017 攻略サイト
午前中はヒナとモンスター狩りをして、レベルが一つだけ上がった。
この辺りのモンスターなら一人でも問題ないだろう。
「じゃあ、私はログアウトするわ。今日はもうログインできないと思うから、また明日学校でね」
「ああ、じゃあな」
ヒナが目の前でログアウトするのを見送った。
「さてと……シマンにメッセージだけ送っておくか」
シマンに一旦ログアウトして昼食を摂り、<DO>内時間で四時間後にログインする旨をフレンドメッセージで送信した。
すぐにシマンから『了解』と短く折り返しがあった。
***
現在、午前十一時五十五分。
ログインするまであと一時間ある。俺は冷蔵庫を確認し軽めの昼食を調理して胃袋を満たした。
自室に戻ると、すぐにログインせずにPCと睨めっこする。見ているのは<DO>の攻略サイトだった。今までは見てもわからないことが多かったが、<DO>に慣れてきた今の俺には役立つだろう。そう考えて、時間つぶしをかねて攻略サイトを読み込むのだ。
攻略サイトで確認したのは、気になっていた【狂戦士】のジョブだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【狂戦士】
転職条件: 【戦士】レベル30
称号【向こう見ずな男】を所持
コスト: 2
ステータス補正: なし
習得可能スキル
■《底力》
現在HPが少ないほど攻撃力増加
最大値はHP1のとき攻撃力+100%
※一切の遠距離攻撃不可
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この《底力》というスキル。やはり俺には魅力的に見えて仕方がない。レベルの低い俺がザックスにダメージを与えるならば、このスキルしかないだろうと思ったからだ。
<DO>内で《底力》の説明を見たときは攻撃力+100%の印象が強すぎて、考えが回らなかったけど、これは……。
「HPが最大値のときの攻撃力補正はマイナスか……」
残HPに対しての《底力》の攻撃力補正をよく見ると、HPが最大のとき攻撃力-50%となっていた。以降HPが1%減るごとに攻撃力補正は-49%、-48%と変化していく。
そして残HPが50%のときに、攻撃力補正が±0だ。
それ以降はHPが1%減るごとに攻撃力補正は+2%、+4%と増えていく。HPが1%時点での攻撃力補正は+98%であり、HPの値が1になったとき攻撃力補正は+100%になるのだ。
「なるほど、HPが50%を切るまでは逆にマイナスなんだな。しかもスタートが-50%とはキツいな」
HP1を維持したまま戦えるならぶっ壊れスキルとも言える。しかし現実には無理がある。ヒナが教えてくれたとおり、現環境はやられる前にやるがセオリーだ。これでは攻撃力補正の恩恵を受ける前に死んでしまうのがオチだ。
ヒナが言うからには、現状のスキルを組み合わせても《底力》を活かすのは難しいのだろう。
実際、攻略サイトには取らなくてもいいジョブと記載されている。
ちなみに攻撃力の計算式も記載してあった。
物理攻撃力の場合STR✕DEX✕AGI✕0.001+20。この値に装備している武器の攻撃力を加算したものが最終的な物理攻撃力になるようだ。
これは隠しパラメータなので<DO>内では表示されることはないし、公式サイトでは告知されていない。あくまでユーザーの有志が独自に解明して、攻略サイトに記載しているものだ。
「……陽菜や島本はこの計算式を暗記しているんだろうな」
他にも魔法攻撃力に物理防御力、魔法防御力の計算式があったが覚えきれるはずもないので、今は軽く目を通すに留める。どうせ陽菜や島本が覚えているからいいだろうという考えもあったのだ。
続いて、ザックスのジョブ【暗黒騎士】を調べてみる。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【暗黒騎士】
転職条件: 【重戦士】レベル60
【暗殺者】レベル60
コスト: 3
ステータス補正: なし
■【暗黒騎士】をメインジョブにすると、
いかなる回復手段をもってしても
HP回復不可
■呪われた武器防具を装備可
習得可能スキル
■《ギロチンアックス》
攻撃力+100%
※サブジョブのとき使用不可
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
《ギロチンアックス》が強力過ぎる……。
ただし、メインジョブでないと使えないのか。
あとは……HPが回復不可と、呪われた武器防具を装備できるようになるんだな。
転職条件はクラス2ジョブの【重戦士】と【暗殺者】をレベル60まで上げる……か。
ソロには不向きと記載がある。HPが回復できないのが痛いな。ジョブの変更は冒険者ギルドか教会でないとできない。つまりHPが減ったからといって、他のジョブに変更して回復するのは無理だということだ。仲間がいないと死ぬ可能性は大だ。
あのときザックスは一人だったが、ソロのPKなのだろうか。
このジョブだとヒナと戦うには不向きだから、次は別のジョブにするとか言っていたな……いったいどんなジョブでくるんだろう。
しばらく攻略サイトを眺めているとあっという間に時間が過ぎていたので、俺はベッドに横たわりVR専用ヘッドギアを被り<DO>にログインした。
***
ログインしてシマンがまだいないことを確認すると、俺はさっそく物理攻撃力の計算を始めた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
タイガ
人間
レベル:19
職業: 戦士
職業レベル:18
HP(生命力):1,156
MP(魔力):128
SP(技力):54
STR(筋力):142
VIT(体力):59
INT(知力):45
MND(精神力):19
DEX(器用度):57
AGI(敏捷度):38
LUK(幸運度):58
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
これが今の俺のステータスだ。
これを基にさっきの計算式に当てはめる。メインメニューにある電卓機能を使う。
142✕57✕38✕0.001+20=327.572
算出された値は四捨五入らしいので、これに俺の装備している【鋼の剣】の攻撃力+30が加算される。
なので俺の攻撃力は358となる。
仮に俺が《底力》のスキルを保持しているとすると、HPが最大時に俺の攻撃力は179。
HPが1のとき攻撃力は+100%になるので716だ。
「確かヒナが持っている【精霊の剣】の攻撃力が+820だったはず……。はぁ~、今の俺じゃ武器にすら及ばないのか……」
俺は目眩を覚えた。
少しするとシマンから『今、どこだ?』とメッセージが届いたので、『<パームの町>の南門の前』だと返した。
南門の前にこの町の<ゲート>があるのだ。
ほどなくシマンが<ゲート>からやってきた。
「おっす! <パームの町>まで来るなんてなかなかやるなぁ」
「まぁな。いきなりで悪いけど、シマンの詳細ステータス見せてくれるか?」
「あ、ああ。別にいいけど、どした?」
「シマンの物理攻撃力と物理防御力が知りたくてな」
「タイガ……。お前の口から物理攻撃力なんて言葉が聞けるなんて……俺は夢でも見ているのか! ……冗談はさておき、お前もそういうことを考えるようになったか。その程度、俺が計算してやるよ」
やはりシマンは計算式を暗記しているらしく、手元を動かして計算してくれた。
「装備抜きだと物理攻撃力が4,767で、物理防御力が2,524だな。いっとくがタイガの攻撃は俺に通らないぞ。それほどの力の差があるってことだ」
予想はしていたけどこれほどの差があるとは……。
ザックスもシマンと同じ獣人だからステータスの基本値は同じはずだ。ザックスのレベルは43だったか……いや、今はさらに上がっていると考えたほうがいいな。
どうにかして俺もレベルを上げないといけないな。




