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021 山賊出没中

 その後は山賊が現れることなく、グリズリーやハーピー、ケンタウロスと何度か遭遇しただけだった。

 俺はシマンの手を借りてケンタウロスにもトドメを刺すことができたので、<ハリザラ山>に出現するモンスターのHPは数値として見られるようになった。 

 そして、レベルも2上がって22になっていた。


 ようやく最初の休憩地点に辿り着いた。

 ここまでで二時間近く経過していた。これは単純に俺がモンスターとの戦闘に時間を割きすぎたせいだろう。適正レベルのプレイヤーなら戦闘もスムーズだろうし、一時間もあれば到着したに違いない。


 休憩地点では<ハリザラ山>の麓にあったところと同じように、宿や様々な店が並んでいる。俺はケンタウロスの毒矢に備えて【解毒ポーション】をいくつか買っておこうと思ったが、シマンに割高だから止めておけと言われた。シマンは腐るほど【解毒ポーション】を持っているらしく、俺が毒を受けたらその都度回復してくれるそうだ。


 山頂に向かうために反対側の出口まで進むと、通行止めをするかのように木でできた看板が地面に刺さっていた。



『注意! この先、山賊多発!』



 なんと山賊が出没することについての注意喚起だ。


「シマン……これは?」


「俺が前に来たときはなかったな。さっきみたいな山賊がいるんなら、この注意喚起は妥当だが。ちょっとそこらの店の人に訊いてみようか」


「そうだな。情報を集めよう」


 俺たちは周りにいた人たちから情報を集めた。

 情報をまとめると、<DO>内時間で四日ほど前から山賊が出没するようになったらしい。

 <ハリザラ山>の適正レベルは攻略サイトにも25と記載されているが、現在レベル25では山賊に到底太刀打ちできないという。

 現実世界ではまだ一日ほどの時間経過のため、攻略サイトにそこまでの情報はなかった。そもそもこんな序盤の町で起こったことなど、すぐに更新されないだろう。大半の者は新しい町の最新の情報を求めているのだから。


「多くのプレイヤーが迷惑しているみたいだな。俺もソロなら死んでいたもんな」


「運営側が起こしたイベントじゃなくて、PK集団だからな」


「シマン、山賊を退治しよう」


「は? お前、本気で言ってる?」


「ああ、本気だ。だから俺はここでレベル上げをする!」


 どっちにしろ、俺がこの先の地方に進むにはレベルが足りない。<ハリザラ山>に出現するモンスターは俺のレベル上げには恰好の相手と思えた。

 その成果として山賊を倒せば他のプレイヤーは助かるし、俺も先へ進むことができる。


「タイガ、お前な~。モンスターはともかく、山賊を相手にするには最低でもレベル30後半は必要だと思うぞ。それに俺が倒したやつより強いのがいたら終わりだ。それこそザックスみたいなのがいたら、今の俺でも勝てないんだぞ?」


「ザックス……」


 【殺戮者】ザックス。俺やヒナが狙われたこともあるし、シマンは一度PKされている相手だ。シマンが懸念するように、<ハリザラ山>を根城にしている山賊の中にザックスがいる可能性も否定はできない。


「この先に進むのは危険だ。レベル上げするのは付き合うが、山賊退治は勧められないな。それに時間が立てば、情報を得た高レベルのプレイヤーがなんとかしてくれるかもしれないぜ?」


 シマンが言うこともわかるが。誰かがなんとかしてくれる保証はない。事態が進展しなかった場合、ヒナは安全のために俺をここに残して一人で<ウルカタイの迷宮>に向かうだろう。

 それは嫌だ。

 なら俺が強くなるしかないだろう。


「それでも俺は先に進みたいんだ」


「……ったく何をそんなに焦ってるのか知らないが、タイガは初心者なんだしマイペースにやってもいいと思うぜ? ちょ、そんな怖い顔すんなよ! わかったよ、取りあえずレベル上げしよう、な?」


 無意識のうちに先に進みたいという焦りからか、シマンに気を遣わせてしまったようだ。

 俺たちは来た道を何度も往復しながらレベル上げに専念した。



 <DO>内で八時間を経過したころ、シマンの提案で一旦休憩することになった。まだ時間的には余裕があるが、長時間プレイするとステータスに影響がでるからだ。なのでリフレッシュする必要があったのだ。

 休憩地点で宿をとってもよかったが、そこで寝ると八時間経過してしまう。ログアウトすると現実世界で一時間の休憩、つまり<DO>内時間の経過は四時間で済むので、俺は迷わず後者を選択した。


 再開後、俺たちは山道を往復してひたすらモンスターを狩った。モンスターのレベルやHPの正確な数値が見えるようになったので、現状の把握がしやすくなった。もちろん、俺が気づくより早くシマンのフォローが入る。


「う~ん。さっきの山賊戻ってこないな」


「え? どういうことだ?」


「リスポーンしてから、仕返しでもされるかと少し心配したんだけど、大丈夫みたいだな。気にしていないか、リスポーン地点が遠かったのか……」


「ふぅん。そうなのか」


 シマンが言うには蘇生後に、再び襲いかかってくる輩もいるそうだ。

 経過時間的にも今回はそうではなかったようなので、ほっと息をつく。

 幸いなことに遭遇するのはモンスターばかりだった。



 何度も同じ行動を繰り返し、ようやくシマンの助けを借りずにハーピーを倒すことに成功する。

 攻撃スキルが《クラッシュ》しかないのがネックだな。空中を縦横無尽に飛び回るハーピーや、矢を射るケンタウロスに対して俺も遠距離攻撃できるスキルが欲しいと思った。早くクラス2ジョブに転職したいものだ。



 もう結構な時間をプレイしている。現実時間ではもう午後九時ぐらいか。シマンとは午後一時から一緒にプレイしているので、もう八時間。<DO>内時間では三十二時間が経過している。


 途中で休憩を挟んだおかげか、疲労感はなかった。

 でも、今日のところはそろそろ切り上げ時か。

 俺はシマンにログアウトの意思を告げる。驚くことにシマンはまだプレイを続けるらしい。

 おいおい、明日学校だぞ?と言いかけたが、今日はシマンに世話になりっぱなしだったので、口を噤んだ。


「じゃあ、明日も手伝ってやるよ。ちょっと心配だしな」


 すまん。

 多分、明日はヒナとプレイすると思う。


「ええと……明日は無理かも……」


「そうなのか? ……わかった。なら明日は別の狩り場で【侍】のレベル上げに専念するわ。なんかあったらメッセージ飛ばしてくれよな」


 本当にすまん。そして助かる。シマンはいいやつだ。

 俺は心の底から感謝しつつ、ログアウトした。

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