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031 シマン参戦

「間違いない! 陽菜(ひな)ちゃんだよね?」


 シマンはヒナの顔を覗き込んだ。


「え、その……私は……」


 ヒナが俺に視線を送るが、これはもう誤魔化しようがない。

 俺の表情を見て、隠し通すのは難しいと判断したのか、ヒナは頷くことで肯定した。


「やっぱり! 若干カスタマイズしてても、ヒナちゃんの美貌は誤魔化せないぜ!」


 シマンは白い歯?牙?を見せて、親指を立てた。


「そ、そうかしら……?」


 ヒナはシマンに若干引いていた。


「タイガ、説明してくれるか? 内容によっては俺との友情にヒビが入るぞ?」


「いや、これはだな……」


 シマンが俺に詰め寄る。

 だが、ヒナがすかさず間に入る。スキル《庇う》ばりのスムーズな移動だった。


「ごめんなさい、タイガくんは悪くないのよ。私が秘密にしてって言ったの。あまり学校では知られたくなかったから。だから、シマンくんも学校では内緒にしてくれると助かるわ」


「そりゃ、もちろん! 俺は口が固くて有名だからね!」


 ヒナとは偶然出会ったことをシマンに説明する。ヒナはお兄さんからの謎のメッセージで俺と接触したわけだが、そこまで説明する必要はないだろう。何があるかわからないし、シマンを巻き込むわけにはいかないからな。


 ちなみに、今ヒナが俺の部屋からログインしていることは口が裂けても言えない。

 妙な誤解を受けて恨まれても敵わないからな。


 シマンとパーティーを組んでいない時間は、ヒナとパーティーを組んでいたと話す。

 案の定、シマンもパーティーに加わりたい――ヒナとフレンド登録してパーティーを組みたい――と言い出したので、ヒナが了承する。


「じゃあ俺はヒナちゃんと呼んでいいかい?」


「ええ、もちろんよ」


「やったぜ!」


 シマンはガッツポーズをする。

 このあと、山賊退治にも同行してくれるようだ。

 レベル42のシマンがいるのは山賊と戦う上で正直心強い。


「ところで、《ウェポンブレイク》って知ってるか? さっき山賊に使われたスキルなんだけど、二人がかりで俺の剣を挟み込むように同時に放たれたんだけど」


「えっ、《ウェポンブレイク》使われたのか?」


 シマンは俺の腰にある【菫の剣+2】を見て怪訝な顔をした。


「おい、それ【菫の剣】じゃないか。ステゴサウルスからドロップできたのか!」


「あ~、実はこれヒナからの借り物なんだ。俺は一度もドロップすることはなかった」


「山賊が【菫の剣】を装備しているのがわかったから、念のために無理言ってタイガくんにも同じ武器を装備してもらったの。防具も花シリーズにしていたみたいだったし」


「花シリーズ……」


 <ヌオン平原>で【菫の剣】の説明をされたときに聞いた名だ。

 見た目から山賊が装備していたのは【菫の剣】【桔梗(ききょう)の鎧】だとヒナが教えてくれる。ドワーフはそれに加えて【胡蝶蘭(こちょうらん)の外套】という装備だったらしい。

 シマンはアイテムストレージから【星辰刀(せいしんとう)】という刀を取り出して見せてくれた。さらに、身につけている甲冑が【明星の甲冑】どちらも星シリーズのようだ。


「ヒナちゃんからの借り物か。破損しなくてよかったな」


 シマンは【星辰刀】を収納しながら苦笑した。


「私はタイガくんが無事なら破損しても気にしないわ。私が普段使うことのない武器だし」


「破損……。やっぱり《ウェポンブレイク》という名前からして、武器を破壊するスキルだったか」


「おうよ、一定確率で相手の武器を破壊するスキルだ。店売りの武器と違ってドロップ品を破壊されたら、その悲しみは半端じゃないぞ」


 シマンが苦笑した。

 確かにな。ドロップ率の低さから武器破損時の喪失感は想像に難くない。

 たとえ、二凸された状態でも《ウェポンブレイク》が決まれば、即座に武器を失うらしい。

 ちなみに《アーマーブレイク》という、防具を破壊するスキルも存在するようだ。


「あ、これ返すよ。ありがとう」


 俺は【菫の剣】を返そうとするが、ヒナは首を横に振った。


「まだタイガくんが持っていて。山賊を相手にするには必要だと思うわ」


「でも……」


「ヒナちゃんの厚意を無にするなって。それに俺もそのほうがいいと思うし」


「……わかった。もう少しだけ借りておくよ」


 そして、今後の方針を考える。


「山賊のナンバーツーらしいドワーフを倒したし、山奥にある小屋に残党がいる可能性を考えて向かったほうがいいのかな?」


「私たちが倒した山賊は、どこかの町でリスポーンしているはずよ。彼らの気が変わらなければ、また山賊行為を続けるでしょうね」


 そうなのだ。結局、山賊を退治するといっても一時的に追い返すといったことしかできない。あいつらに山賊行為をやめさせるには、話をするなどして理解させるしかないのだ。

 もしくは五回倒して<DO(ディーオー)>を永久退場させるかだ。


「俺たちがしたことって無駄だったのかな」


「そんなことないだろ。確かにやつらは同じことを繰り返すかもしれないが、今回に懲りて改心する可能性もあるんじゃないか? まぁ、可能性は高くはないけどな」


「シマンくんの言うとおりよ。少なくとも彼らが<ハリザラ山>でのPKは割に合わないと判断して撤退してくれれば、それはタイガくんの行動のおかげよ」


「そうか……うん、わかった」


「彼らの話からすると、山賊のボスはザックスに<DO(ディーオー)>を退場させられた可能性はあるわね」


「……は? ザックス? どうしてここでザックスの名前が出てくるんだ?」


 シマンが驚くのも無理はない。ドワーフがザックスの名を出したとき、シマンはここにいなかったのだから。


「どういった経緯か知らないが、山賊はどうもザックスと揉めたらしい」


「こいつらが言ってたのか?」


 シマンは山賊が倒れていた地面を指して言う。山賊の死体は蘇生時間を過ぎたので、すでに消えている。


「ザックスか……」


 シマンはザックスにPKされた苦い経験を思い出しているのか、眉間にしわを寄せて表情を険しくした。

 ザックスに関してはそれぞれ思うところがあるだろう。しかし、いつまでもここにいるわけにはいかないので、俺は話題を戻すことにする。


「とりあえず、山賊が根城にしているという小屋に向かわないか?」


「ええ、そうね」


「よっしゃ、行くか」


 こうして、俺とヒナはシマンをパーティーに加えて、山賊の根城を目指すのだった。

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