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展望の歌
*展望の歌*
この歌は今も
君に届いていますか?
憧れだった君
どこまでも飛んでいけそうな
背中の羽根に
僕はただ願いを重ねて
君が振り向くたび
ずきりと痛んだ心
君はとても上手だったね
色んな想いの溢れるこの世界
渦巻く螺旋さえも
纏いの衣に変えて
すうっと馴染んでゆく
洗練されたその技術
僕は眺めながら
皮肉に笑うしかできずに──
光を背に差し出された君の手に
いつもそっと
静かに手のひらを置くばかり
強気な眼差しで居続けたら
いつしか涙を忘れて
乾いた眼で探したのは
何だっただろう
君に世界の近さを感じて
君に世界の遠さを感じた
だから歌っていたんだ
浚いの歌を
夕暮れのあの丘で
沈みゆく陽を守りながら
己が穢れを祓うよう
浅ましい己への
蔑みの歌
凛々しい君の
傷だらけの両手に
小さな小さな鎮魂歌を
…ああ
この声は今も
君に届いていますか?
──僕は歌う
歌い続ける
優し過ぎた君への
弔いの歌
君を失ってしまった君への
展望の歌を──




