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074 ルスタリオ祭 12

 エクスさんのパーティーや、レオナさんのパーティーを気にしている余裕はもうない。俺は俺のパーティーが生き残るために最善を尽くすことに決めた。


 悔しいが俺の攻撃はドラゴンに通らない。だったら、俺は俺にできることをするまでだ。

 ドラゴンから一番近い位置にはヒナが、少し後ろにシマンがいる。そこからさらに離れてロキと環、そして俺がいる。


 この位置だとみんなの動きがよく見える。状況判断は俺以外の三人のほうが優れている。だから俺は見ることに徹する。場の様子をよく見て、みんなに伝える。

 俺の状況説明に何か気づきがあれば、ヒナたちが言ってくれるはずだ。


 まずドラゴンだが正面、右、左の三方どこに向けて攻撃してくるか予測できない。というのも、注意を逸らそうと別の方向から攻撃をしても、そっちに向くとは限らないからだ。


 現に今ドラゴンは俺たちのパーティーに背中を向けている状態、つまりレオナさんのパーティーに攻撃を仕掛けている。右からはエクスさんのパーティーが、背後からは俺たちのパーティーが攻撃を仕掛けているが、こちらを向く様子はない。


 だからと言って右側と後方からの攻撃がバシバシ直撃しているのかと言えば、そう簡単にはいかないようだ。

 全周囲に目が付いているかのように、羽根をはためかせて発生させる強風や尻尾の薙ぎ払いでダメージを相殺していく。

 いや相殺どころか、逆にこちらのHPが削られている。


 やはりドラゴンにダメージを与えるには、隙をついて無防備な箇所に的確に攻撃するしかないのだ。


 見れば見るほどドラゴンの攻撃パターンは多彩だった。

 正面に相対したときは主に前足の鋭い爪を使っての引っ掻き攻撃。それと口から吐き出す唾?のような泥みたいな固形物。こいつは猛毒効果つきで厄介だ。

 俺たちのパーティーはまだ食らってないがブレス攻撃もあった。肩を掠めたエクスさんのHPがごっそり持っていかれたのには胆を冷やした。


 それと後ろ足での踏みつけも恐ろしい。あの下敷きになれば即死は間違いないだろう。幸い事前に足を大きく持ち上げる動作があるので、注意して見ておけば避けることは難しくない。ただし、落ち着いて対処できればの話だ。どういう状況で踏みつけ攻撃をしてくるかわからない。もし俺たちの裏をかく形で使用されたら、万が一もありえる。


 今のところ正面で戦う場合のドラゴンの動きはこんなものだろう。

 問題は簡単そうに見えた側面と背後だ。戦いが始まった当初は、一見無防備なところへ攻撃を集中できるからチャンスだと思われたが、それもロキが放った魔法攻撃を背中から生えている羽根のはばたきで消したのには驚いた。


 物理攻撃だけでなく魔法攻撃までも防いでしまうとは信じられなかった。羽根から発生した強風はまるで強固なバリアのように、完全にこちらの攻撃をシャットアウトしてしまっている状態だ。

 全面にその強風が発生しているわけではないが、こちらの動きに即座に対応し邪魔なところに強風を発生させてくる。


 あと警戒すべきなのは尻尾による薙ぎ払いだろう。

 あの巨大な尻尾が凄い早さで飛んでくるのだ。その衝撃たるや大型トラック、いや新幹線に撥ねられるぐらいのイメージだ。まともに受けたら全身の骨がバラバラになり、即死は免れないだろう。

 だから、尻尾の動きには注意を払わなければならない。


 ドラゴンの攻撃はこんなところだが、俺は見ることだけに集中して声を張り上げる。


「尻尾来るぞ!」


「下から来るわ! タイミング合わせて跳んで!」


「おう!」


 尻尾の動きを捉えた俺の警告に、ヒナが的確な指示をくれる。

 直後、地面スレスレを尻尾が迫ってくる。ヒナのアドバイスどおり、俺たちはジャンプして尻尾攻撃をやり過ごす。

 最初の動きさえ気づけていれば、俺のレベルでも十分躱すことができる。


 ドラゴンの攻撃はその巨体のせいか、スピードは絶望するほどのものじゃない。だが、食らったら死ぬというプレッシャーがあるのだ。少しでも集中が途切れたら危険だというのは、この場にいる全員が十分承知しているだろう。


 今、ドラゴンはエクスさんのパーティーのほうを向いている。

 引っ掻き攻撃とブレスを織り交ぜながら、恐怖を振りまいている。


 俺たちはというと、ヒナとシマン、ロキの攻撃は羽根の発する強風に阻まれてダメージを与えられない。


「あの風、厄介だな! ヒナちゃんのスキルでも通らないってか!」


「そうね! 風が発生していない箇所を狙うしかないのだけれど、そう簡単にはいかないみたいね」


 それでも諦めずに攻撃を繰り返していく。もちろん長期戦に備えて、スキルの無駄打ちは避けたい。だから強風が発生しているときは一旦攻撃を止めて、尻尾の動きを見たり、羽根の様子から強風の発生する位置を予測したりする。


「うわああああああああッ!」


 そんなとき、部屋の中に絶叫が響き渡った。

 声のしたほうに視線をやる。エクスさんのパーティーが戦っているほうだった。

 ドラゴンが【忍者】の上半身に噛みついていたのだ。


 エクスさんが阻止しようとドラゴンの顔面にスキルを浴びせる。さすがにダメージが通りドラゴンのHPを一割ほど減らす。しかし、ドラゴンは閉じた口を開くことはない。それどころか、邪魔するなとでも言うようにエクスさんを獰猛な瞳で睨みつけ威嚇しているように見えた。


 その威嚇にステータス異常などの効果があったのかわからないが、エクスさんが剣を振り上げたまま動けなくなった。

 その目の前で【忍者】は為す術もなく命を枯らそうとしていた。


 今まで見せなかった噛みつき攻撃。予想外の攻撃に咄嗟に対応できなかったのだろう。【忍者】の腰から上はドラゴンの口の中だ。

 ドラゴンの牙の間からは大量の血が流れている。【忍者】のHPバーはみるみるうちに0になった。


 エクスさんのパーティーの【忍者】が最初の犠牲者となった。

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