集い戦う
目を覚ますと、俺は見知らぬテントの中にいた。
傍にはサクラがおり、俺が目を覚ましたことに気が付くと、安心したように顔を覗き込んでくる。
「ヨゾラ様……!? 良かった……目を覚ましたんですね!」
「ああ……悪いサクラ、心配掛けたみたいだな」
サクラに手を貸してもらって身体を起こす。
HPはそれなりに減ってはいたが、傷自体はそれほど大きいものはなかったので、あまり身体が痛むことは無かった。
あそこまで追い詰められてしまったのは、やはり疲れが大きかったので、こうして気絶して休むことが出来たお陰か、もうそれほど身体は重たくはない。
「とりあえず状況を教えてくれ」
「はい。まずここはヨゾラ様が戦っていた場所から少し離れた森の中で、ビャクが用意した簡易テントの中です。本当はもう少しマシな場所を用意したかったのですが、土属性の魔法に長けている者がおらずこのような場所になってしまいました……」
「それは別にいいよ。むしろよくテントなんて用意してたな」
「ビャクが収納袋に用意していました。時間は半日程が経過していまして、アノンさんも戻ってきています。アノンさんであればあの3人はどうにかなるでしょうが、その後のことを考えて仕切り直すこととなりました」
俺の代わりに英傑3人の相手をすることになったアノンのことを心配していたのだが、流石に無茶はしなかったようで、退いてきたようだ。
アノンも相当強くなっているので、あの3人にいいようにやられることはないだろうが、あの戦場には他にもまだまだ多くの兵士が残っていた。もしかなりの消耗を強いられてしまったら、危ないだろう。
丁度アノンの話をしていたら、誰かから俺が起きたことを聞いたのか、テントの中に入ってきた。
「先輩! 怪我は大丈夫ですか?」
「ああ、傷とかは大丈夫だよ。来てくれてありがとな」
「いえ、今まで沢山助けて頂きましたから……間に合って本当に良かったです」
「他には誰か来てるのか?」
「現状到着しているのは私とサクラさんとビャクさんだけですね。先輩が1人で向かったっていうのを話しているのが聞こえたので、急いで向かったらサクラさんとビャクさんに偶然会った感じでした」
「ビャクの話だと、各国の戦力が到着するのももうすぐみたいです」
この間俺が帝都に行った時はまだ色々と話し合いをしていたのでまだ来ないかと思っていたのだが、相当急いだようだ。
到着が近いなら、次に突撃する時は戦力として期待していいだろう。前回は俺のコンディションも最悪だったが、今度は大丈夫だ。絶対に突破してみせる。
ただ懸念があるとすれば、相手の戦力があの程度だけではないということだ。
フロディスから聞いた話だと、英傑の大半が向こうに付いているみたいなので、俺が戦った奴らが英傑の中でもどれほどの強さなのかは分からないが、油断できないことだけは確かだろう。
まあだからといってやることは変わらない。油断はできないというだけだ。
「どうしますか先輩?」
「勿論もう一度行くさ。あんまり時間は掛けてられないからな」
「分かりました。お供します」
「私も行きますヨゾラ様! ビャクはノーヴィストの兵士達をこの場所まで連れてきているのでまだ合流できないので、私がヨゾラ様の進む道を開いてみせます」
正直心強い。アノンの実力は言わずもがな、サクラも最近ではかなり強くなっている。複数でなければ英傑とも全然戦えるだろう。
それに俺だけであの大群を相手にするのは流石に骨だ。こういう時広範囲に火力を出せるセラフィがいると本当に楽なのだが、今それを言っても仕方が無い。
「それじゃあ行くか」
「はい!」
「お供します」
目覚めて早々だが、俺達は再び戦場に向かった。
あの軍隊が進軍するとなると、それ程の速度は出ない。それに俺が削った分もあるので、またあの場での戦闘になるだろう。
俺達が敵を目視できる場所まで来ると、まるで俺の襲撃が無かったかのように、大量の兵士達で埋め尽くされていた。
一体どれ程の規模なのだろうか……よくもまあ今までバレずにかき集めたものだ。
その大量の兵士達が一斉に剣を抜く。
もしや気が付かれたかと思ったが、どうやらそういう訳では無く、俺達とは別の方に向かって行った。
何処へ行くのだろうかと、そちらに目を向けると、どうやらアノンの予想は若干外れたらしく、フロディス達が集めたであろう、味方の兵士達が大量に見えた。
その中にはビャクやノーヴィストの兵士達もおり、みな一様に怒りを露にしていた。
ノーヴィストの獣人達もセラフィを奪われて怒っているのだ。
「俺達も行くぞ!」
挟みこめるチャンスを逃す手はない。俺はアノンとサクラに声を掛けて突っ込んだ。
乱戦となっている中、敵と味方を間違いないように沈めていく。
挟めたということもあり、流れはこちらが優勢だった。
「ヨゾラ様、遅くなって申し訳ございませんでした」
敵を屠りながらビャクは俺の元へやってきて謝罪をする。
基本的に国の仕事をしているイメージなのだが、ビャクもかなり力を上げていた。一体いつレベル上げをしているのだろう? 今度聞いてみるのもいいかもしれない。
「いや、ベストタイミングだ! よく間に合わせてくれたな」
「我が国の兵士達も相当にやる気が高く、進軍速度が速かったため予定よりも早く到着することができました。各国が集めている戦力はまだ全てが間に合っている訳ではありませんが、即座に出撃できる兵士達を帝国騎士が纏め上げて連れてきたようです」
どうやら今回他の国の兵士達がある程度間に合ったのは、帝国騎士が積極的に動いてくれたようだ。
それもこれも、あの2人が帝国騎士だったおかげだろう。
俺はその2人を探しながら移動し、すぐに見つけることができた。
学生時代から絶え間なく努力を続けていた2人は、最前線とも呼べる場所で暴れていた。
「セシル! ルーシェ! 来てくれたのか!」
「お? ヨゾラか。当たり前じゃなかいか! 言っただろ? 必ず助けになるって」
「それにね、セラフィを攫われて怒ってるのはヨゾラ君やノーヴィストの人達だけじゃない。私だって、友達を攫われて怒ってるんだよ!」
セシルもルーシェも今回のことは本気で怒っているようで、その剣にも力が籠っていた。
本当に良い友人を持てて誇らしく、そして2人がとても頼もしい。
「ヨゾラ、先に進め! お前は止まるな!」
「絶対セラフィを助けてね!」
「ありがとう……絶対に無茶だけはするなよ!」
無駄に数が多い兵士達はセシルとルーシェに任せて俺は更に先へ進む。
途中まで俺を止めようとしていた兵士達だったが、やがてそれは無理だと諦めて、あまり近寄って来なくなった。
それでも、人と人の間を抜けているので、ある程度は仕方が無いが、正直その程度で止まる訳が無い。
しかし、ある程度進んだところで、不意に嫌な予感がした。
「はっ! 性懲りもなくまた来やがったな! 前回同様ボコボコにさせてもらうぞ!」
「疲れてただけで、ボコボコって程じゃなかったけどな!」
豪快に斬りこんで来たのは、前回現れた英傑の大男だ。
見た目は奴の方が大きく、パワーもありそうだが、残念ながらステータス重視のこの世界……俺は剣で受け止めてはじき返した。
そこへすかさず魔法が飛んでくる。同じパターンではやられない。
俺はその魔法を軽く回避して、次いで来た素早い奴を蹴り飛ばす。
やはり疲れが無ければ負けることはなさそうだが、瞬殺できるかは正直微妙なところだ。こんなところで足止めは食らいたくないが……どうするか。
「先輩! 後ろに跳んでください!」
悩んでいると丁度良いタイミングで俺の後ろから声が掛かり、その言葉に従って後ろに跳ぶ。
すると、先程まで俺がいた場所と3人の英傑を巻き込んで雷が落ちる。
アノンのヘブンリ―サンダーだ。
「ナイスタイミングだアノン! 流石勇者!」
「勇者であることは関係無いと思いますが……それよりも先輩は先に行ってください! ここは私が引き受けます! サクラさんやビャクさんも現れた英傑との交戦に入っているので、恐らく援護は厳しいと思います。それと、敵の本拠地は恐らくですが、この先にあるハーツ領だと思われます!」
ハーツ領……何処かで聞いたような気もするがイマイチ思い出せない。
「向こうは大丈夫そうか?」
「信じましょう」
ビャクが負ける姿は想像しにくいが、サクラに関しては英傑相手に何処までやれるだろうか……だが、アノンの言う通り、今は信じるしかない。それにサクラも強くなっている。
ここでアノンが英傑3人を相手にしてくれれば、後はかなり楽に突破できそうだ。まだまだ英傑が残っている可能性も捨てきれないが、現在計5人。その全てが俺に向かってくるとは考えにくい。
ここまでしてもらったのだから、後は俺が強行突破するだけだ。
「それじゃあここは頼んだアノン。勇者の力を見せてやれ!」
「はい! 先輩もご武運を!」
俺はアノンのヘブンリ―サンダーにより砂埃が巻き上がっているうちに先に進む。
流石にこれ以上は楽に通してはくれないようで、兵士達が血眼になって向かってきた。
雑魚がどれだけ束になっても、俺に勝てないと悟ればいいものを……
面倒なので、俺は戦場から大きく離れて森の中に入る。
流石にそこまでは追ってこないようで、俺は方向だけ間違わないように森の中を全力で進んでいった。
アノンが言うのはこの先にあるというハーツ領が敵の本拠地みたいなので、セラフィが囚われている可能性が高い。
全ての戦力が出払っているとは考えにくいし、むしろセラフィが囚われていることを考えれば英傑の1人か2人残っていてもおかしくはない。
ここからは更に気を引き締めていくことにしよう。
自由な女神「皆大集合だね! これなら絶対勝てるよ!」




