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この異世界は物足りない  作者: VRクロエ
英傑決戦編
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負けれぬ戦い2

 俺の剣とレナードの剣がぶつかり合う。

 レナードは当然の如く力で勝る俺相手に素直に押し込んできたりはしない。相変わらず巧みな技術で受け流されるが、今の俺には更に六本の光の剣がある。


「くっ……!?」


 体勢が崩れた俺に追撃してこようとするが、それをまず一本の光の剣で防ぎ、次いで五本の光の剣が一斉に襲い掛かる。

 流石にこの状態ではレナードとはいえ攻めてくることは難しいようだが、それでも多角的に迫る光の剣をレナードは最小の動きで避けていた。

 そこへ、俺自身で追撃を掛けるが、まずは退くことを選んだようで、打ち合ってはくれなかった。


 本当ならばフォトンブラストを溜めて放つのが良かったのだが、プレアデスの使用に意識を持っていかれすぎてしまっているため、これ以上は他の魔法を使うことは出来ない。

 一旦マグスターを解除して使う手もあるにはあるが、ただでさえボロボロな状態で強化を解いてしまうと、急な倦怠感で動けなくなりそうで怖かった。


 そうなってくると、もう後は意地でぶつかるしかない。

 幸いなことに、今の状況だと俺が有利と言って良い。レナードとはいえ、多角的且つ手数の多い攻撃を防ぎきるのは至難の業だろう。


 できればレナードがこの状況に慣れる前に決着を付けたいところではあるが……そう簡単な相手ではない。ここまでしても、苦戦を強いられることを覚悟した方が良いだろう。


 一度退いたレナードは、遠距離からの魔法を選択。巨大な岩の槍が俺に向かって飛んできた。

 俺はそれに向かって手を翳し、俺を守るように六本の光の剣を展開させる。

 レナードの魔法が光の剣にぶつかるが、それで砕けたりということは無い。無傷の状態でしっかりと俺のことを守ってくれた。


「いけ!」


 再度光の剣を展開させる。多角的にレナードに襲い掛かり、その動きを止める。

 これだけ距離が離れていれば、ある程度しっかりと操る余裕もあるため、先程は掠りもしなかった光の剣は着実にレナードを傷つけ、ダメージを与えていく。


「この程度!」


 レナードは回避だけではなく、光の剣をある程度弾くことにしたようで、そのお陰か光の剣がレナードを捉えることは少なくなっていた。

 だが、これは好機とも言える。俺は真っ直ぐに最速でレナードに向けて突っ込み、剣を振った。


「ぐぁっ!?」


 俺が最速で突っ込んだこともあり、反応しきれなかったレナードは回避しきれなかった……俺が振り抜いた剣はレナードの脇腹を深く削り、大量の血を流させる。

 手応えのある一撃がようやく入った。俺の元々の攻撃ステータスに加わりマグスターで上乗せした攻撃で相当のダメージが入っただろう。


 俺は手を休めずに光の剣で追撃、更には俺自身も斬り込んでいく。

 脇腹へのダメージにより、動きが鈍くなったレナードに更にもう一撃大きなダメージが入る。

 右肩を大きく抉られたレナードは、剣を手放し、無防備な状態となった。


「ここで決める!」


 止めを刺すべく、俺は接近する。


「まだだぁ!!!」


 だが、レナードは宙に浮く光る剣を無理やり両手で掴んで振り下ろしてきた。

 流石にこれは予想しておらず、攻撃の体勢に入っていた俺は避けきれずに胴体を斬られる。あまり深く入らなかったことだけは幸いだが、HPも残り少ない状況で食らいたくない攻撃ではあった。


 光の剣を握ったレナードの両手は酷い火傷を負っている。それもそうだ、光の剣はフォトンレイなどと同様に相当の熱を持っており、普通人間が素手で触れるようなものではない。


 俺は血を流しながらも下がり、即座に光の剣を自身の周りに戻して、これ以上使われないようにする。今のレナードであれば、あんな手になってもまだ同じことをしてきそうな予感がしたからだ。

 その間にレナードは落とした剣を拾い直す。痛みなど感じていないかのように、しっかりと剣を握っており、その瞳にはまだまだ闘志が宿っていた。


「はぁ……さて、そろそろ掴んできた。魔王様……いや、ヨゾラのプレアデスはかなり集中力がいるみたいだね。激しい戦闘の最中はあまり精密な操作ができないとみた。更には脳への負担で長続きもし無さそうだ。その証拠にほら……」


 レナードに鼻を指差されて初めて気づいた。かなりの量の鼻血が出て来ていた。

 意識したせいか頭も痛い……恐らく目も相当充血しているはずだ。


「早期決着できなくて残念だったね。まあ、だからといって俺が有利って訳でもないけど、ヨゾラが有利な状況って程でもない。最後は意地のぶつかり合いさ」

「……」

「喋るのもキツイみたいだね……だったらもうやるだけやるしかないさ!」


 プレアデスを発動させてから受け身気味になっていたレナードだったが、ここにきて自ら突っ込んで来た。

 多少距離があるため光の剣で迎撃する。だが、流石に六本も巧みに操っている余裕はもうない。本当に牽制程度にしかならなそうだ。


 ここまでくると、レナードの言う通り意地のぶつかり合いになりそうだ。俺もそう覚悟して迫るレナードに向かって行く。


 剣同士がぶつかり合うと、その衝撃で互いの傷が深い場所から血が飛び散る。だが、互いに飛び散る血になど目もくれずに激しく剣をぶつけ合った。


 何度も似たような攻防が繰り返されていく。ステータスで勝る俺に、それを感じさせないレナード……剣を掠めて掠らせて、細かい傷が増えていくが、そんなもので今更止まる訳もない。


 互いに感じていた、この剣戟が終わる時が決着だと。


 レナードが右足を強く地面に踏み込ませると、足元が盛り上がりバランスが崩れそうになる。ガードが難しいところへ来る剣を俺は光の剣でガードする。

 倒れそうになる勢いのまま俺が回し蹴りを放つと、レナードは片手でそれを受け流して、逆に蹴りを放ってくる。


 持てる全てを使い繰り広げられる攻防は、時間にしてみればそれ程経ってはいない。


 俺とレナードの戦いを見るセラフィとロウはそれぞれ別の表情をしていた。

 セラフィは俺を信じていると強い瞳で見守り、ロウは焦りを感じ始めたような表情で……

 勝負が決まるその瞬間を決して見逃さないように。


 俺は一瞬たりとも目を離すことは許されないような戦いの中だったが、一瞬セラフィと目が合った。

 その美しく、俺に絶対の信頼を送ってくれる瞳を見ただけで、どうしてか力が湧いてくるような気がした。


「取った!!!」


 そして、俺の意識が一瞬逸れたことを見逃さなかったレナードは、勝利を確信して叫びながら俺の顔面に向けて鋭い突きを放ってくる。

 普通に考えれば避けることは不可能なタイミング……だが、不思議と焦りはない。俺ならば避けることができると、そして勝利することができると確信していた。


 時間の流れが酷く遅くなったように感じる。

 俺の顔面を貫くはずだったレナードの剣は、俺の右目の少し下を掠めただけ。紙一重で俺は避けることができた。


 勝利を確信した一撃を放ったレナードはこの後の反撃を考えていない。逆に避けれる確信があった俺は、既に攻撃の準備はできている。


 俺が腰の高さ辺りで放った突きはレナードの胴体を完全に捉えている。

 どう考えても勝利は揺るがない。俺は確信してそのまま突きを放つ。

 そして、それはレナードも同じで、己が負けを悟っていた。


 ゆったり流れる時間の中、レナードは俺に向かって笑った。満足したと……お前の勝ちだと言わんばかりの祝福の笑みだ。


 俺の剣がレナードを貫き、それにワンテンポ遅れて光の剣がレナードの身体を貫く。


「ありが……とう……」


 最後にレナードは俺に向かってそう言って血の海に沈んだ。


 激しい戦いに勝利したのは俺だが、何か一つでも違えば俺が負けていた可能性もある。

 ただ、それは可能性の話で、仮にどのような状況でもこの場にセラフィがいれば俺は勝っていたと自信を持って言えた。

 俺をここまで突き動かしてくれたのはセラフィであり、その信頼の瞳にどれだけの力を貰ったことか……

 精霊の力など無くてもセラフィは十分過ぎる程に俺に力を与えてくれる。

 ロウの間違いは、俺の死にざまを見たいがためにこの場にセラフィと共に現れたことだろう。


 最後の障害を乗り越えた俺は、一刻も早くセラフィを助け出すために、セラフィとロウがいた方向に目を向ける。

 しかし、そこに2人の姿は無かった……


「逃げたのか……往生際の悪い……逃がすと思ってんのか!!」


 再び俺の前からセラフィを連れ去ったことへの怒りで叫びながらも、全力疾走で追えるほどの力はもう残っていない。

 プレアデスは解除してマグスターだけを発動させた状態で、身体を若干引きずりながらも2人が消えた方向へと向かう。


「待ってろセラフィ……あと少しだ……」


 俺は血の道を作りながらも、セラフィを救い出すべく進んでいった。




自由な女神「ヨゾラ君が勝った……! ギリギリの戦いだったけど、僕も信じてたよ!」

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