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この異世界は物足りない  作者: VRクロエ
英傑決戦編
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戦争終結

 目が覚めた俺はセラフィに身体を支えてもらいながら外に出る。

 ある程度MPが回復したので、スピカで目に見える傷は大体癒したのだが、この魔法は傷を癒し出血などによる継続的なHPの減りを抑えるだけで、HPそのものが回復する訳では無く、HPの数値を見ればまだまだ瀕死状態の俺は、普通に歩くのもかなり難しく、セラフィにバフの魔法と精霊魔法をかけてもらって、ようやく誰かの手を借りて歩ける状態だ。


 セラフィを取り戻せたことにより、これまではトランス状態のようなものだった身体に一気にガタがきたのもある。

 戦争自体はまだ終わってないので、本来は気を抜けないのだが、分かってはいてもこうしてセラフィが隣にいると心の何処かで安心感を覚えてしまっているのだろう。


 そんなこんなで、屋敷の外に出てくると、そこはもう酷い有様だった。

 建物は崩れ、地面は凹み、そこら中に英傑達の死体が転がっている。


「あっ! 先輩!」


 その地獄のような場所で立っている者は2人だけ……アノンとサクラだ。


 2人共無傷……という訳にはいかず、それどころかかなり傷を負っているようにも見えるが、アノンは俺達に気が付くと普通に走ってこちらにやって来る。見た目ほどHPが削れているわけではないのかもしれない。

 これだけの英傑を相手に戦ってということを考えると、アノンは元々相当強いが、サクラもかなり強くなったものだ。


「セラフィ様……よかった……」

「心配かけたの、サクラ」


 そんなサクラはというと、セラフィに抱き着いて泣き崩れている。

 セラフィが攫われたと聞いた時に、サクラは目に見えて焦燥感をつのらせていた。それを思えば、今の様子も仕方が無い。


「サクラとアノン、怪我は?」

「私もサクラさんも傷はそれなりにありますが、HPは大丈夫です」

「流石にこれだけの英傑を相手に無傷とはいけませんでした……」

「そうか……2人共無事でよかったよ。とりあえずの処置だ……スピカ」


 俺がサクラとアノンにスピカを使うと、傷が塞がっていく。


「こ、これは……!?」

「新しい魔法ですかヨゾラ様?」

「ああ、さっきレナードとかいう奴と戦ってる時に編み出したんだ。HPは回復しないけど、傷は癒してくれるから、余計にHPを減らすことは無くなるんだ」

「回復魔法ですか……それはまた、凄い魔法を作りましたね先輩……」


 この世界に、明確な回復魔法というものは存在しない。魔法で出来るのは、血を洗い流したし、無理やり塞いだりといった具合に、本来はそういった意図の効果ではない魔法を治療に役立てているだけだ。

 その点スピカは、直接的に傷を癒すという効果を持っているため、むしろ治療にしか使えず、この世界で唯一無二の回復魔法というわけだ。


 地球に比べて、創作物が盛んではないため、魔法で傷を癒すという感覚は殆どの奴には分からない。俺自身も、魔法で傷を癒すという感覚は正直良く分からないが、スピカやほか二つの魔法は主人公としての能力を想像して出来ているものなので、それこそ擬人化の魔法のように、あれこれと内容を詰め込んで完成した魔法ではなく、物語の主人公ならばという曖昧な感覚で出来上がっている。


「セラフィって俺がさっき使った魔法って使えるか?」

「いや、無理じゃな。見た目は確かに光属性っぽい魔法じゃが、儂が使えないとなると光属性には該当しておらん。恐らくは、アノンのヘヴンリーサンダーと同じように、ヨゾラ専用、もしくはヨゾラが持つ何かしらの称号に付随した魔法じゃろうな」


 予想通りセラフィでも使えないみたいだ。そして、セラフィの予想も照合して考えると、俺が編み出した三つの魔法は『ヨゾラの作者』の存在があって生み出せた可能性が高い。

 クレーティオも詳しい効果は分からないと言っていた称号だが、ここに来て新たな可能性が出てきたのは非常に面白い。

 今度ゆっくり魔法の開発でもしてみるか。


「まあ詳しい話はまた落ち着いてからするか。とりあえず帰ろうぜ」


 正直、いつまでもこんな場所にいたくない。それに、セラフィを取り戻せて最も重要な戦いは終わったが、戦争自体は恐らくまだ終わっていない。レナードとロウが死んだという情報はまだ伝わっていないだろうし、そもそも人間主義連合がセラフィを攫ったのは、獣人との戦争を再開させるためであり、それを目論んだ貴族達というのはロウだけではない。

 であれば、他の貴族達をどうにかしない限り戦争は簡単には終わらないだろう。


 そういう訳で、俺達は戦場となっていた場所に戻る。

 来る時はかなり急いでいたので、それ程掛からなかったが、帰りは俺の疲労などもあったので、かなりゆっくりとなった。


 結局戦場まで戻ってくるのに一週間程が掛かってしまった。


 戦争はやはりまだ続いており、どちらも前進と後退を繰り返し、戦っていたようだ。

 流石に人の体力は無尽蔵ではないので、戦っていない時間も普通にあったようだが、それでも互いに相当な数の死傷者が出たことは間違いないだろう。


 俺達は敵に気が付かれないように進んでいき、拠点となっている場所はアノンが知っていたので、そこに合流することにした。

 拠点となっている場所では、フロディスにレグナルト、それにアルジェも来ており、何かを話し合っているようで俺達には気が付かず集中していた。


「……おいフロディス」

「ん? 誰だ? ……ってヨゾラか! それにセラフィ! 救出に成功したのか!」

「ああ、悪いな戻ってくるのが遅くなって。レナードとかいう奴が出てきてかなりボロボロにされて危なかったよ」

「レナード!? 奴が生きてたのか!? よくもまあ、奴らは見つけてきたものだ……」

「そんで、今の状況は?」

「かなり優勢だなのだが……如何せん数が多くてな。英傑達は殆ど残ってはいないからこのまま戦えば勝てるだろうが……長引きそうなのは間違いない」


 聞いていた話だと、規模で言えばこちらよりも敵の方が圧倒的に多い。それでもビャクや俺の元に来る前にアノンとサクラが英傑達をかなり削っていたおかげで、質では勝っているので、戦力的には問題はないみたいだ。


「ただまあ、このまま戦えば長引くというだけだ。現在ビャクを中心とした獣人達が今回の戦争を企てた貴族達の捕縛に向かっている。そちらが上手くいけばそれ程長引きはしないだろう」

「なるほど、だからセラフィを救出したという報告がここに来てなかったのか……まあビャクが向かったんなら大丈夫だろ。わざわざこうやって何かを話し合う必要はないんじゃないか?」

「いや、だがなヨゾラ……一つの作戦に固執してるのもまずいんじゃないか?」

「別にお前らがそれでいいならいいけどな。俺の案としては、無駄に衝突しないで、足止め程度に留めとくのを薦めるよ。とりあえず俺は休む。お前らは?」

「儂も少し休ませてもらおう」

「ヨゾラ様とセラフィ様にお供します」

「私も先輩達と休みますね」


 セラフィとサクラは俺に付いてくると思ったが、アノンも一緒に休むようだ。

 口には出していないが、アノンももしかすると俺の考えに賛成なのかもしれない。

 王達の表情をみている感じ、アルジェもどちらかというと俺よりっぽいが、とりあえずは流れに身を任せるみたいだ。


「おや? ヨゾラ様、お帰りなさいませ」

「ん? あれ? ビャクか。貴族達の捕縛に行ったんじゃないのか?」

「ええ、行ってきましたよ」

「そうか。流石だな」


 やはり俺の考えが正しかったみたいだな。


「もう何も言うまい。ゆっくり休んでてくれ。この後はもう後処理だ」

「それじゃ、頼んだぞー」


 フロディスは呆れたように笑い、後は任せてくれと言う。

 その言葉に甘えるとしよう。


 こうして突如として勃発した戦争は終わった。

 企てた貴族達は全員捕縛され、英傑も殆ど残っていない人間主義連合は降伏するしかない。


 今回の戦争は、戦争による金銭的な利益を目論む貴族達が獣人との戦争で傷を持つ者達を陽動し起こったもので、人間主義連合側には元々が兵士なんかの戦うことを生業とする職業の者以外も多く居たようで、それも規模の拡大に繋がっていたようだ。


 獣人に恨み……というのには思うところもあるが、どちらが悪いなどと言い出してはキリが無いし、人の気持ちはそれだけで納得するほど簡単ではない。


 幸いなことに、こちら側の被害は俺が思っていたよりも少なく、まあ有り体に言ってしまえば、そういった理由で兵士達にそれ程重い罰は下さないでくれとは言っておいた。

 勿論貴族達は死刑だがな。


 その後その兵士達がどうなったかは知らないが、まあなるようになっているだろう。


 ノーヴィストに戻ってきて数日が経つ頃には、俺自身はいつも通りの日常に戻っていた。

 本当ならば色々とやることがあったみたいだが、それはビャクに任せてきた。

 サボっている、と言われても仕方ないが、今はセラフィといつも通りの日常を過ごしたかったのだ。


「しっかし、世の中にはまだまだ強い奴がいるもんだな」

「そうじゃな。確かに儂らは世界でも最強と呼べる強さを有しておるが、それでも苦戦するし、油断があれば命が危ないということも分からされた」

「世界を進めたのは俺達だが、俺達が想像してる以上に世界は進んでるのかもな。今回の魔道具なんかはまさにそう思うよ」


 セラフィの力が封じられた謎の魔道具……その解析は現在スプリトゥス聖国が請け負っている。

 精霊の力を封じるといった効果の魔道具の存在に、アルジェは激怒しており、解析は任せてくれと言っていた。


「そういえば、聖女が沢山きてたな。あんまり話さず帰ってきたし、今回手伝ってもらったお礼も言いたいから、今度スプリトゥスに行くか」

「そうじゃな……本当に今回は沢山の者の世話になった。義理は通さねばな」


 帰ってきてからずっとこんな感じで今回のことについて話したり、他愛ない話をしてはのんびりしていた。

 異世界らしさ、刺激を求めていたのは確かだが、こうして俺にも大切な奴ができた。のんびりしている時間も悪くないと思える。


 こんな日々をこれからも過ごすためにも、更に力を付けようとひっそりと誓ったのだった。



自由な女神「ビャクはどこまでも優秀だねぇ。戦争の終わりはあっさりって感じ」

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