閑話:囚われのセラフィ
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目を覚ますと、まず肌寒さを感じた。
手を動かそうにも、縛られているようで鎖の音がするだけだ。
場所の予想は出来ない。薄暗い石造りの牢獄に繋がれており、情報は目の前の牢の先からしか取ることが出来ない。
「こんな牢獄などいつもならば吹き飛ばしてやるものを……この首輪、原理は分からぬが精霊の力を封じるという効果があるようじゃな……」
セラフィの首には相変わらず首輪のようなものがされている。これが付けられてからセラフィは全くと言って良いほど力が何も使えなくなっていた。
理級精霊すら封じることが出来る魔道具とは果てしなく協力だが、形状からしてセラフィ専用に作られたものだろう。現状で擬人化してる精霊はセラフィだけだ。
この状態ではセラフィに出来ることは何もない。ヨゾラが必ず助けに来るはずだが、それよりもセラフィはヨゾラの心情面を心配していた。
「あやつは守ると決めたらひたすらに無茶をする。しかし今回は既に手遅れかもしれないというようにヨゾラ目線だと感じているやもしれぬ……だとすると、怒りでどういった行動を起こすか分からぬな……」
ヨゾラは簡単に誰かに心を開いたりしない。しかし心を許したからには、その者を庇護するかのような感情すら見せることがある。
そのヨゾラが自惚れではなく最も大切にしている己を失ったとなれば、ヨゾラがどうなってしまうのかはセラフィにも分からなかった。
せめて精霊魔法だけでも使えたなら、無事だと伝えることが出来るのだが、それすら出来ないのはどうしようもなく歯痒かった。
これ以上は考えても仕方ないので、状況を打開することに関しては諦めることにする。
次に考えるのは、攫った者達の目的だ。
考えられる目的は複数あり、まず一番は獣人との戦争を誘発するという目的だ。
現状はほぼ王らしいことをしていないとはいえ、ヨゾラもセラフィも獣人達からの支持は果てしなく高い。そんな王の片割れであるセラフィが攫われたとなれば、獣人達は激怒するだろう。
それこそ再び人間と獣人の戦争が始まるレベルにだ。
他に考えられることといえば、こうしてセラフィが生かされているというのを見るに、何らかの方法でセラフィを操る術を持っている可能性だ。
そんなことが出来るとすれば、かなり脅威となる戦力を手にすることが出来るということだ。
例えばグラヴィウス帝国の帝都やレジケル王国の王都す攻め込むとするのならば、単体で神級魔法を使えるセラフィはとてつもない被害を齎すことが出来るだろう。
それこそ、数発の魔法で一般市民の数百を削ることも出来るのだ。
こうしてセラフィの力を封じることが出来る魔道具が存在する以上、可能性として消しきれないので恐ろしい。
万が一そうなってしまえば、セラフィを倒すことが出来るのはヨゾラかもしくはアノンだけだろう。だが、もしあの2人がセラフィを倒さなければならないとなったら、きっと心を酷く痛めるはずだ。ヨゾラに関してはそれでもセラフィとは戦わないかもしれない。
「死ぬことは怖くない……じゃが、その結果ヨゾラを傷つけるのは恐ろしいな……」
最悪の可能性をこれ以上考えないようにする。ただでさえ心細いのに、嫌なことばかりは考えたくなかった。
そんな孤独を感じているセラフィの気持ちを知っているかのように、静かな牢獄の向こう側からやって来る者がいた。
これがヨゾラや、セラフィと仲の良い者ならばよかったのだが、残念ながらこの場にそのような者が現れる訳もなく……しかしセラフィとは顔見知りの相手だった。
「目が覚めたようだな」
「おぬしは……誰じゃ?」
「……本当に見た目以外はふざけた女だ」
残念なことにセラフィは覚えてはいなかった。セラフィからしてみれば所詮はその程度の興味しかない相手。
だが、因縁がある相手なのは間違いない。
「ロウだよ。貴様といつも共にいる男に屈辱を与えられたな!」
「む? ああ、ヨゾラに決闘で負け、ケルベロスに手も足も出なかった男じゃな」
「ふん、自分の立場を分かっていないようだな」
やってきたのはヨゾラとセラフィの同級生であったロウだった。
ロウはセラフィのまるで興味の無いというような態度にイラつき、剣を抜いてセラフィの首筋に持っていった。
「今はもう俺のものだ。態度は舐めているが顔はやはり悪くない。貴様の目の前にあの男の死体を持ってきて屈服させてやることにしよう」
セラフィに下品な視線を向けるロウは完全に私欲だけで動いていた。
ロウが人間主義連合に参加しているのは、父親が参加しているというのもあるが、一番の理由はヨゾラへの復讐とセラフィを手に入れる為だった。
セラフィにフラれてヨゾラに決闘で負けたのは完全に自業自得だし、ケルベロスとのことに関しては助けられた側なのだが、プライドが高いロウはそれを認めてはいない。
貴族らしいと言えば貴族らしいが、あまりにも歪んでいた。
「おぬしら如きにヨゾラが倒せる訳がなかろう。夢の見過ぎじゃ」
「ふん、精々そう思ってればいいさ」
それだけ言い残してロウは去って行った。
再びの静寂が訪れ、先程はロウにああ言ったが、嫌な予感がしているセラフィはただただヨゾラの無事を祈る。
「ヨゾラ、負けるでないぞ……」
自由な女神「久々にモブが出てきたと思ったら随分と偉そうじゃないかな? やっちゃってヨゾラ君!」




