黒色達は帰る 空白の三十分
黒色達は帰る
俺の名前はリベルテ。自由を愛する黒羊。俺の肩には飼い烏。烏から焚き火の匂い。近くに飼い主がいるようだ。
「くすっぐたいぜ!」
烏は俺にほおずりをしている。よく手入れされた羽が心地いい。
「ほら、迎えがきたみてぇだ」
人の気配がする。遠くて聞こえづらいが、烏のことを呼んでいる。きっと飼い主だ。
「真っ直ぐ帰れよ」
俺の言葉を理解しているのだろう。烏はすぐに飛び立った。こちらを振り向くことは一度もなかった。
空白の三十分
俺の名前はリベルテ。自由を愛する黒羊だ。俺の前には白羊のムートン。普段は穏やか。今は不機嫌。
「ごめんなムートン。昨日は大変だったんだ。ほら、俺の運って、浮き沈み激しいだろ?」
「わかってる。リベルテたまに、すっごく運が悪い。でも昼間まで帰ってこないのはどうなの?」
「うっ、ごめん。天気雨に、雷まで降ってくるしよ。おまけに土砂崩れで道がふさがってんだ。朝帰りは無茶だった」
「リベルテ、一人で行動するのしばらく禁止。あとこれ着替えてね。リベルテ泥臭いから」
ムートンが俺を洗面所に押し込む。風呂場のドアから湯気がもれている。
「そうだ野苺!ムートン、腰袋に入ってるからなっ」
「ありがとう!おやつに食べようね」
「おう!」
扉一枚をはさんでムートンと会話。俺の顔を見ないほうが、素直に話せるようだ。
「くー。あったけぇ」
湯船からお湯がこぼれる。人工洞窟にきて初めの頃、色々と修理が必要だった我が家。今では快適な状態だ。
ちょいと考えてたら、三十分くらい経過した。俺はさくっと風呂からあがる。
洗面所の扉を開けると、ムートンと見知らぬ少女が、お互いに睨み合っていた。どういう状況だ?




