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078 ルスタリオ祭 16

 不穏な空気を残しつつ、俺たちは先へ進んでいった。

 先頭はミスターK率いる【ジャングル】とエクスさんのパーティーだ。通路幅は五メートルほどあったので、両パーティーが並んで歩いている。


 その後ろに俺、ヒナ、ロキと環、シマンが続く。殿はレオナさんのパーティーだ。

 隊列的に【ジャングル】の後方に位置していたナルカミと俺の距離は一番近かった。二メートルも離れていないだろう。


 俺にだけ聞こえるような音量で、舌打ちしているのがわかる。つまり、俺に対してということだ。

 腹立たしいが、それよりもミスターKとエクスさんの話のほうが気になった。俺は二人の話に耳を傾ける。


「ミスターKさん。この先はどうなっているのか確認はしたのかい?」


「ああ、少し先までは様子を見に行ったんだが……まぁ、見ればわかる」


 ミスターKはこの先で何かを見たらしい。

 果たして、三分もしないうちに辿り着いた。

 そこにあったのは大きな扉。ちょっとやそっとではビクともしないような金属でできた重厚な扉だった。


「これは……ボス部屋?」


 エクスさんが扉を見上げて言った。

 扉の高さは五メートルはあるだろう。


「多分そうだろうな」


 ミスターKは扉にグローブを押し当てて頷く。

 二人の話によると、扉に鍵穴はなく、開閉するための仕掛けも見当たらないらしい。


「この程度の扉なら俺のスキルで壊せるが、どうにも嫌な予感がしてな。開けずに引き返したってわけだ」


 こんなにすぐにボスの部屋が?と思ったが、彼らの話によるとこのように凝った造りの扉の先にはボス級のモンスターが待ち構えていることが多いのだと言う。


 一番最初の部屋にドラゴンを配置させるあたり、このダンジョンを造った運営はルスタリオ祭のイベントとして、とんでもないダンジョンを用意したようだ。

 まさか、ごく僅かなプレイヤーしかクリアできないような、極悪ダンジョンじゃないだろうかと思ったりする。


「扉を開けて先へ進むしかないか」


「そうだな、戻ってもドラゴンがいるだけだし。仮に全員でドラゴンを倒したとしても新たな通路が出現する保証はないしな。皆の準備が整ったら、俺が扉を開けよう」


 そう言ってミスターKは振り返り、全員の顔を見渡した。


「みんな、ミスターKさんの言うように、今から扉を開けて先へ進もうと思う。装備の点検はさっき済ませたと思うから、扉の先にボスがいたとして、役割を明確にしておこうと思う」


「ボスがいるなら、少なくともさっきのドラゴン以上を想定しないといけないわけね」


 後ろからレオナさんが声を上げた。


「だろうな。だから、正面は俺のパーティーとミスターKさんのパーティーでいこうと思う。ミスターKさん、それでいいかな?」


「俺は構わないが、おまえさんのパーティーはドラゴンとの戦いで一人欠けたと言ってなかったか? 万全じゃないのに一番危険な正面を受け持つつもりか?」


「ミスターKの言うとおりだよ。あたしのパーティーと交代しな。エクスは側面からの援護に回るんだね」


「……わかった。前衛はレオナに任せよう」


 エクスさんは本当に申し訳なさそうに頷いた。

 ミスターKとレオナさんのパーティーが正面から、側面に回り込み援護をするのがエクスさんと俺たちのパーティーだ。


「タイガさんたちも準備はいいかい?」


 エクスさんが訊ねてきたので、俺はヒナたちの様子を確認してから頷いた。


「よし、ミスターKさん。扉を頼む」


「わかった、開けるぞ」


 ミスターKの右腕が丸太のように膨れ上がった。

 元々ゴリラの獣人なので人間よりも太くてごつい腕だったが、それが倍ほどに大きくなったので俺は驚いた。


「うおおおおおおッ! 《トルネードアッパー》ッ!」


 ミスターKが下から上へと腕を振り上げると、竜巻が発生して扉を粉々に打ち砕いた。

 金属の壁が見るも無惨な姿になっている。


「す……すごいな」


 俺は思わず声を漏らした。隣を見るとヒナとシマンも驚いている。この二人が驚くなんて、ミスターKは本当に凄いんだな。

 【ジャングル】の面々が「えっ? えっ?」と戸惑ったような声をあげる。

 どうしたんだろう?

 同じクランの彼らならミスターKのスキルを知っているだろうし、どうしてそんなに驚くのだろうと思った。

 だが、俺は勘違いに気づいた。


「う……嘘だろ!? なんで……一体どうなって……!?」


 彼らは扉を破壊したミスターKに驚いたのではなかった。壊した扉の先、大きく開けた部屋の中央に鎮座するものを見て驚愕したのだ。


「ド、ドラゴンだぁぁぁッ!」


 叫んだのはナルカミだった。

 ナルカミは取り乱した様子でこちらに振り返ると、俺の肩を掴んで突き飛ばした。俺だけじゃない、すぐ後ろにいたヒナやシマンをも突き飛ばして、来た道を戻ろうとしているのだ。


「落ち着け、ナルカミ!」


 ミスターKが叫ぶも、ナルカミは止まらない。エクスさんに肩をぶつけて一瞬転びそうになるも、体勢を立て直して走り去った。

 

「あの馬鹿野郎! すまん、俺はナルカミを追いかける」


「ちょっと! リーダーがいなきゃあのドラゴンはどうするの!? ナルカミもさっきのドラゴンの部屋には入らないだろうし、落ち着いて頭を冷やしたら戻ってくるわよ。気まずくて戻って来れないって性格でもないんだし」


 ナルカミを追いかけようとしたミスターKに、【吟遊詩人】のリサさんが待ったをかける。


「じゃあ、俺が見てきます。危険はないと思いますが」


 ミスターKやエクスさんがこの場を離れるのはマズい気がする。そう思った俺は挙手して言った。


「タイガが行ったら、あの野郎が余計にキレそうな気がするから俺が行くわ」


 そう言ってシマンが俺の肩を叩いた。


「いや、それは悪い。ナルカミは俺のクランの一員だ。これ以上迷惑をかけられない。やはり俺が」


「今ミスターKがここを離れるのはいい気がしない。エクスやレオナさんと一緒に作戦でも立ててくれ。その間にナルカミを連れてくる」


 シマンはそう言うと、ミスターKや俺の返事を待たずに、ナルカミを追いかけて来た道を戻っていった。


「本当にすまない」


 ミスターKが俺たちに頭を下げた。


「いや、それよりもドラゴンは……」


「向こうからはこっちに来れないみたいだね。さっきの部屋と同じ仕組みだろうね」


 先頭に立っているレオナさんが背を向けたまま言った。

 レオナさんの言うとおり、さっきの部屋と同じく結界が張られている。なので結界に入らなければ安全と言える。

 そして、ドラゴンの背後には通路が見える。扉はなく先へと続いていそうだ。


「もし同じギミックなら、先へ進むには八分間あのドラゴンの猛攻に耐えないといけないってわけか」


「そうなるね。ドラゴンのレベルが同程度なら、戦力が増した今のほうが勝算はある」


 ミスターKとエクスさんが状況を整理する。もちろん、勝算とはドラゴンを倒すという意味ではなく、八分間凌ぐことに対してだ。

 【ジャングル】のメンバーが五人追加されたところで、ドラゴンに勝てる気はしなかった。


「とりあえず、あの坊やが戻ってくるまで待機し……えっ?」


「レオナ、どうした?」


「どういうことだい? なんであの坊やが向こうにいる……!?」


 全員の視線がドラゴンの向こう側にある通路へと集中する。


「ナ……ナルカミ?」


 通路に立っていたのはナルカミだ。そして、その後ろからシマンが現れた。

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