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070 ルスタリオ祭 8

「【エアリーズ】?」


「ああ、俺たちのクランの名前だよ。名前の由来は、クランのメンバー全員が牡羊座だからなんだ」


「えっ、全員が!?」


「うん。まぁ、最初は集まった五人が偶然同じ星座だったから。それからは仲間を増やすときは牡羊座って条件を前提にしたんだ」


「へぇ、そうなんですね」


 【エアリーズ】……牡羊座ねぇ。

 でも凄いな。今見ただけでもクランメンバーは二十人ぐらいいるぞ。この人たち全員が牡羊座なのか。

 クラン名か。当然パーティー名を付けたりするパーティーもあるが、俺は今まで気にしたことはなかった。

 だけど他のプレイヤーと自己紹介を交すときに名無しってのもなんかなぁ……。

 これを機にパーティー名を付けてみようか。


 う~ん。

 俺たちヒナやシマンが通っている高校が【星宮高校】だから、えっと星はスターで宮は……宮殿のパレスでいいか。

 名付けて【スターパレス】……だっせぇ。

 というか、それだとロキは仲間はずれみたいになっちゃうから却下だな。


 想像だけして苦笑すると、隣でシマンがチラチラと視線を送ってくる。


「どうしたんだよ?」


「俺らのパーティーもそろそろ名前ぐらい付けないか? 提案なんだが、【スターパレス】でどうだろう?」


 シマンがドヤ顔で名案とばかりに言ってきた。


「えっ……!?」


 小さく声を漏らしたのはロキだ。彼女が突然声を発したので、何事かと俺、ヒナ、シマン、そしてエクスさんが注目する。


「ロキちゃん、どうかしたの?」


「い、いえ……なんでもないです。……それより、ダンジョンが気になります」


 ヒナに訊かれて、ロキは俯いて尻すぼみに言った。


「そうだな。パーティー名は時間のあるときにでも考えることにして、今はあのダンジョンの話をしよう」


 俺がダンジョンを見ながら言うと、エクスさんはメニュー画面を右手で操作しつつ左手を顎のほうへやった。そして顔を俺に向ける。


「タイガさん、もしよかったら一緒にダンジョンに入らないか?」


「えっ……?」


「俺たちのクランは全員が入るつもりはなくて、入るメンバーは十人ほどに厳選する予定だ。そこへ君たちも協力してくれないか?」


 予想しなかったエクスさんからの要請だ。

 てっきり、【エアリーズ】のクランだけで入ると思っていた。


「唐突な話で驚きました。でも、どうして俺たちと?」


 エクスさんによると、先行したサブリーダーのパーティーは【エアリーズ】の先遣隊的な役目を担っていたらしい。

 エクスさん率いる本隊に先駆けて偵察をするようなポジションだそうだ。


「先行したメンバー五人が二時間経っても連絡がなかったことで、そこで初めて俺たちは異変に気がついた。こちらから連絡を試みるがすべてエラーとなった」


「外部との通信遮断ギミックですか?」


「ほう、タイガさんもそう思ったのか。実は俺たちもその結論に至った。フレンドリストにはまだ彼らの名前が表示されているからね」


「俺たちもそう考えました」


「そう予測した時点で俺はこのダンジョンを危険と判断し、クランの半分はここに待機させることを決めたんだ。万が一にも全滅という事態を避けたかったからだ。そしてロキから少しは聞いていた初対面のタイガさんに、危険を承知で頼むのには勝手ながら理由がある」


「理由……?」


「ヒナさん、だったね? 彼女のジョブ【精霊騎士】だ。俺も同じジョブだからわかるんだが、他のクラス3より数段取得条件が厳しくなっている。つまり、言い方は悪いが異常なほどやり込んだ同類と判断した。もちろん取得に見合った強さがあるのを知っているし、だからこそ頼りにしたい」


 ヒナのクラス3ジョブ【精霊騎士】目当てか。確かに実力のわからない俺やシマンはともかく、ヒナと同じジョブのエクスさんならその強さは十分わかっているだろう。

 【精霊騎士】専用の防具である【精霊の鎧】がいい例だ。防御力2,000なんてそうそう貫通する代物じゃない。

 それにスキルも充実している。


 ロキからは【エアリーズ】のメンバーは全員レベル50以上と聞いていたが、エクスさんはそれを差し引いても【精霊騎士】の力を借りたいらしい。

 しかし、それほど危険だと改めてわかったダンジョンへ仲間を誘うのは気が引ける。

 俺は引く理由もないし行くつもりだが、ヒナやシマン、そしてロキには彼女らの判断に委ねたい。


「俺は行くぜ。ルスサイ限定ダンジョンだ。ここまで来て引き返せるかよ」


「私も行きます。元よりそのつもりでしたし」


「ニャア」


 シマンが意気揚々と宣言し、ロキも同意した。彼女の腕に抱かれた環はいつもみたいに呑気に鳴いた。


「私も行くわ」


「ヒナ……?」


「そんな不安そうな顔をしないでよ、タイガくん。こんなところで苦戦していたらきっと<ウルカタイの迷宮>なんてクリアできないわ」


 ウルカタイ……!

 そうだ俺とヒナの目的地、<ウルカタイの迷宮>は遙か先のマキュラリウス地方にある。当然このダンジョンよりも難度は上だろう。


 ヒナがそう決めたのなら、俺が言えるのはこれだけだ。


「わかりました。エクスさんよろしくお願いします」


 俺はエクスさんの目を見て言った。


 かくして俺たちは四人と一匹は、【エアリーズ】の五人二組の十人と合わせて、総勢十五人でダンジョンへ入ることとなった。


 一歩踏み入れると――『<悪魔の腹の中>地下一階』。

 ダンジョン名はそう表示されていた。

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