師匠と弟子
「というわけでの、お主は今日から儂の番犬じゃ」
電話を元の位置に戻しながら、オルドルは寝起きの弟子に言う。弟子は硬い床で座りながら背伸びをしていたが、突然の発言に飛び起きた。
「何をおっしゃているのですか、師匠。私は牧羊犬ですよ、そう簡単に変われるわけないです」
「まあ、落ち着きなさい。このタグを受け取るだけで良いのじゃよ」
オルドルは弟子にタグを渡した。タグには、片角の羊のマークがついている。
「前からのう。お主を儂の専属にすることを考えておったのじゃ。これでお主は牧羊犬をやめられる」
「良いのですか?このタグは師匠にとって特別な物でしょう」
「良いのじゃよ。お主が番犬になってくれれば、儂も助かるのう」
「……ありがたく頂戴いたします」
オルドルは満足そうに頷き。弟子はオルドルに驚きながらも、その行動を受け入れた。
「さっそくなのじゃがな。弟子に頼み事があるのじゃ。イデアルを人間の国まで護衛してやって欲しい」
「私がですか?私はあまり好かれていないようですが」
「大丈夫じゃよ。儂もついていくからのう。これからお主もこの家に住むのでな、酷でも慣れてもらう必要があるのじゃ」
「確かにそうですね」
弟子が納得するのを見届け、オルドルは出かける準備を始めた。ちらりと弟子を見ると、嬉しそうに弟子がタグをさわっている。
「気に入ったようじゃのう」
「はい。師匠からの信頼の証ですから」
弟子はタグに紐を通すと、自身の首にかける。弟子の首元で、タグは朝日を反射して輝いていた。




