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水槽
これは、真っ白羊のムートンが、人間の国にいた頃。僕が群れを脱却する前のお話し。僕は目の前に座る、〇〇〇〇に話し始めた。
当時の僕は、名のない角なし羊の一人だった。どこにでもいる、大勢いる、白い羊の一人。いや、一頭だったのかもしれない。
僕が最初に目覚めた場所は、水槽の中だった。温かな水が絶えず流動している水槽。その中で僕は誕生した。
最初は目が見えなくて、温かな世界だけを感じていた。だけど、目が開くようになって、おぼろげな視界で周囲を見た時。僕は恐怖していた。
僕と姿形が一緒の物体が。同じ水槽の中に浮かんでいたのだから。




