片角 どちらを選んだとしても
片角
片角羊は天秤に
月と太陽をのせました
ほとんど一緒だったけど
ほんの数ミリ違います
片角羊は名残りおしそうに
天秤から太陽をおろしました
月は浮かび
太陽は沈み
片角羊は後悔しました
片角では両方を支えることが
できなかったのです
どちらを選んだとしても
オルドルは手記を閉じた。
地下の部屋の頼りない炎だけが、当時の記憶のままゆれている。
上の部屋に移動するために、仕掛け階段を起動させる。夜の月の光が地下に差し込んだ。
オルドルは過去から現代に帰るように、そっと蝋燭の火を消した。オルドルが選んだのは羊の孫、そのクローンだ。
あの月のように白い髪の少年なのだと、改めて認識した。
あと何時間後に太陽が登るのだろうかと、オルドルは時計を見た。
まだ何時間もかかるようだ。時計の秒針が少しずつ回っていくが、それではまだ足りない。
「早く太陽が見たいのぉ……」
オルドルは月を見ながら呟いた。
「どちらを選んだとしても後悔したんじゃろうな。儂はやはり、羊としては欲がありすぎる」
オルドルは片角の羊のマスクを外した。老体にしては若い顔がさらされ、若草色の目が細められる。
オルドルの白い髪が風に靡いた。




