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この異世界は物足りない  作者: VRクロエ
英傑決戦編
101/137

人間主義連合

全然気が付かなかったんですけど100話超えてました! 今後もよろしくお願いします!

 グラヴィウス帝国の帝都に着いたのはノーヴィストを飛び出してから二週間程が経ってからだった。

 本当であれば休み無しで進みたかったのだが、人間の身体では限界がある。全力で進むのは三日が限界で、そこからは数時間休んでまた進むという感じだった。

 それでもその程度の休みで行けたのは、やはり今の身体のスペックが相当高いのと、あとはステータスも関係している気がする。


 戦装まで持ち出しての進行で既に疲労が半端ないが、まだ足は止められない。犯人が人間だということは、フロディスならば何か情報を掴んでいるかもしれないので、まずは王城に向かって話を聞くことにする。


 王都内を全力で走っていると、人にぶつかりそうになるが、集中力を切らさずに避けていく。流石に一般人に怪我をさせる訳にはいかない。

 注目を集めながら王城まで進んでいき、辿り着いたところで兵士に止められた。


「よ、ヨゾラ様!? 訪問の予定は無かったはずですが……」

「いいから通せ! フロディスに急ぎの用事がある!」

「で、ですが……」

「チッ……もういい!」


 時間の無駄なので、無理やり城の中に入る。


「ふ、フロディス皇帝陛下は会議室におられます!」

「助かる!」


 こうなっては俺を止めることは無理だと悟った兵士は、俺の背中に向かってフロディスの居場所を教えてくれた。

 会議室にいるということは、もしかすると今回のことを掴んでおり、何かを話し合っているのかもしれない。


 王城内はそれなりに詳しいので会議室の場所も分かる。

 すれ違って驚いた表情をしている使用人達をフル無視して会議室に向かうと、扉の前にはセシルとルーシェが立っており、他の奴らと同様に俺の姿を見て驚いていた。


「悪い、中に入れてくれ」


 2人は帝国騎士として、ここを誰も通さないように守っているのだろう。

 もしかすると俺が中に入って行けば、後々2人の立場に響いてくるかもしれない。そんなことにはなってほしくないが、今は通してもらう他無いのだ。


「……分かったヨゾラ、入ってくれ」

「いいのセシル!?」

「ヨゾラの様子を見るに、相当な事態なんだろう。それにヨゾラが何の理由もなく誰かを傷つけるような奴じゃないのはよく知ってるじゃないか」

「それもそうだね……うん、通ってヨゾラ君!」

「ありがとう2人共」


 俺の様子を見て通すことを許してくれたセシルとルーシェに感謝しながら扉を開ける。

 中にはフロディスとフリザーブに加えて、何人かの貴族達が神妙な面持ちで何かを話し合っていたが、俺が入ってきたことによって、驚きからか全員が俺の方を向いて固まった。


「ど、どうしたヨゾラ!? なんでここに――」

「聞きたいことがある。俺達を敵に回した馬鹿共のことを知ってるか?」


 改めて口に出すと、多少冷静になっていたのに再び怒りが湧いてくる。俺の雰囲気を感じ取った貴族達は緊張したように身体を強張らせて、聞かれたフロディスは頭の痛そうな顔をしていた。


「ヨゾラの方でも存在を掴んでいたか……」

「知ってるなら今掴んでる情報を全て話せ」


 やはりフロディスの方でも何かを掴んでいたようだ。だったら話は早い、その情報を聞き出してセラフィを助けに行くだけだ。


「奴らは人間主義連合と名乗る貴族の集まりだ。その規模はグラヴィウス、レジケル、スプリトゥスが保有する戦力を数の上では上回っていて、更には英傑の大半も囲っている。上層部はグラヴィウスとレジケルの貴族の集まりで、先日各国に宣戦布告をしてきたのだ」


 人間主義連合ということは、獣人の存在を許していない奴らの集まりか……いや、どうせ獣人という敵がいると都合が良い連中が、先の戦争で獣人に恨みのある兵士や家族なんかを取り込んだんだろうな。

 ノーヴィスト以外の国に宣戦布告したということは、ノーヴィストと和平を結んでいる今の国の実権を力でもって握り、ノーヴィストとの戦争再開を企てているのだろう。


 まあどんな理由があるにしろ、要はクーデターだ。そもそも理由など関係無く、セラフィに手を出した時点で絶対的な敵であることに変わりはない。


「拠点などは一切判明していないが、一週間後に全面的に攻めてくる。恐らくだが、グラヴィウスとレジケルの中間辺りで大規模な戦闘になり、ほぼそこで全勢力がぶつかるだろう。既にレジケルとスプリトゥスには伝えて、戦力を集結させており、ノーヴィストにも伝令を出したところだったのだ」

「そうか……分かった」


 聞きたいことは聞けた。とにかくその場所で戦闘が起こるということは、きっとその辺りに奴らの本拠地がある可能性が高いし、戦力が集結しているところにセラフィが捉えられている可能性が高い。

 相当な規模の敵みたいだが、とりあえず俺を敵に回したことを後悔させてやる。


「待てヨゾラ! 何処へ行く気だ!?」

「おかしなことを聞くなフロディス。敵がいる場所が分かったんなら全員ぶち殺しに行くに決まってんだろ」

「確かにお前は敵には容赦しないタイプだが、些か焦り過ぎではないか? こちらでも戦力を揃えておるし、戦いに向かうならそれを待ってからでも遅くはないではないか……それに1人で来たのか? いつも一緒にいるセラフィはどうした?」

「セラフィなら攫われたよ、その人間主義連合とかいう馬鹿共にな。これ以上話はない。俺は行く」


 これ以上は時間の無駄なので、俺はその場を後にして向かうことにする。

 そういえば疲労がやばいのを忘れていたが、それは向かいながら少しずつ休んで回復することにしよう。

 とにかく今は一刻も早く敵を殲滅してセラフィを助けなければならない。


 まあ正直な話をするのであれば、多くの英傑を抱える人間主義連合相手に1人で戦うのは無理があるというのは分かってはいるが、戦っている間にフロディス達がかき集めた各国の戦力が到着するだろうし、ノーヴィストの戦力もビャク辺りが動かして急いで向かってきているはずだ。

 戦力的には数の上でも劣っているみたいだが、数の不利なんか俺1人で覆してやる。

 魔王と呼ばれる俺を敵に回したことを後悔するがいい。


「……待ってろよセラフィ……今行くからな!」


 俺は再び目的地に向けて全力で走り出した。






 ――――――――――






 セラフィが攫われたという情報は世界を震撼した。


「セラフィが攫われた……? だからヨゾラはあんなにも……」

「父上! どういたしますか?」

「すぐにスプリトゥス聖国へ伝えろ! 一体どのようなことが起こるか分からないが、アルジェ教皇の耳に入ればスプリトゥス聖国はもう容赦せずに戦力を送り込んでくる。我々は早急にレジケルとの軍を纏め上げてヨゾラの援護に向かうぞ!」


 武の国として今回の戦の総本山となっているグラヴィウス帝国は一刻も早くヨゾラの元へ向かう為に半ば無理やりに軍の編成を進めていく。

 帝国騎士の中にもセシルやルーシェのように自ら志願して戦場に赴く者もおり、英傑を相手にするとなると少し心許ないが、それなりの戦力が揃いつつある。

 王女であるアマリリスも率先して軍の纏めに協力したとこにより、予想よりも早く進んでいた。


 レジケル王国でも大きな動きがあり、更なる戦力追加のためにレグナルトが指示を出している。


「魔法の申し子であるセラフィ殿を攫うとはなんということだ! 宮廷魔導士も出して必ずセラフィ殿を奪還するのだ! 絶対にあの者を失ってはならぬ!」


 理級精霊、しかも二属性を操れるセラフィという存在は、レジケル王国にとっても最重要な人物とされており、その奪還の為ならば、戦力を惜しむつもりはない。

 まさに人間国宝とも呼ばれる存在であり、宮廷魔導士というこの世界でも数える程しかない神級魔法を発動させられる者達の出撃を命じたのだ。


 そして、最も荒れたのは言うまでもなくスプリトゥス聖国だ。


「アルジェ様! グラヴィウス帝国から深刻な内容の伝令が来ました!」

「内容は?」

「セラフィ様が人間主義連合に攫われたとのことです! そしてグラヴィウス帝国に来たヨゾラ様が戦いの場所だけ聞いて飛び出して行ったとのことです!」

「え……? セラフィさんが攫われた?」


 齎された伝令のあまりの衝撃にアルジェは一瞬内容が理解出来なかった。

 しかし伝令を伝えに来た者の焦り具合から、すぐに冷静になり、そして怒りが浮かぶ。


「理級精霊であるセラフィさんを……どうやらその人間主義連合と名乗る者達は命が要らないみたいですね……」


 普段から温厚で滅多なことが無い限りは怒りを露にしないアルジェの静かな声色を聞いた伝令を伝えに来た使いの者は、おもわず身体を強張らす。


 セラフィのことを様ではなくさん付けで呼び、会話なども気楽にするが、それでも自分達が崇める精霊という存在の頂点なのは間違いなく、心の中では最大の信仰を持っている。そんなセラフィが攫われたとなれば、スプリトゥス聖国の教皇としても、友人と言えるような立場に置かせてもらっている一個人としても、到底許せる訳がない。


「ルリ以外の聖女を全員呼び出しなさい」

「せ、聖女様を送りこむのですか!?」

「何かおかしいことでもありますか? 何のために我々が存在するのか考えなさい。これ以上は待ちませんよ?」

「し、失礼致しました!?」


 慌てて聖女を呼びに行った使いが出て行くのを確認してからアルジェは自身の契約精霊であるアストラを呼び出す。


「アストラ、今回は私達も出ますよ。何としてでもセラフィ様を助け出さなくてはなりません」


 アルジェに話しかけられたアストラは、まるで頷いているように小さく揺れた。


「そうですね……あなたもセラフィさんを姉のように慕っていましたね。必ず取り返しましょう」

「アルジェ様! セラフィが攫われたって本当か!?」


 アストラとの話が終わるタイミングでヘリコニアが入ってきた。

 ヘリコニアに続いて他の聖女達も入ってくる。聖女達はセラフィについて詳しく知らされているので、その表情も硬くなっている。


「本当です。あなたたち聖女には私と共に至急セラフィさん救出の為に動いてもらいます。ヨゾラさんの援護を聖女として全うしなさい」


 今回のセラフィ救出のキーとなるのがヨゾラだということは誰でなくても分かる。現状世界で最も強いと言われているヨゾラがその相方であるセラフィ救出に全力で動いている以上、個人で勝手に動くよりもヨゾラの援護をしてその道を切り開いた方が、成功率はよっぽど上がるだろう。


「それでは準備をしてきなさい。長くは待ちません」

「分かったよアルジェ様。ルリはどうする? セラフィ救出に自分も向かいたそうにしていたが……」

「あの子はまだ未熟で、身体もそれほど強くありません。我慢してもらいます」

「……分かった」


 こうして、スプリトゥス聖国は持てるだけの最大戦力を以て戦場へ向かう。


 これ程の戦力が戦場へ向かうのは先の戦争でも無かったことだ。それだけの揺らぎを人間主義連合は世界に生み出し、過去類を見ない戦いの規模へとなっていく……


自由な女神「普段怒らない人の方が怒ると怖いよね……ギャップのせいなのかな……?」

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