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約束  作者: 読み専
1/11

1話

他の作品でスランプに陥りまして、気分転換で書きためていたものです。


本編→ヒーロー視点→その後

でお届けいたします。


 完結まで仕上がっていますが、それぞれの話を書くのに結構期間が空いているので、チグハグになっている箇所もあると思います。(特に主人公たちの性格とか、年齢の計算とか)

そこら辺は多めに見てください。

よろしくお願いします。m(_ _)m


 



 私には、想い人がいる。


 至って普通の風貌をした私の想い人は、出会った当初から、たった一つだけ、普通では無いことがあった。


 いわゆる、幽霊と呼ばれる彼岸の存在。故人だった。

 本来なら、ひと目見ることすらできない人だった。




 初めて会ったのは、私が15歳の頃。友達との待ち合わせ場所に向かう途中にある交差点近くの歩道で、身動き一つしない彼を私が一方的に見つけた時だった。


 初めて彼を見つけた時は、「なんであんなところに突っ立てるんだろう?」と純粋に疑問に思った。よく見るTHE幽霊な存在とは違い、いたって普通の生者ひとに見えたものだから。


 でも、歩道のど真ん中に突っ立っている彼に訝しげな視線を送る人も無く、平気ですり抜けている様子を見て、ようやく彼岸(あちら側)の存在だと気づいた。



 幽霊は、生前の心残りとなったもの以外には一切の興味を示さない。だから、基本はそのまま近くを通り過ぎても何の反応もしない。悪霊でない限り。

 ただの幽霊である彼も反応はしなかったので、私は念のため視線をそちらに向けないように気を付けながら、その場を後にした。



 その一週間後。


 再び友達との待ち合わせに向かう私は、信号待ちのタイミングで一週間前と同じ場所で一週間前と同じ場所に立っている彼を、なんとなく視界に入れた。


 一週間前と何も変わっていないはずなのに、彼に何故か違和感を感じた。


 どこが違うんだろうと思ってよく観察し、その正体を探した。そして見つけた違和感の正体は、彼の瞳だった。


 心配そうな色を滲ませ、一心に私の左側数メートル地点を見つめる彼。


 彼の視線の先を追うと、妊婦と思わしき女性が歩道脇に屈み込み、電柱の側に花束を供えているところだった。


 彼の身内だろうか、と彼の面影を妊婦の女性から探す。


 だが、可愛いらしい顔立ちに、もの悲しさを浮かべる彼女から、彼の面影を見つける事は叶わなかった。


 幽霊の彼と妊婦の彼女の関係性に好奇心を煽られた私は、彼女が立ち上がったタイミングを見計らって声をかけてみる事にした。



「あの、すみません。ここって、以前に何かあったんですか?最近のニュースとかにここで何かあったとかは載ってなかったし、ほかに花を供えてる人も見かけないので…」


 失礼にならないよう言葉に気を付けつつ、さも純粋に気になる風を装って声をかけてみる。全く怪しくないといえば嘘になる切り出し方ではあったが、これ以上いいものが思いつかなかったので妥協した。


「ああ。…ここでね、今から3年くらい前に事故があって。丁度、母に彼氏を紹介するって切り出したのを断られてカッとなってしまってね。『ちょっと1人にして』って言って前を見ずに歩き出して…信号は赤で。気づいた時にはもう、車が目の前に迫ってた。とっさに避けられそうになくて、『もうダメだ』って目を閉じたら、後ろから突き飛ばされて。そのおかげで私は助かったけど、助けてくれた見ず知らずの彼はそのまま……。

 …今日は丁度その人の命日で、『私は、貴方に助けてもらえたおかげで母と和解できたし、紹介する予定だった彼と籍を入れて子供を授かる事もできました。心から感謝しています』って伝えに来ようと思ってね」



 正直、意外だった。


 全く知らない他人のために自分の人生を棒に振る事ができる人なんて、いると思っていなかった。

 私や私の周りにいる人たちでは絶対に出来ない事だと思った。少なくとも、幼い頃の興味本位で心残りを推察したり直接聞き出したりした幽霊達にそんな崇高な死に方をした人はいなかった。

 心残りも全て、自分勝手なものや自分の家族についてのものしか無かった。


「いないと思っていた存在が実在していた」それは、()()()()人がある日突然()()()ようになったくらいの衝撃があると思う。


 ましてや、そんな希少な存在に会うのが二度目だったから、その感動も一入(ひとしお)だった。




ありがとうございました。

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