレーティオがヘリコニアの攻撃の合間を縫うように動き、ヘリコニアの左肩を押すとヘリコニアは大きく体勢を崩す。そこへクレーティオは回し蹴りを放った。

 ヘリコニアは崩れた体制の中、無理やり剣で回し蹴りを受けたが、想像していたよりも威力が高かったようで、ヘリコニアは大きく吹き飛び壁に激突する。

 クレーティオはそこへ追撃をかけることはなく、その場で静観。一時の静寂が訪れる。


「凄いですね、ヘリコニア様があそこまで簡単に体勢を崩されるなんて……何かそういった身体の使い方や技があるのでしょうか……?」

「サクラにもあれがどういったものか分からなかったか?」

「はい……恥ずかしながら、今の私では分かりませんでした……」

「そんなに気にすることじゃないさ。サクラはまだまだこれから強くなるからな。んで、クレーティオがやったことだが、一見すると肩を軽く叩いただけのようにも見えるが、実際には叩いたというよりも力で押し込んだってのが正確だな。強い力で肩を押し込まれたヘリコニアは左後ろに体勢を崩したって訳だ」


 まだ始まったばかりだが、こうして見ているとクレーティオって意外と脳筋なのでは? と思ってしまう。

 確かにやっていることは凄いし、クレーティオの見た目であの動きをされると、贔屓目無しに綺麗なのだが、その事態はステータスでのゴリ押し……見た目に反して凄い戦い方だ。

 もしかしたらクレーティオの本来の戦い方ではないのかもしれないが、どうせなら魔法とかも見たいところだ。


「クレーティオ、もう少し色々頼む」


 クレーティオなら聞こえているだろうと信じて小声で呟くと、クレーティオが俺の方を見て笑顔でグッドのハンドサインをしてくる。どうやらしっかりと伝わっていたようだ。


「こっからはクレーティオから攻めるだろうから逐一解説していくから、目はクレーティオ達の方を見ながら耳だけ集中しておいてくれ」


 ここからは更に何をしているのかが分かり難くなるだろうから、俺も丁寧に解説をしていくことにする。


 壁に激突したヘリコニアだったが、剣でガードできたことが功を奏したようで、多少咳き込んだ後に立ち上がって剣を構え直す。

 ヘリコニアが立ち上がったことを確認したクレーティオは右腕を上げて人差し指で空中を指す。

 クレーティオが指で空中をなぞると、並ぶように光の槍が出現した。


「光の王級魔法、ホーリーランスじゃな」

「ありがとうセラフィ」


 魔法の名前までは流石にそれほど詳しくないのだが、光属性の魔法だったということもありセラフィが説明してくれた。


 クレーティオが人差し指をタクトのように振ると、並んだ光の槍が一斉にヘリコニアに向かって飛んでいく。

 クレーティオのステータスから放たれる魔法はかなりの威力があり、直撃すればいくらヘリコニアといえどただでは済まない。

 空中から迫る光の槍は地面に着弾すると砂煙を上げる。

 砂埃が晴れると、地面が捲り上がっていたが、そこには無傷のヘリコニアが立っている。


「ギリギリまで引き付けて一本を剣で消してそれ以外は対衝突させたみたいだな。無傷なのは直撃しなかったからだろうな。光属性の魔法は貫通力に特化したものが多いから、直撃さえしなければ大した傷にはならなかったんだろう」


 どうにかクレーティオの魔法をやり過ごしたヘリコニアだが、そこでクレーティオの攻撃は終わらない。

 クレーティオの姿が消えた……ように見えると、ヘリコニアの背後に現れて蹴りを放つ。


「消えたように見えたが、単純に早く動いただけだな」


 クレーティオの蹴りにヘリコニアは直感だろうか? 反応して、反転しながら炎を纏わせた剣を振るう。

 蹴りと剣がかち合う。クレーティオが本気で蹴ったのならば確実にかち合うことは無かったが、やはり殺したりしてしまわないようにかなり力を抑えているようで、こういった結果になった。

 なんで炎の剣に蹴りを放ってクレーティオ側にダメージが無いのはよく分からない……


 ヘリコニアがそのままの流れでもう一度剣を振る。

 それをクレーティオは右手の人差し指と中指で挟み止めた。


「炎を纏ったヘリコニアの剣を指で止めたの!?」


 クレーティオの芸当にエメラルド色の髪をした聖女が声を上げる。


「クレーティオは指に氷を纏わせてるみたいだな」

「で、でもヘリコニアの炎は氷くらい簡単に溶かすわよ! 崇級の精霊の力は、普通の炎とは比べ物にならないものだわ!」

「ならクレーティオの氷がそれ以上の……絶対零度と呼べるレベルのものなんだろうな」

「そんな……そのレベルの氷を指に纏わせたら、むしろその指の方が心配なんだけど……」

「クレーティオのステータスってどちらかというと魔法寄りなんだが、当然特防も高いからな、自分でどのレベルの魔法だったら大丈夫かしっかりと把握してるんだろうな」


 実際、どれだけ位が高い魔法を使っても特防が高ければダメージは抑えられるし、なんなら無くすことも出来る。

 正直クレーティオ程のステータスがあればヘリコニアの剣を素手で止めることも出来るんじゃないかとも思うが、それをしないということは、もしかしたら何かあるのかもしれない。

 以前クレーティオが精霊について少し話していたが、やはり普通の魔法と精霊の魔法はなにかしらが違い、クレーティオも感覚的に魔法を使って対処している可能性がある。

 その辺は後でクレーティオに聞いてみることにしよう。


 ヘリコニアは掴まれた状態を抜け出そうとするが、指で挟まれている剣は全く動かない。流石のヘリコニアも焦っているような表情だ。

 それに対して剣を指で挟んでいるクレーティオは不敵に笑っている。


 剣は動かず、状況は少しの間変わらないかったが、先に動き出したのはヘリコニアだった。

 ヘリコニアの持つ剣が纏う炎が膨れ上がり、クレーティオを巻き込もうとする。

 流石にクレーティオとて多少のダメージを負うのではないかという程の炎……クレーティオはどうするのか見ているが、相変わらず不敵に笑っている。

 何もしていないように見えるクレーティオだが、激しい炎を纏う剣に変化が訪れ始めた。

 クレーティオが指で挟む場所から徐々に炎が消え、剣が凍り付いていく。

 炎が激しすぎて、アルジェと聖女達はまだ変化に気が付いていないようだ。


「クレーティオが剣を凍らせて炎を消し始めてるな。一気に凍らせるのは難しいみたいだが、凍っているのを見ると押しているのはクレーティオだな」


 状況を把握しやすいように解説してやる。

 俺の解説に対する返事はない。皆、勝負の行方に集中しているみたいだ。


 ヘリコニアも負けじと炎の勢いを強めるが、静かに少しずつ剣が凍り付いていく。

 やがて、あれ程激しく燃えていた炎は完全に鎮火し、剣の柄まで凍ってしまったので、ヘリコニアは剣を手放さずおえなかった。

 逆にクレーティオは、この氷ではダメージを負わないので、地面に落ちた剣を拾い、ヘリコニアの首に添える。

 静かな決着だった。


「どうだったアルジェ?」

「確かに強いですね……ですが、ヨゾラさんよりも強いというのは、正直まだ分かりかねています。ヨゾラさんでも似たようなことができるのでは?」

「んー、勝だけなら同じくらい圧倒的に勝てるとは思うが、クレーティオ程ステータスでのゴリ押しは無理だ」

「そうなのですか……あまりに実力が離れすぎていてイマイチ想像ができません」


 まあ、確かに見てるだけじゃ分かり難いよな。俺とクレーティオが直接戦えば分かりやすいのかもしれないが、特にクレーティオと戦う理由も無いしな。勝敗はほぼ予想出来るし……


 それにしても、意外としっかり戦っていたな。クレーティオのことだからもう少しあっさり終わらせるかと思っていたのだが、何だかんだこちらを楽しませてくれた。

 とりあえずこれでクレーティオの実力を疑う奴はいないだろう。サクラ達もクレーティオと話してみたいだろうし、そろそろ腹も減ってきた。クレーティオとヘリコニアを呼んで飯でも食いながら色々と話をすることにしよう。


自由な女神「流石に負けるわけ無いよね~。それにしてもヨゾラ君は少し失礼じゃないかな? ただの可愛い女の子なのに」

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