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安らぎの湖より
*安らぎの湖より*
爪先から足へ
足から胴へ
やがて上体すら
緩やかに呑まれ
静かで穏やかな
波のない凪
体温のような温度の
融けゆくような水の中
青青とした
空を見上げる
緩慢な仕草で
水面に腕を浮かべ
それを天へと
垂直に伸ばしてみた
重い腕
重い体
重い心
浅く深いぬるま湯
遥か彼方霞む岸辺に
ほんのひととき煌めく
形無い何かに向かい
泳ぎ続けるのは何故だろう
鈍感な腕
鈍感な体
鈍感な心
視界は柔らかな真綿
パステルカラーの優しい景色は
鋭利で透明な氷柱のよう
両腕に力を込めて
胴体を引きずるように
岸に上がった眼は
再び空を見上げた
ゆるやかに
ゆるやかに
雲は
流れ行く──…




