相変わらずの自由
忙しくて更新遅くなってしまいました……ごめんなさい……
クレーティオを連れてアルジェの元へ向かう。
当然だが、最初には連れていなかったクレーティオを連れているので、大聖堂内ですれ違う者達は疑問に思ったような顔をしていたが、俺の立場もありわざわざ聞いてきたりはしない。
当のクレーティオ本人は周囲の視線など全く気にしておらず、俺に笑顔で話しかけてくるだけだ。
時間で言えば一年以上は音信不通だったのだが、面倒ごとがあるとはいえ元気そうで良かった。
「そういえばセラフィ以外は初対面か……後で紹介するよ」
「あれ、あの2人は連れてないのかい? えっと……なんて名前だったっけ?」
「セシルとルーシェな。全く相変わらずだな……」
「まあまあ、ヨゾラ君も似たようなもんでしょ」
確かに俺もクレーティオ寄りであることは間違いないが、流石にある程度関わった奴の名前くらい憶えている。
いや……そういえばロウのことは忘れてたな……俺もあまり人のことを言えないかもしれない。
「それに僕だって誰でも彼でも忘れる訳じゃないよ。セラフィちゃんのことはしっかり覚えてるしね。まあ、ヨゾラ君もルーディスに来てからかなり経つし、今連れてる人達は僕の記憶にもしっかりと残るような人達なんだろうね」
「まあ、もう半分くらい家族みたいなもんだしな。アノンは可愛い後輩って感じだけど」
「へぇ、ただの後輩をヨゾラ君が大切にするとも思えないし、相当な子なんだろうね」
「立場的には勇者だな」
クレーティオの中で記憶に残るというのがどのくらいの人物のことを指しているのかはイマイチ良く分からないが、まあ今回のメンバーは流石に記憶に残るだろう。
俺にとっては大切な学友でも、セシルとルーシェはクレーティオから見れば一般人と変わらないしな。
そんな感じで雑談交じりに歩きながらアルジェのいる部屋までやってきた。
先程あってからそれ程時間も経っていないし、まだここにいるだろう。
「アルジェ、少しいいか?」
「……どうかしましたヨゾラさん? 手は空いていますのでどうぞ入ってください」
返事が返ってきたので中へ入る。
手は空いていると言っていたが、書類がそれなりに積み上がっているのを見ると、何かしらの作業はやっていたのかもしれない。
何せ国が初めて行う大きな祭りだ。国のトップが忙しくない訳が無い。
例外があるとすれば俺の国くらいだ。
部屋に入ると、アルジェはクレーティオのことを見て不思議そうにしている。
それもそうだ。さっき到着して挨拶をした奴が、その場にはいなかった見知らずの美少女を連れているのだ、不思議に思うのも無理はない。
「それでヨゾラさん……そちらの方は?」
「ああ、俺の友人のクレーティオだ。悪いんだが、こいつも今回の祭りの参加するから、部屋の用意とかしてもらってもいいか?」
「それは構いませんが……これでもあなたと近しい者達の情報は持っていたつもりだったんですが……名前すら聞いたこともありません。ご学友か何かで?」
「いや、そういうんじゃないんだがな……まあなんだ、長い付き合いなんだ」
「そういうこと~、まあよろしくね」
「は、はぁ……」
聞いたことも無い俺の友人、しかもあまり気にするタイプではないとはいえ、教皇である自分に全く委縮しないどころか、丁寧な口調で喋ろうともしないクレーティオに流石にアルジェも困惑している。
「確かにヨゾラさんの友人のようですね……」
「どういう判断基準だよ……」
「いえ、その態度を見れば分かりますよ……」
似た者同士ということだろうか? まあなんにせよ、納得してくれたのならそれでいい。
「部屋はあの辺りでしたら好きに使ってください。それと、護衛は要りますか?」
ここに来てさっきは飛んでこなかった質問だ。
アルジェは今回俺が連れてきたメンバーの実力もある程度知っていることもあり、先程は聞かなかったのだろう。クレーティオに関しては、実力も全く分からないので、護衛の必要性を聞いてきたのだ。
クレーティオは文句無しに美少女だ。それも見た目ならセラフィと同レベルと言ってもいい。
セラフィの時もそうだったが、知られていないと変な気を起こす輩も出てくるだろう。その為の護衛ということのはずだ。
「それに関しては問題無い。何ならこいつ、俺よりも強いぞ」
「えっ……まさか、冗談ですよね?」
「冗談じゃないさ。確実に俺よりも強いよ」
「まあ、ヨゾラ君も強くなってきてるし、今なら良い勝負ができるんじゃないかな?」
「流石にまだ無理だろ。知らんけどさ」
前に見たクレーティオのステータスは、ただの人間じゃとても到達できない数値になっていた。
仮に俺が追い付くのだとしても、レベル上げだけでは無理な気がする。何かしらのステータスに補正が掛かる称号が手に入れば、全然可能性はあるレベルだが……
「そいつは面白い話を聞いた!」
「お、ヘリコニアか」
俺達の話を信じ切れていないアルジェを置いて会話をしていると、ヘリコニアがやってきた。
「話は聞こえて来てたぜ、クレーティオっていったか……ヨゾラよりも強いってマジか?」
「本当だよ。将来的には分からないけど、今だったら確実に僕の方が強いね」
「ははっ! 言い切るってことは本当みたいだ! なあ、クレーティオ、わたしと模擬戦しないか?」
まさかのヘリコニアがクレーティオに模擬戦を挑んだ。
楽しそうに入ってきたからなんだとは思ったが、ヘリコニアは戦いが好きなようだ。
現在世界で最も強いと言われている俺よりも強い奴がいると聞いて、その実力を見てみたくなったのだろう。
だが、残念なことにその相手はクレーティオだ。勿論了承するわけもない……
「いいよ」
「……んっ!?」
「いよっしゃ! んじゃまあ、飯の時間までまだあるし、今日でもいいよな?」
「構わないよ、どうせすぐ終わるしね」
「そいつは楽しみだ!」
聞き間違いかと思いきや、予想外にもクレーティオは了承した。
「おい、本気かよ」
「まあまあいいじゃんたまには! 久々にヨゾラ君と会えてテンションが上がってるんだ、少しくらいはしゃがせてよ」
「いや、別にいいんだが……間違っても殺しちゃうなんてことはやめてくれよ?」
「流石に大丈夫だよ。それよりも僕のかっこいい姿をしっかりと見ててね!」
やる気満々だ。自分で言っていた通りテンションが高いらしい。
まあ安全にやってくれるなら別に俺としても何も言うことは無い。むしろスプリトゥス聖国最強の聖女とクレーティオの模擬戦は楽しみだ。
「全くヘリコニア、あなたという子は……すみませんクレーティオさん」
「君も僕の実力には疑念を抱いていたみたいだし、丁度いいんじゃない? とりあえず行こうか。ヨゾラ君、先に行ってるからね!」
「はいよ、すぐに行く……って言っても場所が分からないんだが……」
「案内の者を付けますのでご安心を」
「分かった、それじゃあ頼む」
俺はセラフィ達をよびに向かう。どうせなら見たいだろうし、特に呼ばない理由も無い。
声を掛けると満場一致で来るという返事だった。セラフィはクレーティオのことを知っているので興味がありそうだったし、ビャクとサクラとアノンもいつの間にか俺が連れてきたクレーティオのことをまずは見てみたいということだった。
ちなみにクレーティオが俺よりも強いということはまだ言っていない。見てからのお楽しみだ。
しかしクレーティオは相変わらずのトラブルメーカーだ。前に帝都に来た時も中々の騒ぎになったものだが、今回は規模こそ小さいとはいえ聖女との模擬戦だ。流石に自由の女神を自称することだけはある。
案内役として神官みたいな人が来たので、その人に案内してもらう。
大聖堂の中をしばらく歩いて行くと、これまた広々と作られた闘技場のような場所に着いた。
一度外に出たので、大聖堂内にある場所では無いのだろうが、すぐ隣に見えるので大聖堂の一部と言ってもいいだろう。
俺達が出たのは観客席のようになっている場所で、アルジェと他の聖女だろう女性達も来ていたが、それ以外には誰もいない。
中央にはクレーティオとヘリコニアがいた。
「この場所は聖女様達やスプリトゥス聖国が抱える戦力の者達が訓練するために作られた場所です」
「そうなのか……丁寧にありがとな」
「いえ、どうぞごゆっくり」
案内の神官は丁寧にお辞儀をして下がっていった。
とりあえずアルジェ達の元へ向かう。
「さて、揃ったことですし、初めてもらいましょうか」
「そうだな。ちなみに結界指輪は?」
「ヘリコニアは身に着けています。クレーティオさんにも渡そうとしたのですが、要らないと断られてしまいました」
「確かに言いそうだな」
せめて好意くらい受け取っておけばいいのに……当の本人は俺に向かって笑顔で手を振っている。
「ヨゾラさんとセラフィさんがいれば解説は問題無いでしょう。あなた達も、しっかりと見て聞いておくのですよ」
アルジェが聖女達に声を掛ける。
ヘリコニア以外の聖女は全員初対面だが、挨拶は後で良いだろう。とりあえずこの模擬戦中は、アルジェの言う通り起こったことの解説を聞かせながら適当に話せばいい。
「それでは初めてください!」
アルジェが良く通る声で開始の合図をする。
さて、クレーティオがどんな戦いをするのか、ヘリコニアがどう食らいつくのか楽しみだ。
自由な女神「やっぱり自由なのが一番だよね~。このまま変わらずにいくよ」




