047 サングローの海底神殿 2
先へ進むと二階へと続く階段があった。階段を上って二階へと進む。
マップには『<サングローの海底神殿>二階』と表示されている。
この部屋には一階に行く階段しかない。モンスターはいなかった。
正面と左に進むことができるようだ。
俺たちは正面に進んで行った。
果たしてそこは行き止まりだった。途中でミノタウロスが同時に三体出現したが、それぞれ一体ずつ倒す。
俺はさっきと同じく二撃かかったが、ヒナとシマンは一撃で倒していた。
やはり装備制限があってもこの二人は強い。
階段があった部屋まで戻って今度は左へ進む。
行き止まりだ。しかし、先ほどとは違い正面の壁の前には床がなく正方形の穴があった。
一辺は三メートルほどだろうか、そこは水で満たされていた。
「なんだ……これ?」
「おそらく、これで階層を行き来するのね」
「そうか! 階段じゃなくてここに潜って下の階に行くってことか」
「そうだと思うわ」
躊躇する理由もないので、俺たちは【空気の実】を口に入れて水の中に飛び込んだ。
【木剣】を腰の剣帯に差したままだが、泳ぎに支障はない。
もし、水中でモンスターに遭遇したらどうなるのだろう。などと考えたが、そんなこともなく、しばらく下に向かって進んでいると底が見えた。
小魚の群れが目の前を通り過ぎる。
前方に進めるようなので、そちらに泳いでいく。
やがて行き止まりになるが、今度は上に行けそうなので俺たちは浮上した。
水面から顔を出すと、小さな部屋に出た。
俺たちは水から上がり辺りを見回す。
「ここは地下一階のようね」
ヒナの言ったとおりマップには『<サングローの海底神殿>地下一階』と表示されていた。
「これで【空気の実】を二個消費だな」
「ヒナちゃんが調べた情報では【空気の実】は八個あれば事足りるみたいだから、そんなに残数を気にしなくてもいいんじゃないのか?」
「いや、帰りも使うことを考えたらなんか不安になったんだよ」
「気にしすぎだって」
シマンはまったく気にしていないようだ。俺の杞憂に終わればいいのだが。
「次は左右に分かれてるわよ」
「じゃあ、右で」
俺が顎で示すと二人は頷いた。
右の部屋に入ると、ミノタウロスが三体徘徊していたので速攻で倒す。
「ここに出現するモンスターはミノタウロスだけなのか? なんか拍子抜けしたっていうか……」
「それはタイガくんのレベルが高いからよ。推奨レベルは35だから、それ以下のプレイヤーは装備制限もあるから厳しい戦いになると思うわ。あと、モンスターはミノタウロスだけじゃないわよ」
ヒナによると、<サングローの海底神殿>に出現するモンスターは全部で四種でボスを含めると五種になる。
ミノタウロス、コカトリス、スキュラ、リザードマン・Eというモンスターのようだ。
そしてボスモンスターはウンディーネというらしい。
「なぁ、そのリザードマン・Eってなんなの? リザードマンとは違うのか?」
「EってのはエヴォリューションのEで、進化って意味だ。だから俺たちが<バルバリア湖>で戦ったリザードマンの上位種だな」
「他のモンスターも名前の最後にEが付いている上位種は存在するから、見た目で油断しないでね」
見た目が大きく違うものや、ほとんど差異がわからないモンスターがいるらしい。
まぁ、名前でわかるからいいか。
エヴォリューションか、覚えておこう。
コカトリスは状態異常の石化持ちで注意が必要で、スキュラは水中に潜んでいるという。
やはり水中にもモンスターは存在するんだな。
水中での戦闘か……いったいどうなるんだろう。
分岐もなく道なりに進んでいくと、早速リザードマン・Eが現れた。数は五体だ。
「よっしゃ! 俺とヒナちゃんが左右の二体ずつ引き受けるから、タイガは正面の一体を頼むぞ」
「わかった!」
ヒナが左へシマンが右へと散開する。俺は正面のリザードマン・Eと対峙した。
以前<バルバリア湖>で戦ったリザードマンは泥のような灰色がかった鱗をしていたが、目の前のリザードマン・Eの鱗は真っ青だ。
見た目で区別できるタイプのようだ。
前は俺のレベルが低かったこともありリザードマンには歯が立たなかった。しかし、今の俺なら余裕で勝てるだろう。
さて、このリザードマン・Eはどうだろうか。
「Gugiiiiiiiiiiiiii……」
右手には剣を左手には盾を装備している。俺たちと同じく装備制限があるのか、どちらも木製だった。
――先手必勝。
先に動いたのは俺だ。少し遅れてリザードマン・Eが反応し盾を前に突き出した。
俺の剣が盾に直撃する。
「防いだかっ……!」
その衝撃で互いに後ろへ一歩下がる。
だが、俺はすぐに攻撃に転じた。俺の剣がリザードマン・Eの胸を打った。
HPバーは七割近く減る。
「……二回当てれば勝てるな」
しかし次の攻撃はまたも盾に防がれる。
意外と盾の使い方が上手い。
直後、リザードマン・Eの剣が頬を掠めるが、危なげなくやり過ごせた。
「その調子その調子、タイガー。いけるぞー」
なんとも気の抜けた応援が右から飛んできた。
チラリと横目で様子を窺うと腕組みをしたシマンが立っていた。
もう二体倒したのか!?
いちおう左を見ると、ヒナも終わらせたようで納剣していた。
二人に負けていられないっ!
俺の振るった剣はリザードマンの首筋に決まった。
「リザードマンにリベンジを果たしたなー」
「……前のより強かったのか?」
「もちろんだ。なんせエヴォリューションだからな」
シマンは快活に笑った。
ヒナもコクコクと頷いている。
リザードマン・Eを倒した俺たちは続く分岐を左へ進んだ。
次の部屋にもモンスターがいた。それがコカトリスだと、ヒナが教えてくれる。
「これがコカトリス!」
見た目はほぼニワトリだ。しかし、異様にデカい。身長は俺と同じくらいあるんじゃないだろうか。
レベルは俺のほうが上に違いないが、見た目が恐い。なんせ、人間と同じ異大きさの鳥なのだから。しかも本当にリアルで、現実世界のニワトリをそのまま大きくしたような感じだ。
ただ、足と尻尾はリザードマンのように爬虫類を思わせる容姿だった。
くちばしに攻撃されると石化状態に陥ることがあると、ヒナが助言してくれる。
石化には段階があり、コカトリスの石化攻撃は徐々に石化が進行していくタイプのようだ。
完全に石化する前ならヒナの魔法や、二人が所持しているアイテムで解除は可能らしい。
だが、完全に石化してしまうと町に戻らないと治せないそうだ。
そのコカトリスが五体。
さっきと同じく、左の二体をヒナが右の二体をシマンが受け持つ。俺は正面の一体を相手することになる。
動きが本当に気持ち悪い。どこを見ているのか目玉の中の黒目がギョロッと忙しなく動いている。
コカトリスはニワトリのように一声鳴くと、俺に向かって突進してきた。
「来いっ……!」
俺はコカトリスを迎え撃った。




