013 不人気ジョブ
<ヘイムの町>に着いた俺たちは、早速装備品を扱っている店に赴いた。
俺にはどれがいいのかわからないので、すべてヒナにお任せだ。その間手持ち無沙汰になった俺は、店内をぼうっと眺めていた。
俺のSTRは135まで増えている。装備できる武器の選択肢も広がったはずだ。その中からヒナが適切なものを揃えてくれるだろう。いずれはヒナのようにより効果の高いドロップ品を装備したいものだが、今は店売りの装備で我慢するしかないようだ。
「タイガくーん、お会計お願い」
「ああ、もう決めてくれたのか」
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【鋼の剣】
攻撃力+30 必要STR20
【青銅の鎧】
防御力+30 必要STR10
【守りの指輪】
防御力+10 必要STR1
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【青銅の剣】を【鋼の剣】に、【革の鎧】を【青銅の鎧】に変更した。【青銅の鎧】を装備することで、装備できなくなった【革の靴】をアクセサリの【守りの指輪】に変更する。ついでに鎧の下に着る服とズボンを、ファンタジー世界の雰囲気に合うものにした。
「結構、さまになっていないか?」
「ええ、いいと思うわ」
総額23,000G。今の俺にとっては決して安い買い物ではなかったが、見た目はそれらしくなった気がする。
攻撃力や防御力も大幅に強化されているはずだ。
この店で一番目を引いたのは<ハオリオの町>にもあった【真銀の剣】だろう。STRを300も必要とするこの武器の攻撃力は+500であり、その価格はなんと150,000Gと非常に高価だ。ヒナが言うには、店売りの武器では現在トップクラスのようだ。ヒナが所有する【精霊の剣】の+820には遠く及ばないので、ドロップ品がどれだけ強力なのか理解できる。
続いて教会で新しいジョブを選ぶことにした。
レベル18になった俺のコストは3まで増えていた。レベル20になるとコストの上限が5、レベル30でコスト上限が7、そしてレベルが40を越えるとコスト上限は最大の10となるとヒナが教えてくれる。
コストが3あればクラス1ジョブをメインに一つ、サブに二つ設定することができる。【戦士】がレベル30までカンストしていればクラス2ジョブの【重戦士】を取得できる。そうなればクラス2ジョブとクラス1ジョブを一つずつという組み合わせにもできる。
「俺にはまだクラス2のジョブは無理だから、クラス1のやつをあと二つ選ぼうかな」
「そうね。コストの許す限り取得しておいて損はないわ。使わなくてもサブにしておけばいいし、そのジョブが今後ジョブ2以降の取得条件になることもあるの」
「だよなぁ。さて、いちおう参考までだがお薦めはあるのか?」
「序盤のサブなら薬師がお薦めよ。【ポーション】を使ったときの効果が上がるの」
「《ヒール》の使える僧兵とかではなくて?」
「魔法は詠唱中に攻撃を受けると、発動失敗してしまうの。確実に回復したいなら慣れてないうちはアイテムに頼るほうが安心よ。【ポーション】なら使用後に即効果が見込めるわ」
俺はチュートリアルのウルフ戦で【ポーション】三本をがぶ飲みしたのを思い出した。
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【薬師】
転職条件: なし
コスト: 1
ステータス補正: なし
習得可能スキル
■《ポーション強化》
アイテム【ポーション】の回復値に+10%
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うん。サブで取得するなら悪くないだろう。
一つはこの【薬師】にしようと決めると、俺はリストをめくっていった。
そして、あるクラス1ジョブに目が留まった。一つだけ赤文字で表示されていたのだ。
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【狂戦士】
転職条件: 【戦士】レベル30
称号【向こう見ずな男】を所持
コスト: 2
ステータス補正: なし
習得可能スキル
■《底力》
現在HPが少ないほど攻撃力増加
最大値はHP1のとき攻撃力+100%
※一切の遠距離攻撃不可
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タップして【狂戦士】の詳細情報を見る。
転職条件は『称号【向こう見ずな男】を所持』とある。こんな特殊な条件のジョブもあるのか……。スキルは《底力》というのが一つだけ。しかしそのスキルはなんだか強そうだ。なんたって攻撃力+100%と記載されている。つまり与ダメージが二倍になるってことじゃないのか!?
「【狂戦士】……! 俺、この【狂戦士】ってやつにするよ」
「多分、タイガくんが思うほどの効果はないと思うわ」
「え、なんで? 攻撃力+100%だぞ?」
「説明文をよく見て。HPが1のときって書いてあるでしょ? その状態でモンスターと戦うの? 遠距離攻撃ができないから、低HPで接近戦をするジョブなのよ? あまりにもリスクが高すぎるピーキーなジョブだわ」
「あ……」
ヒナに言われるまで気づかなかった。HP1ということは一撃でもダメージを受けた瞬間、俺は死ぬのだ。ハイリスクハイリターン。まさしく諸刃の剣だ。
ヒナからはモンスターと戦うときはある程度のマージンをとって、リスクヘッジするのがセオリーだと指摘される。それに現在の<DO>の環境では、やられる前にやるというのが常套手段だ。【狂戦士】の低HPを維持しながら戦闘する手法は環境にマッチしていないのだ。その前に死んでしまうのが常だからだ。
「そういった理由から、【狂戦士】は人気がないのよ。転職条件に称号が必要な特殊なジョブなんだけれどね。他に有用なスキルもないし、それにクラス2ジョブだから、コストを2も使うわ。それなら他のジョブの熟練度を上げたほうがいいと思うわ」
「そうなのか……」
【狂戦士】は不人気ジョブのようだ。
俺はこの【狂戦士】というジョブを未練がましく見つめながら、ヒナと相談して三つ目のジョブを取得した。
結果、俺はメインを【戦士】のままにして、【薬師】と【騎士】をサブに設定した。
【薬師】には《ポーション強化》、【騎士】には《庇う》というスキルがある。実力で遙かに劣る俺がヒナを《庇う》で助ける展開はないと思うが、この先に有用なクラス2ジョブに就くためには、外せない選択肢だという。
そして新たな装備とジョブを手に入れた俺は、クエストを受けるため冒険者ギルドに向かうのであった。




