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076 ルスタリオ祭 14

 俺たちの後ろからも足音が聞こえる。エクスさんやレオナさんもドラゴンの攻撃を避けながら、こちらに向かっているようだ。

 俺は自身のパーティーの最後尾を走りながら、全員無事でいてくれと祈るしかなかった。


 ゴリラの人の後方には細長い通路があり、ナルカミが「早く入るっす」と急かしたので俺たちはなだれ込むように入って行った。

 通路の先はドラゴンのいた部屋よりはかなり狭いが、ここにいる全員が休憩できるぐらいのスペースはあった。


 俺たちのパーティーはもちろん、エクスさんやレオナさんのパーティーも全員逃げることができたようだ。

 そして部屋の奥には俺たち以外にも人がいた。


 見た目は十代後半から二十代前半ぐらいの三人の女性で、種族はエルフだった。そのとき、肩で息をしながらゴリラさんが入ってきた。

 それを見た三人のうち【神官】らしき女性が血相を変えてゴリラさんに駆け寄った。


「リーダー! 大丈夫ですか!?」


 【神官】らしき女性がリーダーと呼んだので、ゴリラさんと同じパーティーかクランに所属している人だとわかる。

 どうやら話の流れから、ゴリラさんは負傷しているらしかった。


「こいつらを助けたばっかりにリーダーのHPが消耗したっす」


 ナルカミがキツい眼差しで俺やエクスさんたちを睨む。竜車でのことをまだ根に持っているのか、特に俺に対しては露骨に悪態をつく。


「やめろ、ナルカミ。こういうときは助け合いだ」


 ゴリラさんが制するとナルカミは渋々引っ込んだ。【神官】の女性はゴリラさんを回復魔法で癒やしつつ、その負傷について説明してくれる。


「リーダーは自身の命を省みずスキルを限界まで使用したんです……」


 実は俺たちがあの場を離脱しやすいように、ドラゴンの注意を引きつけるため、ゴリラさんは【拳闘士】の《威嚇》スキルを使ったそうだ。


 《威嚇》スキルとは文字どおり相手を威嚇して怯ませる効果がある。そして、発動させるには自らの胸板を拳で叩く必要があるらしい。その効果量は連続して叩く回数と強さに比例するようだ。

 ただし、胸板を叩く都度、自身にダメージ判定が発生するので注意が必要みたいだった。


 自分よりレベルの低いモンスター相手になら二回叩けば十分な効果を発揮するらしい。だが、今回の相手はドラゴンだ。そこらにいる並のモンスターの比ではないだろう。

 【神官】の女性が言うように、ゴリラさんは自身のHPがガンガン減ることを承知で、回数と強度ともにフルで《威嚇》スキルを使用してくれたのだ。

 案の定、ゴリラさんのHPは一割を切っていたらしい。


 話を聞いていたエクスさんが言うには、ドラゴンに一瞬隙ができたので全員逃げることができたそうだ。しかし、隙といっても一秒あるかどうかの僅かなものだったようだ。


「本当にありがとうございます。しかも危険を承知でスキルを使ってくれたみたいで……」


 【神官】の女性から話を聞いて、改めてゴリラさんに礼を言った。


「クラン【エアリーズ】のリーダーとしても礼を言わせてもらうよ。ありがとう、助かったよ」


「気にするな。さっきも言ったが同じダンジョンに潜ってるんだ。こういうときはお互い様」だ」


 ゴリラさんの助けられたのはいいが、俺たちはここで何が起こっているのかイマイチわかっていない。

 俺だけかもしれないが、状況がわからず少し困惑もしていた。


 俺と目が合ったゴリラさんが察してくれたのか、状況説明をしてくれることになった。


 まず俺たちの誰もが疑問に思っていたこと。

 どうして違う時間にダンジョンに入ったのに、他のパーティーと中で遭遇したのか。今までの<DO>の仕様なら考えられないことだった。

 これについてはゴリラさんもわからないようだ。


 そしてドラゴンを囲むように展開されていた透明の膜。ゴリラさんたちは便宜上、これを結界と呼んでいるそうだ。

 この結界だが、俺たちも経験したとおり一度内側へ入ったら外側には出られない。つまり一方通行になっているのだが、八分に一度だけ結界が消失する瞬間があるという。しかも消えている時間はたったの三十秒らしい。


「八分に一度……?」


「ああ、何度か時間を計測したから間違いない」


 ゴリラさんが頷いた。

 実際、俺たちは結界が消えて戦闘から離脱できたわけだし、疑う余地もない。


 そういったギミックだと理解するしかないのだろう。

 結界は八分に一度、三十秒だけ消える。

 問題はそれだけじゃない。結界が再度展開されると、ドラゴンのHPは完全回復するそうだ。


「マジか……!?」


 シマンが大きな声で驚き、エクスさんも苦い顔をした。


「俺たちのクランも四割ほど削ったんだがな……」


 ゴリラさんが悔しそうに呟いた。

 【神官】の女性によると、そのときの戦闘でクランメンバーの大半が死んでしまったらしい。

 ゴリラさんはそのことを思い出しているのか、辛そうには歯を食いしばった。


 クランが壊滅状態のゴリラさんたちは先へ進むことができず、ドラゴンの脅威が及ばないこの部屋で待機していたそうだ。

 そのときに色々考えを巡らしたり、ドラゴンの様子を見に行ったところ、結界の消失は規則正しく時間で決まっているとわかったらしい。


「このダンジョンを攻略するには、生き残った者で協力するしかない。どうだろう、ここは共同戦線をはらないか?」


 ゴリラさんはそう提案してきた。

 エクスさんもレオナさんも異存はないようだ。

 もちろん俺にも断る理由はない。


 そこで互いに軽く自己紹介しようとなったので、エクスさんのパーティー、レオナさんのパーティー、俺たちのパーティーの順に簡潔に自己紹介をしていく。

 自己紹介の内容は名前と、隠すメリットもないのでレベルと現在のメインジョブなどだ。人によっては二言三言付け加えていた。


 最後にゴリラさんのパーティーの番だ。名前がわからなかったので、見た目からゴリラさんとかゴリラの人と心の中で呼んでいたが、我ながら失礼極まりない。


「俺はクラン【ジャングル】のリーダーで、フルネームは長いので省略するがミスターKと呼んでくれ。ジョブは見てのとおり【拳闘士】でレベルは61だ。年齢はこの見た目じゃ想像つかないと思うが二十五歳だ」


 ミスターKさんか。フルネームが長いってなんなんだろう……心なしか同じパーティーの女性三人が恥ずかしそうにしていた。う~ん……変わった名前なのかな。


 それにしてもレベル61か。こちらの中じゃ、一番高いエクスさんが60で次がレオナさんの59だ。凄いな、この中で一番上じゃないか。

 そんな人が率いるクランでもドラゴンを倒せなかったのか。

 俺は改めてドラゴンの恐ろしさを認識した。

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