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056 六番カジノ

 五番カジノから出て歩いていると、俺は気になったことをシマンに訊いた。


「なぁ、あのクエストって本当にあれで解決したのかな?」


「は? クエスト詳細画面も確認したんだろ? それに依頼主のモスさんからも報酬をもらったんだぞ?」


 クエスト一覧リストから、先ほど達成したクエスト詳細を確認する。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 Mission complete!!


 【特殊クエスト】☆


 クエスト: イカサマを見極めろ


 <ポルカの町>の五番カジノでイカサマ集団を摘発しろ


 出現モンスター: なし


 難度:C


 最近、五番カジノでイカサマ行為に手を染める集団が現れて売り上げが激減している。

 イカサマ集団の証拠を押さえ、五番カジノを助けて欲しい。

 詳しくは五番カジノのオーナー『モス』まで。


 報酬:10,000G



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 『Mission complete!!』と記載されていることから、間違いなくこのクエストは終了している。


「いや、クエストの達成はしてるんだよ。俺が言いたいのはイカサマ集団の件は本当に解決したのかって話だよ」


「イカサマの現場を押さえて、やつらは仲間ともども自警団に連れて行かれたじゃないか。ちゃんと解決してるだろ」


 確かに駆けつけた自警団の兵士風の男たちがイカサマ集団を連行して行くのを俺たちは目の当たりにしている。

 モスさんもそれを眺めながら安堵の表情を浮かべていたし、「これで解決ですね」とハッキリ口にしていた。

 でも……。


「モスさんや他の人の話じゃ、イカサマ集団は全員で十人ほどいたらしいじゃないか。今日捕まったのは六人だけだし、六番カジノが絡んでいるって話だったはずだろ?」


「そこは捕まったやつらが口を割って芋づる式にってやつだろ。近日中に関係者は全員捕まるんじゃないか?」


「……本当にそうかな?」


 今日は姿が見えなかったが聞き込みした内容では、元五番カジノで働いていた男が今は六番カジノで働いていて、イカサマ集団の一人として来店しているという話だった。

 その辺の背後関係と彼らの罪はどうなるのだろう。


 シマンが言うように、関係者が芋づる式に逮捕されてお終いなのだろうか。

 しかも六番カジノと言えば、プレイヤーがオーナーをしているという噂だ。こういった罪を犯した場合、どのようなペナルティが発生するんだろうか。


「関係していると推測される六番カジノのオーナーはプレイヤーだって話だろ」


「噂ではな。でも、俺らに関係ないだろ。クエストは達成扱いになってるんだし、俺たちが気にするこっちゃねぇよ」


 シマンはこのクエストは終わったとばかりに、深く考えるなと言ってくる。

 俺は腑に落ちないまま、報酬を受け取りに冒険者ギルドに向かった。




 冒険者ギルドで報酬の10,000Gを受け取った俺は、外に出て辺りを見渡した。

 現実世界では昼の十二時を少し過ぎた頃だが、<DO>内では深夜の一時を回っている。


 今まで立ち寄った町なら夜間は昼間よりも静かになるのだが、この<ポルカの町>はまったく真逆だった。夜になればなるほど活気が増す。

 魔法の灯火がネオンのように店の看板を照らし、目がチカチカするぐらい明るいのだ。

 人通りも昼間より圧倒的に多い。そのほとんどがカジノ目当ての者たちだろう。


 不意に視線を感じて、俺は振り返った。そこには頭の上に?マークを浮かべたようにシマンがいるだけだった。


「なんだぁ?」


「いや、なんか誰かに見られていたような気がしたんだ」


 シマンは周囲を確認してため息を吐いた。


「気のせいだろ。というか<サングローの海底神殿>でも同じこと言ってなかったか?」


「あれはちゃんとこの目で確認したんだよ。サッカーボールぐらいの大きさの眼球だった。モンスターだったのかな」


 他のゲームじゃ俺が目撃した大きな目玉のようなモンスターがいるらしいのだが、<DO>ではいないらしい。

 魚と見間違えたんだろうとシマンは言う。


 あの時と同じような視線を確かに感じたのだが、本当に気のせいなのか?

 辺りに目をやるが多くの通行人がいるだけで、別段変わったことはない。


「シマン、ちょっと六番カジノへ行ってみないか? やっぱり気になるんだ」


「まだ言ってんのかよ。まぁ、俺は別にいいけど」




 俺たちは六番カジノの店が建ち並ぶ一画にやって来た。シマンと相談した結果、オーナーがいるとしたら一番大きい店だろう――五番カジノがそうだった――ということで目星を付けた店に入った。


 すれ違ったスタッフを捕まえて、俺はオーナーがいるかどうか単刀直入に訊いてみた。


「六番カジノのオーナーでしょうか? ここにはいらっしゃいませんが、あなた方はどちら様でしょう?」


「五番カジノでイカサマ集団が捕まった件で話がしたい。取り次いでもらえるか?」


 シマンが割り込むように質問した。するとスタッフは一瞬で顔色を変えて、早口にしゃべり出した。


「ご、五番カジノの……。私は何も知りませんし、何もお答えすることができません。で、では、失礼します」


 絵に描いたような動揺を見せる。シマンはスタッフの進行方向を遮るように移動する。


「あと一つだけ訊かせてくれ。オーナーってのは今どこにいるんだ?」


 シマンの問いにスタッフは大きく目を見開いた。しかし、それはシマンに驚いたのではなく、その背後の人物を目にしたからだ。


「あっ、オーナー!」


 スタッフがそう漏らしたので、俺とシマンはその人物がオーナーだとわかった。

 だが、オーナーと呼ばれた人物は見覚えのある少女だった。

 中学生ぐらいに見える容姿で、金髪碧眼で魔法使いっぽい服装に三角帽子という出で立ち。左手には杖を持って、右手には黒猫を抱えている。


「ロ、ロキ……!?」


 そこに立っていたのは俺のフレンドリストに名を連ねるロキだった。

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