1話 「死にたい」って、
「ねぇ、奏真君。なんで人は 死にたいって言うと思う?」
彼女はストローでカルピスを混ぜながら言った。
氷がカランカランと鳴る。
けれど、五月蝿いとは感じない。
その言葉の真意に俺は少し戸惑った。
何故そんな質問をするのだろう。
少し考えてみた。何故「死にたい」というのか。
でも答えは導き出せない。
「わからない」
すると、彼女は一瞬苦しそうな顔をして、もう一度話し始めた。
「そうだよね、わかんないよね。普通はそうだもの。」
崩れた笑みを浮かべると、彼女はこう続けた。
「わかる私は 異常 なのかもね。」
彼女の顔は一瞬で悲しそうな顔に変わった。
何か、温かい言葉をかけようとしたが、そんな間もなく、彼女は言った。
「でも、よかったよ。奏真君はそういう人を悪く思ってるわけではないんでしょ?」
気持ちはわからない。けれど、何かしらの理由があることは何となく分かっている。
彼女の言う通り、悪いだなんて思っていない。
だから俺は、小さく頷いた。
「そっか、よかった。」
そう、息をつくように言うと彼女は目の色を変え、身を乗り出しながら言った。
「協力して欲しいことがあるの」
俺が目をパチクリさせると、彼女は笑いながら言った。
「別にそこまで真剣なことじゃないのよ。ただ、ちょっとしたお願い。聞いてくれる?」
「内容次第では…」
なんだか、たった一瞬でも彼女の悲しそうな目を見たからには断ることができそうにない。
また思う。俺は人に優しすぎるのかもしれない。
「ホント!?」
満面の笑みを浮かべた彼女に少しドキッとしてしまう。
彼女はそこまで可愛いわけではない。
一重だし、クマが出来ていて、上唇が少し太い。
それに、お世辞にも小顔とは言えない。
けれど、笑う顔は人一倍可愛いように見える。
「んとね、その内容ってのは…」
息を一旦落ち着かせ、真剣なトーンで言った。
「私が学校に行けるようにしてほしい。」
なんだ、そんなことかと最初は思った。
けれど、よくよく考えてみると不登校にとって学校へ行くというのは精神的にとても辛いはずだ。
しかし彼女には学校へ行こうという気があるらしい。
いやいや、こんなの逆に断れないだろ。
「いいよ。協力する。」
「ありがとぉ…」
半泣きになる彼女。
そんなに嬉しかったのか。
「で、具体的に俺は何をすれば?」
「凄く簡単。毎日…無理な時はいいけど、ここに来て話を聞いて欲しいの。」
少し照れた顔をして、彼女はいうが…男女だぞ?
やばくないか?そんなの…
「大丈夫なの?それ…」
「あっ、いや!違うの!よく考えて。私は君に恋愛感情を抱くこともない、それに君は恋愛が苦手でしょ?」
「なんで俺が恋愛苦手って…」
「顔とか態度とか服装とか。」
やっぱり俺は見た目から非リアに見えるか…
純粋に傷ついたぞ…
というか、普通に恋愛って言っちゃったし。
余計意識するだろ!
例え無くても…
「でも!君はOKした!今更拒否権ない!」
「まじか。」
そんな訳で皐 奏真と姫乃 百合のトッテモステキな日常が始まるのだった。