土地拡張
短め
戦争が終わってしばらく……俺とセラフィ、それからサクラはグラヴィウス帝都にやってきていた。
まだまだ戦争の爪痕は残っており、ビャクは未だに忙しなくグラヴィウスとノーヴィストを行き来しており、今回はビャクが帝都にいるタイミングでの来訪なので後で合流する形になるだろう。
本来なら今回の戦争に関する事後処理に関わるつもりはあまり無かった……思い出したくないというのが正直なところなのだが、戦争に対する賠償の話で、どうしてもビャクではなく、俺とセラフィに直接話したいとのことなので、グラヴィウス帝都へと来ることになったのだ。
「よく来てくれたな」
「まあ、もう慣れたもんだ。んで、要件は?」
「とりあえず座ってくれ」
柔らかいソファーに座る。
今この場には俺とセラフィとサクラ、フロディスと役人のような奴が1人いるだけだ。
紅茶を飲みながらゆっくりしていると、部屋にビャクが入ってくる。どうやらビャクの到着を待っていたようだ。
「久しぶりだなビャク。色々と動いてくれているみたいで助かってるよ」
「いえ、お役に立てて光栄です」
もうノーヴィストはビャク無しじゃ回らないな。
「揃ったところで始めよう。今回来てもらったのは、先に伝えてあるように、戦争の賠償についてだ」
「賠償か……そうは言っても、今回の人間主義連合だったか? その元締めだった貴族達はもう処刑済み。残ったのは一般人……国に対する賠償なんてできるのか?」
今回の相手であった人間主義連合は、確かに規模だけで言えば国家に匹敵するほどに大きかったが、それでも国家という形ではなく、そのような機能を持った組織でもない。戦争をする為だけに組まれた組織に国家に対して賠償できるとは到底思えない。
「まあそれもそうだ。人間主義連合の残りの者達も、その殆どが、どこかしらの貴族の元で生涯従事することになっており、纏まってもいない」
「んじゃなんだ? お前らグラヴィウス帝都か、他の国が人間としての責任を取って賠償でもするってか?」
「それも考えはした……が、それをしてしまえば人間の国と獣人の国に確執が生まれかねん。それは折角の和平を壊すことになるから、無しだ。それで、考えた結果丁度いいものがあったからな。有り体に言えば賠償という形を取らせてもらっているだけだが、それでも何かしらで形として残さんと示しが付かん」
フロディスの言いたいことも分からなくはない。結局、立場や思想がどうであれ、今回の戦争は人間が獣人に仕掛けたと明確になってしまっている。
和平を結んだ以上、それはあってはならないことで、どんな形であれ賠償しなければならない。
もしも、さっき俺が言ったように、人間の国三つが肩代わりするような形だったのならそれでも断っただろうが、フロディス曰くそうではないみたいなので、もう少し話を聞いてみよう。
「今回賠償として支払うのは土地だ」
「……土地?」
「ああ、土地だ。今回の戦争で家ごと取りつぶしになった貴族も多くおり、その貴族達が収めていた領地の中でも比較的ノーヴィストに近い土地を賠償として支払う」
まさかのものが出てきたな。
土地か……それだと賠償というよりも、敗戦国が譲渡するものといった印象を受ける。
「そんな簡単に言うがいいのか? そもそもそれってやっぱりお前らが代わりに支払っていることにならないか? 土地ってようは国のものだろ?」
「確かに土地は国のものだ。だが、先も言ったようにそこを収める者がいなくなってはあまり意味がない。更に言えば、戦争で人間主義連合側の死者は途轍もない数になっていて、それに伴い国全体の人口が大きく減少した……故に、今までと同じように統治するのは不可能で、住む者も殆どいない。ならば、残った者達は統治できる領地に纏め、空いた土地はいくつかはいずれ再興するとして、いくつかは賠償という形で支払ってしまおうということになったのだ」
なるほど、確かに納得できる話だ。
規模の上で大きく勝っていた人間主義連合は負けたのだ。それも壊滅と言って良いレベルで……
ルーディスは地球に比べて人間の総人口は多くない。そこに戦争という形で大幅に死者が出れば、無視できないレベルでの人口減少となっているだろう。
「現状ノーヴィストが所有している土地はそれほど多くない。であれば、国同士のパワーバランス的にもノーヴィストは土地を広げるべきなのだ」
「まあ、丁度いいって訳か……」
悪い話ではない。確かに現在ノーヴィストが所有している土地は、果ての秘境の少しと、その周辺の土地を少々といった感じで、土地的にはそれこそ国という規模ではない。
これから様々な開発が進んでいくということも考えれば、土地を貰っておいて損はないだろう。
「お話の途中失礼致します。ノーヴィストには他国と違い貴族制度がありません。土地を頂いた場合その統治をする者がいないのです。ですのでヨゾラ様――」
「ノーヴィストにも貴族制度を作るか……実際どうなんだビャク?」
「まずは前提としてノーヴィストには政に詳しい者が殆どおりません。現状は私が指示を出し運営しておりますが……領主となれるような人材は、正直難しいですね」
ノーヴィストが国として運営できているのはビャクの力あってこそだ。今はメインの王都に周辺に多少村がある程度なのでそれで問題は出ていないが、大きな街が加わると流石のビャクも手が回らなくなる。
「であれば顧問のような立場で誰か送ろうか?」
「んー、まあそれしかないよな。頼めるかフロディス」
「では私の方では領主になれそうな人材を見繕っておきましょう。後日の顔合わせと、土地の引き渡しを同時に行い、そこからのスタートとなりそうですね」
誰を送ってくれるのかは分からないが、フロディスなら下手な人材は送らないだろう。
「んじゃそれで決まりだ」
「ちなみにヨゾラ、どういう街にしたいかくらいは決めておいてもいいんじゃないか?」
「どういう街か……セラフィはどうだ?」
「飯が美味い街じゃな!」
「だそうだ」
そうしたら精々飯が美味い街になるように頑張ってもらおう。
まあ、獣人は俺とセラフィが求めるものに関しては非常に熱くなるので、凄い極端なことにならないように領主となる者には言い聞かせておく必要はありそうだが……
「ではヨゾラ、これにサインを」
「あいよ」
今日俺が呼ばれた理由は、この契約書のような物にサインをするためだったみたいだ。
ペンで名前を書き、最後に血印を押してフロディスに手渡す。流石に土地のような大規模な賠償ならば俺のサインが必要だったのだろう。
これでも一応王だからな。
「そんじゃセラフィ、アノンにでも会ってから帰るか」
「うむ、そうじゃな」
「フロディス、アノンって何処にいる分かるか?」
「今は何もないはずだから家にでもいるんじゃないか?」
「家か……場所を知らん」
「なに? 普通に知ってるかと思っていたが……まあヨゾラとアノンの仲であれば俺から教えても問題無いだろう」
俺はフロディスからアノンの家の場所を教えてもらい、隣に座るセラフィと後ろで静かに共をしていたサクラを連れて向かうことにした。
「ではヨゾラ様、また土地の引き渡しが終わり次第ご一報入れます」
「ああ、いつも悪いなビャク。頼んだぞ」
「お任せを」
相変わらず頼りになるビャクに任せて俺達は部屋を出た。
国に帰ったらビャクへの褒美をいよいよしっかりと考えるとするか。
それにしても土地か……俺も何か作りたい施設の候補でも出してみようか……いい加減娯楽がほしいしな。
自由な女神「いよいよ国っぽくなってきたね! 新しい土地に何を作るんだろう?」




