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073 ルスタリオ祭 11

 ドラゴンとの戦闘が始まった。

 俺たちはエクスさんからの事前の指示どおり、ドラゴンの左側に回る。俺たちのほうにドラゴンの意識が向かないように、エクスさんのパーティーが上手く立ち回ってくれているのがわかる。


 【精霊騎士】のエクスさんと【忍者】が素早く前線を駆け回り、ドラゴンの注意を引きつける。【魔法戦士】が死角からスキルを放つ。【魔導師】は後方から魔法で攻撃し、【神官】はエクスさんと【忍者】の傷を癒やしていた。


「爪がかすっただけで、あんなにHPが持って行かれんのかよッ!」


 隣でシマンが言うのを聞いて、俺も同じことを思っていた。

 ドラゴンと戦っているエクスさんと【忍者】は直撃は避けている。それでもHPバーの減りに俺は目を疑った。

 ドラゴンの引っ掻き攻撃でエクスさんは一割以上、【忍者】に至っては二割もHPを減らしている。


 すぐに【神官】の回復魔法でHPは全快するのだが、たった一撃であれほどとは一体誰が予想しただろうか。

 エクスさんたちのレベル帯は55~60らしいが、あのダメージからしてドラゴンのレベルはそれ以上だと確信できる。

 直撃ならあの二人でも危ないはずだ。俺なら触れただけでも、ごっそりHPを削られそうだ。


「正面に攻撃を集中されてはエクスさんたちが保たないわ! 私たちも援護しましょ!」


「お、おう! そうだな、ドラゴンの攻撃を散らそう!」


「タイガ、わかってると思うがまともに食らったらヤバいぞ!」


「私は後方から攻撃と回復をします!」


「お願い! 《エレメンタルソード・ウンディーネ》!」


 ヒナがドラゴンの胴体に向かってスキルの一撃を叩き込んだ。

 ドラゴンのHPが一割減る。

 続くシマンが《断骨斬》を繰り出すが、ヒナの攻撃でこちらを攻撃対象に切り替えたドラゴンが鋭い爪で応戦する。


「うぐおおおおおおおッ!」


 シマンの刀とドラゴンの爪とがぶつかり、激しい火花を散らす。急激にシマンのHPが削られていく。たった数秒でHPは半分を切った。


「シマン! 今助ける! おおおっ! 《ヘヴィクラッシュ》!」


 俺の渾身の一撃。

 だがドラゴンのHPは一ミリたりとも減っていない。

 そんな馬鹿な!?

 俺の《ヘヴィクラッシュ》の攻撃力は3,600を越える。それが通っていないということは、ドラゴンの防御力はそれ以上だと証明された。


「タイガくん、シマンくん、下がって!」


 ヒナが横から飛び出してドラゴンの爪を攻撃する。俺とシマンはうしろに跳んだ。

 シマンのHPは最大値の8,746から755まで減っていた。瀕死状態だ。

 すぐに後方からロキの回復魔法が飛んできて、シマン自らも【エクスポーション】を使用する。


「こいつ、ヤバすぎるぞッ!」


 片膝をついたシマンがドラゴンを睨んで言った。

 シマンの《断骨斬》もヒナの《エレメンタルソード・ウンディーネ》に及ばずとも、8,000近い攻撃力があるはずだ。それを爪で受けとめて逆に押し返すなんて、しかも瀕死のダメージを与えるなんて!


 俺は改めて、目の前のドラゴンが規格外の強敵であることを認識した。


「ドラゴンが口を開けた! ブレスか!?」


 誰かが叫んだ。

 見上げるとドラゴンが大きく口を開いている。


「逃げろぉぉッ!」


 さっきと違う声が聞こえた。

 その瞬間、俺は頭から泥のようなものをかぶった。


「げぼっ! うぇっ!」


 これが……ドラゴンのブレス?

 俺は顔に付いた泥を拭って、周りを確認する。ヒナとシマンも泥を浴びていた。無事だったのは後方にいたロキだけだ。


 そして、俺の視界が赤く点滅した。


「え……!?」


 点滅後、俺のHPが50減少していた。それは俺の最大HPの1%に相当する値だ。つまり毒状態に陥ったわけだ。

 簡易ステータスを見ると、名前の上に毒を示す紫色のマークが点滅している。しかも猛毒のほうだ。これは回復手段を用いない限り自然治癒しない。


 ヒナとシマンにも同様のアイコンが点滅していたが、アイテムストレージから解毒アイテムを取り出して対応する。


「タイガも解毒しろ! ダメージはたいしたことないが、ステータス低下のデバフが厄介だ!」


「わかった!」


 確かに猛毒の三十秒ごとに最大HPの1%ダメージはすぐに堪えるダメージじゃない。しかし猛毒による身体能力の制限が、この状況下では死に直結する。


「ブレスじゃなかったのか……! なんなんだこれは……?」


「口から出したのは間違いないから、唾かなんかだろ。それより、こいつは一手でもミスったら死ぬな」


 再び正面のエクスさんたちに狙いを定めたドラゴンを見上げて、シマンが額の汗を拭った。


「冷静に対処しよう! 三手から撹乱すれば勝てない相手じゃない!」


 エクスさんが声を張り上げて、全員を鼓舞する。そして自らも【精霊の剣】振りかざしてドラゴンに向かって行った。

 やはりエクスさんが一番危険な役を買って出ている。彼だけに負担を強いるわけにはいかない。


 おそらく、エクスさん、レオナさん、そしてヒナの【精霊騎士】三人がこの戦いの鍵を握るはずだ。この三人が攻撃専念できるように、残りのメンバーでドラゴンの注意を引きつけるのが妥当だろう。


 俺は自分にできることをしようと思った。

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