表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/80

065 ルスタリオ祭 4

「先手必勝! 《燕返し》ッ!」


 シマンの振るった刀から衝撃波が生まれ、直線上のファイアウルフ・E一匹をズタズタに切り刻んだ。

 HPバーは一気に0へと変化する。


「さっさと片づけて、限定ダンジョンへ向かおうぜ!」


「ああ、わかった! 行くぞ! 竜車が狙われないように四方を守りながら戦おう!」


「そうね、北が比較的手薄なようだから、タイガくんはそっちへ! フォローしやすいように私は東で戦うわ! ロキちゃんは西側をお願い!」


「了解です。シマンさんだけに活躍させては、あとで自慢話に付き合わされそうですし、さくっと片付けましょう」


 シマンに続けとばかりに俺たちは四方に散った。

 南はシマン、西はロキ、北よりの東にヒナ、そして北は俺だ。


 百匹を四人で割るから一人当たり二十五匹か。俺の向かう先には二十匹いるかいないかってところだ。

 俺以外の三人は心配せずとも大丈夫だろう。俺は目の前の敵に集中するだけだ。


 俺は全速力で駆けた。

 あと五メートルという距離まで近づくと、ようやくファイアウルフ・Eに動きがあった。

 俺から近い三匹が同時に飛びかかってきたのだ。


「くっ……!」


 右手の【珊瑚の剣】を振るい一匹を一撃で仕留める。もう一匹は体を捻って上手く躱せたが、三匹目の体当たりを脇腹に受けてしまった。

 HPは5,022から4,272まで減少する。750のダメージだ。あと六発も受ければHPは0になってしまう。


 冷静になれ。単体なら俺の敵じゃないモンスターだ。それほどステータスは高くない。

 よく見て、全部躱すつもりで戦う。


「はあああああっ!」


 先ほど俺に体当たりを決めたファイアウルフ・Eを斬り伏せる。

 やはり属性の相性が効いている。火属性のファイアウルフ・Eに対して俺の【珊瑚の剣】の水属性は、通常攻撃でもまともに決まれば一撃で倒せる。


 よく見て――躱すッ!


「全然見える!」


 そうだ、無理して積極的に攻撃する必要はないんだ。

 躱して斬る。こっちは一撃で一匹を確実に倒せるんだ。焦る必要はない。

 まともに攻撃を受けないように防御に重点を置いて戦えば、俺でもこの数とやれるっ!


 何度か攻撃を受けることがあったが、もう十匹以上は倒している。


「タイガくん、半分受け持つわ!」


「助かる! じゃあ、右側のを頼む!」


 そして、ヒナも加勢に来てくれた。あえて聞かないが、もう東側のファイアウルフ・Eはすべて倒してしまったんだろう。

 ヒナが近くにいるだけで体が軽くなったように感じる。俺は軽快に剣を振るった。


 俺の左後方あたり――ロキの担当している西側――から爆音が響いてきた。ファイアウルフ・Eの悲鳴とも取れる鳴き声が聞こえてくるので、ロキの魔法が炸裂したんだろうとわかる。

 この調子だとシマンのほうも大丈夫だろ……ん?


「誰か、止めてくれ! 新手だ! 十匹竜車に向かったぞ!」


「えっ……!?」


 どういうことだ!?

 目の前のファイアウルフ・Eを警戒しつつ肩越しに後方を確認したいが、俺にそこまでの技量はない。


「タイガくん、ここ一人でいけそう?」


「え、あ、ああ! 大丈夫だ!」


「私は竜車に向かうわ! タイガくんも危なくなったら一旦距離を取って時間を稼いで!」


「わかった!」


 ここはヒナに任せるしかない。


「ロキちゃん! 魔法でいけそう?」


「ここからじゃ間に合いません! ヒナさんのほうが早いかと!」


 ヒナとロキとのやり取りが聞こえる。かなり切迫した感じだ。後ろで何が起こっているのか気になるが、目の前には六匹のファイアウルフ・Eが獰猛な牙を剥き出しにして低く唸っている。


 背後の竜車が心配だが、今俺にできることは目の前のこいつらを倒すことだ。


 俺は息を吐いて剣を構え直す。逸る気持ちを抑えて平常心を取り戻す。

 中央の二匹と右端のファイアウルフ・Eが俺に狙いを定めて飛びかかる。

 三匹がほぼ同時に動いたが、それぞれのステータスの差か俺に迫るタイミングには多少ズレがある。


「まずはおまえだッ!」


 一匹目を斬り伏せる。続く二匹目は通常攻撃じゃ間に合わない。


「《ヘヴィクラッシュ》ッ!」


 二匹目をスキルのスピードで補って斬った。だが、わずかに発生した硬直時間があるので三匹目の攻撃を躱すのは無理だ。


「だったら、少しでもダメージを減らす!」


 硬直時間が切れた瞬間に体を捻って左肩をファイアウルフ・Eの顔面にぶつける。

 互いにHPは少し減るが、相手は怯んだ。その隙に俺は剣を突き刺した。

 残った三匹も次々に攻撃態勢に入る。


「よし、来い!」


 俺は同じ要領で危なげなく目の前のファイアウルフ・Eを全滅させた。

 そして、すぐに後ろの竜車のほうへ振り返る。


「え……!?」


 俺は目を疑った。

 竜車の前には旅装の客が立っていた。しかも十匹のファイアウルフ・Eに襲われる寸前だ。ヒナやロキが走っているが間に合いそうもない。

 俺だってあの状況じゃ死を覚悟する。


 だが、旅装の客が両手を左右に大きく広げてから素早く交差すると、飛びかかっていたすべてのファイアウルフ・Eが輪切りになる。

 もちろんHPバーは一瞬時に0へと変わる。


 な、えっ……!?

 何が起こったんだ……!?


 ヒナやシマン、ロキさえも足を止めて驚いているように見える。

 それはそうだろう。俺たちの目の前で旅装の客がファイアウルフ・Eを全滅させたのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ