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075 ルスタリオ祭 13

 【忍者】の上半身はドラゴンに噛みちぎられた。

 HPが0になった【忍者】の下半身はその場で消滅し、同じ場所に透明の【忍者】が横たわった。その頭上には蘇生猶予時間である四分間のタイムカウントが表示されている。


 しかし、エクスさんやパーティー内の誰もが蘇生行動を取らない。これは事前に決めていたことだった。

 これまでにない未知で危険なダンジョン。万が一、ダンジョン内で死亡したときはあえて復活させない。復活したところで同じ目に遭うのを考慮してのことだった。

 復活させなければ最後に立ち寄った町でリスポーンできるので、そのほうが安全だからだ。


 エクスさんたちがそう決めたと聞いて、俺たちもそうすることにした。しかも、エクスさんは念には念を入れて今回の選抜メンバーは、これまでに死亡した回数が二回以下のメンバーに限っていた。

 三回以上死を経験したメンバーの<DO>からの退場や、リーチとなる四度目の死を迎えさせないためらしい。


 【忍者】の呆気ない死に、この場にいた全員が動揺を隠せない。それはエクスさんやレオナさんの表情を見ても明らかだった。

 特にエクスさんのパーティーは前線をエクスさんと【忍者】、【魔法戦士】の三人で分担していただけに、以降はエクスさんと【魔法戦士】に負担がかかるのは目に見えていた。


「タイガ! 向こうのパーティーには悪いが、気にかけてる余裕はねぇ! 状況を逐一説明してくれ!」


「あ、ああ!」


 エクスさんたちが気になりそちらに気を取られていたが、俺たちのパーティーも余所見をしている暇はない。

 シマンが言うように、こうしている今もドラゴンがいつ襲いかかってくるかわからないのだ。


「くそっ! あの強風が邪魔で近づけないぜ!」


「まるで背中に目があるみたいに、こちらの動きに合わせて風のバリアを展開しているようね!」


 背中を向けている今が攻撃のチャンスだというのに、ドラゴンの羽根が生み出す強風はバリアのようにヒナたちの攻撃を無効化していく。

 俺がバリアの位置を指示したとしても、ヒナたちが攻撃するよりも早く位置を変えてくるので対処のしようがない。


 そうこうしている間にも、一人欠いたエクスさんのパーティーは瓦解寸前だ。エクスさんや【魔法戦士】の被弾も多くなっている。これでは【神官】の魔力も保たないだろう。現に【神官】の中年男性は疲労からか顔が真っ青だった。

 後方から攻撃している【魔導師】の老婆も息が上がっている。


 なんとか状況を打開しないといけない。

 しかし、どうやってドラゴンにダメージを与えたらいいんだ。

 俺たちの攻撃がまともに通ったのはヒナの最初の攻撃だけだ。あのときはドラゴンの右側面への攻撃で、戦闘開始直後だったからか今みたいに強風のバリアは展開されていなかった。

 今は強風のバリアがある以上、あれをなんとかしないとダメージを与えるのは無理だろう。


 あとはエクスさんの攻撃だが、正面に対峙したときにドラゴンの顔面に《エレメンタルソード・サラマンダー》を叩き込んでいた。

 それにドラゴンがこちらに背を向けていたとき、つまりレオナさんのパーティーと正面から対峙していたときも、ドラゴンのHPが減ったのをこの目で確認している。

 おそらくはダメージ量からして【精霊騎士】のレオナさんのスキルだろう。


 このことから正面からだと攻撃は通りやすい。強風のバリアがないので当然なのだが。しかし、代わりに凶悪なドラゴンの攻撃の嵐だ。

 その攻撃を掻い潜ってドラゴンに接近するのは至難の業だろう。

 それでもドラゴンは三人の【精霊騎士】から、それぞれ一回ずつ攻撃を受けている。

 HPバーは全体の三割ほど減っている。


 ヒナの《エレメンタルソード・ウンディーネ》は9,000近い攻撃力を誇る。ドラゴンの防御力はどれほどなのかわからないが、HPもとんでもない値だと思われた。

 数値的には【精霊騎士】三人があと七回攻撃を当てれば倒せるのだが、そこまでこちらの体力が保つのか、正直怪しいところだ。


「ヒナ、シマン! 尻尾が来るぞ!」


 ドラゴンがこちらに振り返って、尻尾攻撃を繰り出してくる。ヒナとシマンはタイミングを合わせて跳躍し避けた。


「シマン! 上から爪だ!」


 即座にシマン目がけて、その頭上からドラゴンの引っ掻き攻撃が飛んでくる。


「くっそ……! らああああっ!」


 シマンは間一髪、地面に前転して躱す。

 やはり、正面で対峙したときは精神がすり減らされる。一時も気を抜けない。


 そのとき、部屋全体を揺るがすような大きな振動が響いた。


「おまえたち! 走れッ!」


 俺たちの左側から声がしたので、ちらりとそっちを見ると、<エニグマの町>で見たゴリラの人だった。

 そのうしろには竜車で【鋼糸使い】に絡んでいた戦士風の男――確かナルカミだったか――の姿もある。


 ゴリラの人は上半身むき出しの胸板をボクシンググローブを嵌めた両手で交互に叩いて、大きな音を出していた。その音が部屋に反響しているのだ。

 何かしらのスキルなのだろうか。


「何をしている! 早くこっちに逃げてこい! 今なら結界は解けている!」


 そのゴリラの人が今度は大声を張り上げながら手招きした。

 というか、結界って……えっ!?


「みなさん、透明の膜が消えています! 今ならこの場を離脱できるんじゃないでしょうか!」


 ロキが言ったので、俺たちは顔を見合わせると頷き合い、ゴリラさんのほうへと急いだ。

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