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この異世界は物足りない  作者: VRクロエ
英傑決戦編
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強行突破

仕事の疲れであまり書けておらず更新頻度が遅くなってしまっています……楽しみにしてくれている方、申し訳ないです。

 流石に戦場から、敵の本拠地まではそれなりに距離があった。

 途中、隠密隊の獣人がセラフィが囚われている場所までの方向を教えてくれたので、真っ直ぐは進めているのだが、それでも一日で着くような距離ではない。


 セラフィが囚われている場所は、かなりの戦力が集まっているみたいなので、焦らずに休憩を挟みながら進むことにした。

 今も隠密隊の獣人達が、セラフィを助け出すことはできないものの、動きが無いか常に見張っていてくれているので、焦ることは無い。無理をして前回のようにしくじる方がまずいだろう。


 それにサクラとアノンもこちらに向かってきているようなので、恐らくだが、俺が敵と戦い始めてからしばらく経ったくらいで合流してるはずだ。

 本拠地にいる奴らは、英傑の中でもかなりの上位に位置する奴らみたいだが、サクラとアノンならば問題無く対処してくれるはずだ。


 幸いなことに、この辺まで来ると敵の兵士も全くいないので、楽に進むことができている。

 出てくる魔獣に関しては、今更秘境でもない場所に出てくるものなの相手にならない。見えた瞬間フォトンレイで一撃だ。


 敵の本拠地……ハーツ領の街だ。

 これまで見てきた貴族が収める街に比べるとかなり大きい。だが……街の中には一般人の姿は見えず、静まり返っていた。


 恐らくは、元々街中で戦闘が起こることを想定していたのだろう。

 こんな戦争を起こした奴らに、一般人をしっかりと避難させるほどの良心があったのには驚いたが、罪の無い人を巻き込まなくて済むのはありがたい。

 これなら思う存分暴れられる……


 俺はいつでもフォトンレイを打てるように三つの光の玉を出してから息を吸い込む……


「さて……行くか!」


 俺は勢いよく街の中に突っ込んだ。


 入ってから早速先程までは気配も無かったのに、周囲から殺気を感じた。

 その方向から2人の男が飛び出してくる。2人とも英傑だろう。


 報告通り、戦場で戦った英傑よりも数段上の実力を持っていそうで、接近してくる速度なんかも桁違いだ。

 だが、残念なことに、どれだけ英傑の中では強くとも、俺には届かない……


 フォトンレイで牽制をして、それを避けるために動いたところでまず1人を剣で倒す。そしてその死体をもう1人の方に投げて目くらまし……その隙に英傑をも圧倒する速度で接近して終わりだ。


 勝てるからといって手を抜いたりはせず、全力戦闘だ。ここに来た以上は、速度を上げて進んでいく必要がある。


 だが、敵もそう上手くはいかせてくれないようで、英傑2人を倒した直後から、周囲に気配が増大した。

 軽く見積もっても10人以上の英傑に囲まれている。よくもまあ、これだけの英傑を集めたものだ……

 流石にこれだけの数が集まったとなると、かなり面倒くさい。負けることは無いだろうが、突破までそれなりに時間が掛かってしまうだろう。


 そうこう考えているうちに、様々な属性の魔法が俺目掛けて飛んでくる。

 それを避けると、今度は近接戦闘に長けた英傑が、まず2人突っ込んでくる。非常に面倒臭い……

 回避か反撃かを考えていると、その2人の英傑を止めるように、複数名の獣人達がその剣を止めた。隠密部隊の獣人達だ。


「ヨゾラ様! 力及ばずながら、2人の英傑の相手が我々では精一杯です……」

「いや、助かる。無理するなよ!」


 多少とはいえ、楽にはなる。全てを相手にするよりはマシだ。

 俺は英傑2人の対処が要らなくなったので、その隙にフォトンブラストの準備をして、放つ。

 射線上には3人の英傑がいたが、残念ながら仕留められたのは1人だけで、後の2人には避けられてしまった。

 避けた先に追撃を掛けようかと思ったが、また魔法が飛んできてしまった。

 咄嗟に回避したが、少し食らってしまう。


 俺がセラフィを奪還しにくることは敵も想定していたはずだ。であれば、俺に対抗できるような戦力を用意している可能性が高い……となるとあまりこんなところでダメージは食らいたくないが、流石に束になった英傑はかなり厄介で、無傷で切り抜けるのは無理そうだ。


 仕方が無いので、1人ずつ順番に削っていくことにする。

 今のところ魔法を放っている奴が出てきそうにないので、まずは前衛からだ。


 フォトンレイを牽制で使いながらほぼ直進で距離を詰めていく。

 当然ながら魔法による援護が飛んでくるが、ある程度食らうことは気にしないことにして、速度をなるべく落とさないように、そのまま進んだ。


 流石に予想外だったようで、前衛となっていた奴の中でも俺が魔法で怯んだところに追撃をかけようと企んでいた奴は初動が遅い……これならば簡単に追い付く。


 最後に下がろうとした奴に、英傑の目から見ても反則気味の速度で追い付き、力の限りに剣を振り下ろす。

 これだけのステータス差があり、相手がガードするしか選択肢が無い場合は、何も考えずに思いっ切り振った方が得で、ガードしようとした奴は剣ごと砕けるように斬り裂いた。


 血を流し倒れるそいつに目もくれず、前衛が下がったことにより魔法を放っている奴らへの道が開けたので全力で接近していく。

 焦りつつも魔法で応戦しようとしていたので、とりあえず1人はフォトンレイで仕留め、飛んできた魔法を受けつつも接近しきり、さらに倒す。

 固まっていたこともあり、その流れで魔法を放っていた奴らは殲滅出来た。


 最後に斬った奴が倒れ伏すのを待って、背後で殺気を感じる。

 残った3人の前衛が一斉に襲い掛かってきたが……


「……フォトンブラスト」


 どうせそう来るだろうと予想は出来ていたので、予めフォトンブラストの準備をしていた。

 振り返りながら3人の英傑に向かって放つと、振り向きと同時にフォトンブラストを放ってくると予想できていなかった3人の英傑はそのまま光に飲まれて黒焦げとなり死んでいった。


 流石にここまで暴れれば、他の場所にいる敵も気付いて寄ってくる。変に囲まれると更に面倒なことになるので、止まらずに行けるとこまで行くしかない。


 目の前から来る英傑を手早く倒し、左右から来る奴は構わずに振り切る。

 しかし、周囲の英傑の数は徐々に増えていき、流石に無視もできない数が集結していた。


 よくもまあこんなにも英傑がいたものだ。特別な称号もこれではなんだかありふれたもののように思えて来てしまう。

 まあ英傑の中でもかなり強さの振れ幅が大きいので、本当に強い奴は特別かもしれないが……

 こいつらも1人ずつ戦えば手こずることもない。ただ、これだけの数となると、俺1人で捌ききるのは難しい。


 せめて精霊魔法が使えれば……そう思うが、発動しないことは散々試した後だ。

 聞いた話によると、セラフィは精霊としての能力を封じられているらしく、そのため普通の魔法も精霊魔法も使えない状態だ。

 普段どれだけ助けられているのかを実感する……だが、そのセラフィがピンチならば、俺が全力で助けるのだ。

 しばらく忘れていたが、俺は俺の中の物語の主人公なのだ。ならば、できるという気持ちを持ち続け、目の前の立ち塞がる敵を倒すだけだ。


「……いくぞ!」


 俺は気合を入れる意味も込めて敵に向け叫んで突っ込む。

 目指すのはただひたすらに前へ……セラフィが囚われているという、貴族の屋敷に向かってだ。


 向かってくる英傑を、次へ次へと薙ぎ払っていく。

 当然、前を全力で目指しているため、防御は非常に疎かだ。敵を倒しながらも、俺の身体には傷が増え、血が飛ぶ。

 しかし、大きなダメージは受けていない。なりふり構わず敵を倒しながら進んでいるので、深く斬り込めるほど敵が俺に接近できていないからだ。


 いつもよりも身体が軽く、ある種の全能感すらあったが、小さい傷でも増えていけばそれなりに響いてくる。今は極限の興奮状態なのでまだ動けているが、身体が重くなってきているのは感じているし、少しでも気を緩めたら一気に来る気がする。

 無理を通すと決めた以上は、止まらずにやりきるしかない。


 敵の血を浴びてとても気持ち悪い。魔獣の血ならばこれまで沢山浴びてきたが、人間の血をここまで浴びることはまず無かった。

 なるべく意識しないように拭っては、更にまた血を浴びた……


「こんなとこで止まれるか……」


 セラフィが攫われて既に一週間以上が経っている……そしてようやく目の前まで来ることができたのだ。どれだけきつかろうと止まれる訳がない。


 剣が敵を斬り、フォトンレイが肉体を貫く……しかし、腐っても英傑というだけあって、普通の兵士のようにはいかない。

 流石に剣で斬った奴は一撃なのだが、フォトンレイは当たり所が良くないと倒せないし、痛みに屈することもなく向かってくる。HPも既に五割というところまできており、ここから更に強敵が出てきたらかなり厳しい戦いになりそうだった。


 だが、無理をした甲斐もあり、屋敷はもう目の前というところまできた。

 そして、正面に立ち塞がる英傑を斬り伏せ、屋敷の扉に突っ込み、無駄に広い庭に転がる。


「……ちっ、まだいるのかよ……」


 そこには、更に英傑が待ち構えており、俺に向かって魔法を放つ準備をしている。

 転がって入った為、魔法が放たれる前に距離を詰めるのは難しい。非常に厄介な状況だ。


「先輩!?」


 仕方なしに無理やり数人だけでも魔法で削ってやろうかと考えていると、後ろから声が掛けられる。

 そして、俺と英傑達を割るように庭の中心に雷が落ちた。


「アノン! それにサクラも! ナイスタイミングだ!」


 俺よりも遅れてこちらに向かっていたアノンとサクラが追い付いたのだ。

 まだそれほど時間が経っていないと思っていたのだが、どうやら想像以上に英傑に足止めを食らっていたらしい。


「先輩、ここは任せてください!」

「私達が英傑は抑えます! セラフィ様をお助けください!」

「でもまだ後ろからも来るぞ……大丈夫か?」

「これでも私は勇者ですから!」

「このような相手に後れを取っていてはヨゾラ様のメイドとして誇れません……私達は大丈夫です!」

「……分かった、無茶はするなよ!」


 流石にこれ程の数の英傑を見ると心配になってしまうが、2人がそう言うなら信じて前に進むことにする。


 屋敷の入り口に向かって真っ直ぐ突っ込む。当然そちらの方向には英傑も多くいるが……


「邪魔は……」

「させません!」


 アノンとサクラが、俺の正面にいる敵を倒してくれる。一瞬出来た穴を掻い潜って、俺は屋敷の中に突入した。


 屋敷の中は、外とは全く違い、英傑の1人も見えなかった。

 外ではアノンとサクラが戦っている音が響いており、屋敷の中はそれ以外の音は一切聞こえない。


「確か……地下だったか……」


 隠密隊の獣人が、恐らくセラフィは地下に囚われていると言っていた。しかし、屋敷の正確な構造は把握できていないらしく、地下に続く階段までは分からなかったみたなので、まずはそれを見つけるところからだ。


 そういった場所への道は基本的には隠したいと思うのが普通だ。そのために、むしろある程度癖のある場所に作られていたりする。そして、尚且つ人目にはあまり付かない場所が多く、廊下の壁なんかに仕掛けがあるといったことも、可能性としてはそれほど高くないだろう。

 その条件がまず当てはまる場所といえば、この屋敷で最も偉い者の部屋だったりする。


 俺は自身の城の構造を思い出しながら、ハーツという貴族の当主が使う部屋の場所を探していく……


「ここか……?」


 当たりを付けた部屋に入ると、中はやけに豪華になっており、明らかに貴族が使用する部屋だと分かる。

 恐らくはこの場所が当主の部屋だろう。


「本棚の裏は……牢屋に繋がっていると考えると、拷問なんかで血が付く可能性があるから考えにくい……壁画も壁の高いところだし違うな……あんな重そうなベッドの下とは考えにくいし……するとここか?」


 消去法で可能性を潰しながら歩いていると、部屋の一角にある暖炉に目が付いた。


「ここだとすれば何かしらの仕掛けで開くタイプか? まあいいや、面倒臭い」


 わざわざ仕掛けを律儀に解いてやる必要は無い。俺は部屋の端まで下がり、岩の魔法を発動させて放つ。

 大きな音が鳴り響き、崩れた瓦礫で一瞬視界が悪くなる。それが晴れると、そこには地下へと続く階段があった。


「当たりか……」


 俺は階段の上で剣を構えて、いつでも戦闘に入れるように準備をする。


「……待ってろよセラフィ!」


 そして俺は、暗く地下へと続く階段を下って行った。





自由な女神「いよいよセラフィちゃんの元へ辿り着けるんだね! これ以上は何も起こらないといいけど……」

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