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牧羊犬
片角羊は家に帰る。人の暮らす国の近くに片角羊の家がある。片角羊の住む家で、金の小鳥が待っている。
時刻は夕方。片角羊は馬車の中。隣に座る牧羊犬に声をかけた。牧羊犬の視線が、片角羊へと向かう。片目に傷を負った、体の大きな牧羊犬だ。この牧羊犬は、片角羊の弟子である。
「どうかしましたか?師匠」
「ここ最近、角なし羊の群れが大きくなっているのじゃが、お主何か知っておるかのう?」
「そのことですか?ここ数年、人間の国のクローン技術が発展したんです。それで命令に忠実な羊が増えて、処分される羊が減りました。処分される羊が減ることで、自然と群れが拡大したのでしょう」
「ほう。人間の国のクローン技術は、また発展したのじゃな。喜ばしいことじゃのう」
「そうでしょうか。私は素直に喜ぶことが出来ないのです。この先、無用な争い事が起きなけれ良いのですが……」
牧羊犬は未来を思い、夕暮れの草原を見つめている。そんな牧羊犬を横に、片角羊は立ち上がる。片角羊は御者に声をかけ、馬車が速度を落としてもらった。片角羊の家はもうすぐそこだ。




