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080 ルスタリオ祭 18

 ミスターKたちがドラゴンの注意を引きつけてくれている間に、俺はシマンに駆け寄った。

 シマンは静かに目を閉じて横たわっている。

 ドラゴンの爪に抉られたであろう肩から腹にかけての傷口はそのままでひどい有様だった。

 ヒナがアイテムストレージから虹色に輝く【生命の宝珠】を取り出した。


「シマン! 頼む、復活してくれ!」


「大丈夫よ、100%確実に蘇生できるアイテムなんだから」


「そ、そうだった」


 ヒナが【生命の宝珠】を使用する。

 俺の祈りがなくとも三秒も待たずにシマンは蘇生した。

 急に目をかっと見開くと、黒目だけを動かして俺を見た。

 俺が泣き笑いのような顔でうなずくと、シマンは状況を理解したようで上半身を起こした。


「【生命の宝珠】を使ったんだな。馬鹿野郎、レアアイテムだってのによ」


「おまえの命には代えられないさ」


 たかがゲーム。だけど俺は目の前で仲間を死ぬのを見たくはなかった。


「シマンくん、《ヒール》するわ」


「助かる」


 シマンのHPは蘇生時には一割ほどしかなかった。

 ヒナに全快まで《ヒール》してもらうと、立ち上がって胸の傷に触れた。

 体の傷は完全に塞がって痕も残っていないが、自慢の星シリーズの一つ【明星の甲冑】は見るも無惨な状態だった。

 訊くと、500あった防御力は350まで下がっていたらしい。

 シマンはとてもがっかりしたようだった。

 それとシマンのステータスはデスペナによって二十四時間の全ステータス-10%の制約を受けていた。


「このステータスじゃ戦闘に参加しても足を引っ張りそうだな……」


 シマンが申し訳なさそうに言うが、ヒナは首を横に振った。


「大丈夫よ、あれを見て」


 ヒナが指さしたほうにシマンと一緒に顔を向けると、ドラゴンと戦っているみんなが見えた。

 俺のパーティーメンバーであるロキも後方から魔法で攻撃している。

 ドラゴンのHPは二割ほどまで減っていた。


「押してる! あのドラゴン相手に勝ってるぞ!」


 俺は興奮気味に言って、シマンの肩を揺すった。

 シマンは二度三度うなずいて、「いけるぞ!」と表情を明るくした。

 このまま合流して彼らのフォーメンションを乱すのは避けたほうがいいだろうということになり、俺たちは固唾を飲んで勝利の瞬間を待っていた。


 ほどなくして、ドラゴンが頭を天井に向けて咆哮をあげた。

 それは断末魔の悲鳴だったのだろう。

 ドラゴンは頭から灰のようにボロボロと崩れていく。


 「おおおお!」という勝ち鬨が上がった。

 それぞれがガッツポーズを決めたり、その場で跳び上がったり、近くにいた者と手をとって喜んでいる。

 俺は後ろを振り返ってナルカミがいた場所を見るが、そこにはもう人の影はなかった。


「タイガ、俺たちも行こうぜ」


 シマンが言い、ヒナがうなずいて俺の手を引いた。

 そして俺たちも彼らと一緒に勝利の喜びを分かち合った。

 一段落してみんなの状態をみると、かなりHPを削られたようだ。

 MPやSPも消耗が激しいらしかった。

 各パーティーのヒーラーは大忙しだ。

 それを眺めているとロキが近づいてきた。


「ロキ、活躍してたじゃないか」


「心臓に悪いですよ。気持ちの準備もまだだったのに急に戦闘になるんですから」


 ロキに抱かれた環がニャアと鳴いたので、頭を撫でてやると気持ちよさそうに目を閉じて身を寄せてきた。

 負傷した者は多かったが、誰も欠けずに済んだようだ。

 俺がホッとしていると、ミスターKと【ジャングル】の面々がやって来た。

 ミスターKはシマンに深々と頭を下げた。


「本当にすまない。ナルカミがまた迷惑をかけてしまった」


 シマンは思い出したように一瞬ムッとしたが、すぐに表情を戻し大きくため息をついた。


「いや、それはもういいよ。ドラゴンは倒せたんだし結果オーライってことでいい」


「しかしきみは不要なデスペナを食らってしまった。とりあえずこれだけは受け取って欲しい」


 そう言ってミスターKはアイテムストレージから【生命の宝珠】を取り出した。

 俺たちは顔を見合わせあと、ミスターKが引かないことを知って、ありがたく【生命の宝珠】を受け取った。

 そこへエクスさんが歩いてきた。


「今、向こうの通路の先を見に行ったんだけど、ループのギミックが解除されていた。あのドラゴンが解除のキーだったみたいだな」


 エクスさんの後ろにはレオナさんを始め【エアリーズ】のメンバーが揃っていた。

 通路の先には扉があったらしく、話し合いの結果先へ進むことになった。

 百メートルほど歩くと扉に辿り着く。


「ナルカミはまさかこの先に行ったのか?」


「私たちに合わす顔なんてないから、きっと逃げるようにこの扉の先に行ったんですよ」


 ミスターKにエルフの【吟遊詩人】リサさんが怒りを隠さずに言った。

 鍵はかかっていないようなので、先頭のエクスさんが押し開けた。

 そこには溢れんばかりの人で溢れていた。

 それこそ何百人もだ。ひょっとしたら千人以上かもしれない。

 野球の球場ぐらいの大きな部屋に、ひしめき合うようにエルフや獣人、ドワーフ様々な種族がいる。


「まさか……」


 俺が思ったことを口にしようとしたとき、レオナさんが言った。


「エクス、連絡が途絶えていたメンバーと繋がった」

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