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077 ルスタリオ祭 15

 ゴリラの獣人ミスターKさんのクラン【ジャングル】のメンバーも続いて自己紹介してくれた。


 【神官】だと思っていた女性は、ジョブ3の【高位神官】という【神官】の上位互換ジョブだった。名前はナナさんといい、レベルは51で年齢は二十二歳のエルフだ。


 リサさんはレベル52の【吟遊詩人】。十六歳のエルフ。

 メグさんはレベル47の【聖騎士】。二十四歳のエルフ。


 そして、ナルカミ。レベルは33。エニグマ地方にゲートを使ってワープできないことから俺と同レベルぐらいだと思っていたが、さらに低かったようだ。

 ジョブは【重騎士】で十九歳。種族は人間だ。


 【ジャングル】のメンバーは、ミスターKを筆頭にみんな年齢まで教えてくれた。

 年齢を聞いたところで、あくまで<DO>内のアバターに設定されている年齢なので、中の人がどうなのかは知らない。

 極端な話、このエルフの三人の女性はおじさんかもしれないし、ミスターKは美人のお姉さんだったり、なんてこともあるかもしれない。

 つまり年齢を言われたところで、特に思うこともないのだが、隣にいたシマンはエルフの三人に鼻を伸ばしていた。


「共同戦線を張ると決めたばかりだが、ダンジョンの仕様がこれまでと異なり、別のプレイヤーと遭遇できるとわかったからには、俺はクランの仲間を救出に向かいたい」


 エクスさんが主張した。

 確かにそうか。ダンジョンがこういう仕様なら、帰還できない通信不可のプレイヤーたちがまだこの中にいるってことだ。

 ダンジョン突入前の時点で、先行した【エアリーズ】のサブリーダーのパーティーへはチャットメッセージが通信不可だったことから、全滅して外の町にリスポーンはしていなかったはず。

 ちなみにこの場にいる者同士で試してみたが、通信エラーとなった。つまりこのダンジョン内ではチャットメッセージが使えない。


 ということは、さっきのドラゴンの猛攻を八分間凌いで、この部屋に辿りつき、さらに通路の先へと進んだに違いない。


「もちろんだ。<悪魔の腹の中>なんてふざけた名前のダンジョンに囚われたプレイヤーを一人残らず救出しよう」


 ミスターKさんも情に厚い人のようだ。エクスさんの仲間だけでなく、他のプレイヤーも助けるつもりだ。

 俺だって他のプレイヤーを見殺しにはできない。できる限り協力するつもりだ。


「俺もできることは手伝わせてください」


 俺はパーティーを代表して言った。ヒナたちも異論はないようでホッとする。

 だが、ナルカミだけは露骨に顔をしかめた。


「リーダー、でも最優先は俺たちが無事ここを脱出することっすよね。他人を助けるために自分が死んだら意味ないじゃないっすか」


「なによ、【ジャングル】で一番レベルの低いあなたが、リーダーにそれを言う!?」


 エルフの【吟遊詩人】リサさんが怒って反論する。


「は? は? は? ブスは黙ってろっす。安全な後方で歌ってるだけのくせに」


「な、なんですって……!」


 あ~、今の言い方はないな。

 ナルカミとリサさんの二人は今にも喧嘩しそうだ。すぐにミスターKが二人の

間に割って入る。


「ナルカミ、こんなに可憐なリサに向かってそれはないだろう」


「そ、そんな可憐だなんて……」


 ミスターKが笑みを浮かべていうと、リサさんは照れてしまった。すっかり喧嘩のことなど忘れたようだ。しかし、エクスさんならともかく、ゴリラのミスターKさんが言ってもしまらないな。まぁ、リサさんの溜飲が下がったのならいいか。

 リサさんが落ち着いたのを見て、ミスターKさんはナルカミを諭す。


「ナルカミ、勘違いしてはいけない。【吟遊詩人】であるリサのスキルがあるから俺たちは前線で戦えるんだ。リサはバッファーとして【ジャングル】に欠かせない一員だ」


 【吟遊詩人】には様々なバフを自身や仲間に付与できるスキルがある。攻撃力や防御力などのステータスを一定時間上昇させることができるのだ。

 <ハリザラ山>での山賊との戦いで我がパーティーのペットもといメンバーの黒猫、環にかけてもらったチート級バフを経験してから、攻略サイトでバフについて調べたのだ。

 目的のことはわからなかったが、そのとき【吟遊詩人】を知ったのだ。


「わ、わかってるっす。ただ、このブスが突っかかってきたんで」


 ミスターKには強く出れないのか、ナルカミはそう言うに留まった。

 リサのほうは今度は激高せずに、フンとそっぽを向いた。

 それにしても、どうしてナルカミのような人間関係でトラブルを起こしそうなプレイヤーがミスターKのクランにいるんだろう。レベルも全然違うし……。


「なんか文句あるんすか?」


「えっ……?」


 不意にナルカミが詰め寄ってきた。しかも、かなりの喧嘩腰だ。


「今、なんか俺の顔見て嫌そうにしたっすよね?」


 ナルカミが俺の胸を拳で小突いた。あまりに力が入っていたので、俺は押された勢いで後ろに一歩下がった。

 同時にシマンが前へ出る。


「おい、いい加減にしろよ。タイガが何したって言うんだよ。ミスター……Kさんでしたっけ、この人なんとかしてくれませんか?」


「申し訳ない。こら、ナルカミ、止めないか」


 怒ったシマンに頭を下げたミスターKさんは、ナルカミの肩を掴んだ。

 やっぱりミスターKさんには頭が上がらないのか、ナルカミは渋々引き下がった。

 ナルカミは最後に俺に向けて舌打ちして、部屋の奥へ引っ込んでいく。

 なんだったんだ……ったく。


「タイガ、大丈夫か?」


 ヒナも心配そうにこちらを見ていたので、俺は大丈夫と頷く。


「ああ、なんともない」


 こうして新たなメンバーが加わり、ダンジョンを進むのだった。

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