表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この異世界は物足りない  作者: VRクロエ
英傑決戦編
105/137

聖女到着

 ヨゾラ達が前線で歩みを進めているなか、帝国騎士に連れてこられた兵士を抜いた残りの戦力もようやく到着した。

 森の木をある程度切り倒し、そこそこの広い空間を作ってから大きくテントが張られ、そこを中心に小さいテントが張られていく。

 この場所が今回の戦争の司令部となり、指揮系統と怪我人を手当てするための医療施設となる。

 各国の治療班やノーヴィストの治療隊もこの場所におり、現在進行形で増える怪我人の手当てに精力を注いでいた。


「敵の規模はどれだけになってる!?」


 そして今回指揮を執る者として、グラヴィウス帝国の皇帝であるフロディスとレジケル王国の皇帝であるレグナルトも自らこの場にやってきていた。

 王自ら出てきたのは様々な理由があるが、大きな理由としては二つだろう。


 まず一つ目は、全ての国を敵に回している奴らに対して、国同士の団結力を誇示するためだ。

 戦場にはヨゾラというノーヴィストの王も出ているため、ここは同じ王として戦場に赴き、市民に対して王同士の仲が良好なことをアピールするためでもある。


 そして二つ目の理由だが、この2人の王は、立場に反して生粋の戦士であり、そして戦力としても大きく貢献できるからだ。

 フロディスは言うまでもなく剣の国、武の国を治める皇帝であり、その実力は帝国騎士を上回る。

 そしてレグナルトだが、基本的に魔法研究がメインのレジケル王国の王であり、実際に学者であることも間違いでは無いが、それでも魔法の先進国の王が弱い訳もなく、大きな魔法を行使するためにレベル上げもしていることから、かなりの実力の持ち主だった。


 今こそこうして指揮を飛ばしているが、もう少し敵の戦力把握等が進めば、自ら戦場に出るつもりでいた。


 戦況的にはまだ読み切れない状況が続いている。単身で軍を相手にすることができるヨゾラとアノンという2人がいても、敵の規模が多すぎるのと英傑という世界の猛者達という要素が戦況把握を邪魔している。

 報告ではノーヴィストの兵士達が中心となり大群との交戦が行われており、サクラ等といった実力者の元には続々と英傑が現れている。

 まだ投入されていない英傑もいることから、現在英傑と交戦中の誰かが敗北すれば、戦況が傾く可能性も十分にあり得る状況だった。


 戦力が足りていない……それがフロディスとレグナルトの見立てだ。

 帝国騎士が頑張っているのと、宮廷魔導士が神級魔法の準備を進めているが、それでどこまで敵を削れるか……そも神級魔法はセラフィがおかしいだけで連発出来るようなものではない。


 そんな歯痒い状況が続く中、タイミング良くと言っていいのか、この場にいないもう1人の王が辿り着いた。


「皇帝陛下!」

「どうしたそんなに慌てて!」

「スプリトゥス聖国より、アルジェ教皇と聖女様達が到着なされました!」

「なんだって!?」


 報告を受けたフロディスは驚きの声を上げて振り返る。

 そこには、完全武装をしたアルジェと水の聖女を抜いた他全員の聖女が揃っていた。


「……ヨゾラさんは? この場にはいないようですが?」

「ヨゾラは戦場に出ている。それにしても、滅多に連れ出さない聖女を1人を除いて全員連れ出してくるとは……」

「当然です、それだけの事態なのですから。……行きますよあなた達」


 アルジェはそれ以上は聞きたいこともないとばかりに、聖女達を連れて戦場へ向かおうとする。


「ま、待て! 状況も把握しきれていないのに戦場へ出るのか!?」

「むしろその状況だからこそ出るのですよ。どのような状況でも無理やりにこちら側へ引っ張るために……むしろフロディス、あなたは何故まだこの場にいるのですか?」


 アルジェは少し怒ったような感じで言い捨てて今度こそ戦場へ向かって行った。


 突然のアルジェと聖女の登場で場は騒然としていたが、そのアルジェ達が去って行ったことで、徐々に冷静さを取り戻していった。

 アルジェに厳しい言葉を掛けられたフロディスは当然のこと、近くにいたレグナルトも言われっぱなしで済ます訳が無い。


 自らも戦場へ向かうことを決めた。


 指揮を別の者へ任せて武装を整える。

 レグナルトは神級魔法を放つ宮廷魔導士達への指示を伝令に伝えて、準備をする。剣などは殆ど素人と変わらないが、それでもその辺の相手に後れを取ることはない。これまで積み重ねてきた魔法の研鑽があれば、戦況を変えるきっかけにもなれる。


 フロディスとレグナルトは止める周囲の声を無視するように戦場に向かって行った。






 ――――――――――






「さて、それじゃあいっちょやりますか」


 火の聖女であるヘリコニアは大剣を肩に担いで目の前で起こる戦争に目を向ける。

 聖女は基本的に精霊魔法を使った戦闘スタイルとなるのだが、ヘリコニアだけは純粋な剣術にも長けており、言わば聖女の中では前衛ということになっている。


「ヘリコニアはなるべく敵を削りなさい。セロはその援護を、イキシアとベラは英傑と交戦中の者の元へ向かいなさい」


 アルジェが指示を出すとイキシアとベラは英傑が現れた場所に向かった。

 この2人は光と闇の聖女であり、攻撃するための精霊魔法は当然使えるが、それよりも支援に長けた聖女だった。

 光と闇の魔法にはヨゾラやセラフィが使うようなバフの効果を生む魔法もあり、その逆にセラフィがかつてルーシェとの模擬戦の際に見せたデバフの魔法も存在するため、支援するということに関しては他の属性よりも勝る。

 そもそもが英傑と戦っている者達は猛者で、そこに聖女の支援が加われば英傑といえど倒すことは出来るだろう。


「それではアストラ、私達も行きますよ」


 アルジェが告げると、アストラの目の前に光が収縮していく。

 ヨゾラやセラフィがよく使うフォトンブラストだ。


 放たれたフォトンブラストは射線上の兵士達を飲み込んでいく。

 流石にヨゾラとセラフィ程の威力は無く、相手の身体を消し去るまではいかないが、それでも多くの死者を生み出した。


 戦場に突如として出来た穴にヘリコニアは突っ込んでいく。

 剣に炎を纏わせているその様子は、英傑であるロニが本気で戦う時に似ているが、違う点があるとすれば、ヘリコニアの支援に回るセロの存在だろう。

 フーシーのように攻撃するための魔法を放つ訳では無く、土の聖女である彼女は地形を変え、的確にヘリコニアが戦いやすく敵が戦いにくいフィールドを作り上げていった。

 このようなことは創級の精霊が得意としていることだが、最上位ではないとはいえ崇級精霊は理級に次ぐ力を持っている。同じことをやるにしても、創級精霊とは規模が違うのだ。


 生み出された独自のフィールドの上でヘリコニアは炎を纏い舞うように敵を倒していく。

 その実力は英傑と比べても遜色なく、スプリトゥス聖国が英傑を抱えていなくとも他国と対等な力関係を築けている要因をはっきりと表していた。


 別の場所では大きな爆発音が鳴り響いた。レグナルトによる魔法だ。

 同じくしてフロディスが敵に向かって斬りこんでいく。

 凡そ皇帝とは思ないような無茶振りに、敵の兵士達も怯んでいた。


 アルジェが言ったように、確かに戦況は動いていた。

 まだ英傑は誰も落ちていないので、戦力的にそれ程削れている訳では無いが、勢いという意味では傾きつつある。


「アルジェ様! 英傑が出てきたぜ」

「やはり来ましたか。さっさと倒しますよ。ヘリコニア、後れを取らないように」

「へっ、任せてくれよ」


 出てきた英傑は1人。双剣を持つ細身の男だった。

 この場で勢いのあるアルジェ達に対して1人しかぶつけてこなかったということは、それだけ余裕が無いか、英傑の中でも上位の実力があるか……だがいずれにせよアルジェ達のやることは変わらない。


 自ら斬りこんだヘリコニアの大剣を英傑の男は受け止める。

 しかし、受け止めた大剣から灼熱の炎が噴き出して、英傑の男は一度距離をとった。


「やるねあんた。名前は?」

「ヘリコニアだ、そういうあんたは?」

「ラグナだ。いやぁ、久々に強い奴と戦えるって聞いてて楽しみにしてたが、まさか聖女と教皇が相手をしてくれるとはな!」


 今度はラグナの方から斬りこんでくる。

 双剣を持っていることからも予想は出来ていたが、ラグナはやはり手数で押してくるタイプのようで、大剣を使うヘリコニアにとってはやりにくい相手だった。


 しかしそれを補うのが、土の聖女であるセロと教皇のアルジェだった。

 的確な足場や障害物を作り出すセロがラグナに上手く攻め込ませない。そこへ出来た隙を突いてアルジェが様々な魔法をアストラと共に放っていく。

 更には食らえば一撃必殺の威力があるヘリコニアの攻撃がラグナを攻め立てた。


 ラグナからしてみれば、最悪ヘリコニアを一旦放置してアルジェとセロに攻め入ることも出来なくは無いが、それは目の前のヘリコニアから逃げているようで嫌だった。

 先程ラグナ自身が言ったように、強い奴と戦うことができればいいのだ。

 強者との戦いに楽しみを見出すラグナは、正直言えばこの戦争でどちらが勝っても別にいいのだ。

 獣人に恨みがあるわけでもなく、各国に対して疑念を抱いているわけでもない。


「ははっ、楽しいじゃん!」


 ラグナは更に速度を上げてヘリコニアに斬りかかる。

 その顔には笑顔を浮かべながら。


 そして、戦いに楽しみを見出すのはこの場でもう1人いた。

 今もなおラグナの猛攻に負けず、その大剣を振るうヘリコニアだ。

 彼女は大人しい者が揃う聖女達には珍しく、己が剣で戦うのが好きだった。


「ヘリコニア! 慎みなさい!」

「悪いアルジェ様、無理だ!」


 アルジェに諫められたヘリコニアだったが、むしろ歯を見せて更に苛烈にラグナに斬りかかっていく。


 この場の戦いは周囲を巻き込んでさらに苛烈になっていく。

 しかし被害が及んだのは敵側だけで、味方の兵士達はさっさと撤退しているので、巻き込まれることはなかった。

 結果的に決着は付かずとも、敵の戦力を削ることは順調に成功しているのだった。


自由な女神「流石聖女と呼ばれるだけあって強いね。でもその聖女2人と教皇のアルジェを同時に相手にして互角に戦えてるって、やっぱり英傑は侮れないね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ