灰色狼のサンドル
俺はリベルテが帰ってくるのを待っている間、コルボーの墓の横に座っていた。墓の前には野苺が置いてある。少年が供えてくれたのだろう。
俺は洞窟から見える空を眺めた。リベルテとはこのあたりで別れた方がいいかもしれない。記憶を思い出すのに、俺の存在は邪魔だろう。
烏が二羽空を飛んでいる。白い大きな烏と、黒い烏だ。リベルテに灰色狼の村を見て欲しかった。今は誰も住んでいないが、確かに狼たちがいたと知って欲しい。
一羽の烏が近づいてきた。コルボーと違っていて胸のあたりが白っぽいみたいだ。俺と烏の視線が合う。俺がいつまでも動かずにいたから、無機物だと思ったのだろう。
烏は野苺をくわえると、また空にに飛んでいく。黒い羽が何枚か地に落ちた。俺は思わずその羽を拾う。コルボーが成長したら、最後はあの真っ白い烏になっていたのか。
リベルテが帰ってくる。家の玄関から走ってくる。もう出てこないと思っていたのだが、一体どうしたのだろう。
「どうしたんだリベルテ?」
「なあサンドル!俺ばれちまった」
「リベルテ……」
「それに白いのは、もう大丈夫だぜ。女の子がいたんだ、一緒に暮らしてるんだってよ」
「ああ、なら大丈夫だな」
「それでさ、約束してくれたんだぜ。今度は探して会いにいくって」
「良い約束だ」
「行こうぜサンドル!俺はお前の住んでたところを見てみたい」
「もちろんさ。俺たちの足でも遠いけれど、とっても良いところなんだ。リベルテもきっと気にいる」
俺は灰色狼のサンドル。俺はリベルテを連れて行く。俺はきっと、少年からした悪い狼だ。それでも俺は手放したりしない。最後の仲間は俺が守る。
かつて仲間達が、俺のことを守ってくれた。今度は俺が守るんだ、この黒い狼を。




