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炎 狼

 炎 


 それはそれは綺麗な満月の夜。


 灰色狼は群れを失った。


 灰色狼の育った故郷は、炎に包まれ。


 狼達の苦しげな遠吠えが、山の山頂まで聞こえてくる。


 故郷の上には、恐ろしいほど巨大に育ったゲートが一つ。次々と兵器を吐き出したそれは、今もなお成長を止めないでいた。


 もうすぐ彼のいる山の山頂まで、兵器たちがやってくるだろう。灰色狼は名残惜しそうに一声鳴くと、夜の闇の中に姿を消した。



  

 狼


 狼には力がある。


 どんなものにも負けない力が。


 そんな強い彼らだが、彼らにも弱点は存在していた。


 それは皮肉にも、彼らの仲間を思う気持ちだった。


 仲間を人質にされた狼達は、抵抗することもなく消えていった。


 だが、一人だけ難を逃れた者がいた。


 好奇心が強く、一人でよく近隣の場所に出かけていた灰色狼だ。


 幼い灰色狼には、群れがひどく退屈なものだったのだろう。故郷が燃える前の日、彼は旅を計画していた。


 灰色狼は、群れの中でもっとも若い狼だった。彼はまだ、人の国に登録されていない狼だ。


 狼として登録されていないことも、彼の命を救うことになるのだが、当時の灰色狼にとって、それが救いになったかどうか別の話しである。

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