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涙金魚(なだきんぎょ)

作者: 中辺 流音

 覚えていますか?


 君と私が出会った、あの日のことを。



 あれは、君と私が高校生になったばかりの頃。


 君は新しいクラスで1人寂しく座ってる私に声を掛けてくれたんだよ。


 その時の君はどんな気持ちだったのかな?


 君は優しいから、きっと私が1人でいるのが気になったんだね。


 それでも、私はとても、とても嬉しかったんだよ!


 その時の君の言葉は今でもずっと覚えてる。


「す、少し喋ってもいいか、な?」


 君の声はとてもぎこちなくて、か細かったけれど、


 私の心には、きちんと届いたよ。


「わ、私なんかに、話しか、けて、くれて、あ、ありがとう・・・。」


 私の言葉も人の事なんか言えない、ぎこちない声だったけど、それでも、君は笑顔を私にみせてくれた。


 少し赤面した君のあの顔も、可愛かったです。




 覚えていますか?


 君と私が過ごした高一の日々を。


 君は意外とお茶目な子で、面白い子だったから、クラスのみんなを笑わせてくれたね。


 私も、笑うことが出来るようになっていました。


 あろうことか、一緒に笑ってくれる友達もいつの間にか出来ていたのです!


 文化祭で一緒に喫茶店をやった事も、とても楽しかったです。


 みーちゃんが紅茶をこぼしちゃったことも、たつくんが注文を全部ド忘れしちゃったことも、君がメイド服を着て大笑いしたことも、仕返しに私もメイド服を着させられてとても恥ずかしかったことも、クラスのみんなで頑張ったことも、


 全部が素晴らしい思い出となりました。


 この頃から、私は自然に


「ありがとう」


 って言えるようになったんだ。


 どれもみんな、君のおかげだよ!




 覚えていますか?


 友達と一緒に行った、高2の夏祭りを。


 君は珍しく、恥ずかしがってるから、


「どーしたの?」


 って聞いたら


「い、いやさ、君の浴衣がさ、その、可愛く、て」


「っ!!」


 私の方が恥ずかくなったよー!


 君は、金魚すくいがとても上手だったね。


 あの時貰った金魚はとっても大事に育てたよ。



 私は、みんなと花火を見るんだと思ってた。


 けど、君は私の手をとった。


「2人で見よう」って。


 私は、絶対に忘れない。


 君と見た、あの美しく空に輝く花火を。


 私は、絶対に、忘れない。


「好きです。」

「ーーーー!!私も、わたしも!あなたの事がーー!」


 あの日、一つの小さな恋が実ったことを。




 覚えていますか?


 高3の受験の時を。


「一緒の大学へ行こう。」


 君はそう言ってくれた。


「うん!」


 親御さんに、反対されないようにレベルの高いとこを目指して2人で一緒に頑張ったあの日々も、


 2人共合格して、一緒に泣いたあの時も


 とっても大事な思い出です。




 覚えていますか?


 2人で同じ大学に入り、


 そして同居!


 いきなり進展しすぎだよ!って思ったけど、そうでもなかったのかな?


 少なくても、私は嬉しかったよ!


「君と同じ屋根の下だね!」って言えて。


 大学の生活も、大変だったけど2人で頑張って卒業出来たね。


 卒業式も2人で泣いてたんだよ。


 涙は美しいのかもしれない。


 私はその時、そう思ったんだ。




 覚えていますか?


 あの夜のレストランのことを。


 君は私を豪華なレストランに連れ出して


「結婚して下さい」


 ダイヤの指輪とともに、君はそう言ってくれたね。


「ーーーーーーーはい。」




 覚えていますか?


 君と私の子供が産まれたあの日を。


 君と私の子供が、ちゃんと生まれてくれた時、


 君も私も、そしてあの子も。


 みんな揃って、いっぱい泣いたね。


 私はその時、確信したよ。


 涙は美しい。ってね。




 覚えていますか?


 君と私が離れ離れになった、あの日を。


「別に、別れるわけじゃないし、会えるんだから!」

「お、おう・・・。」


 ただ、私がちょっと遠くへ行くだけなのに、何故か君は涙を流していたね。


「じゃあ、あの子のことよろしくね!」

「おう、」


「ずっと、あなた、いいえ、あなた達のことを愛してる。」

「俺も、俺もあいつも、ずっと君のことを愛してる!」



 その涙も、とても美しかったよ。






 覚えていますか?


 君は、帰れない私のもとへ何があってもは君は何度も、あの子と一緒に来てくれる。


  二人も頑張るんだよ!


 私は、そう言うと決まって2人は


「絶対に会いに来るから。」


 忙しいのにそんなに来ちゃダメだよ?


「絶対に来るから!」

「うん。絶対に会いにくるよ、お母さん。」


  ありがとう!


  二人共、ずっと愛してる。







 覚えていますか?


 あの子が、自分の夢を叶えた時。


けど、私はだめだった。

私は、あの子の夢に報いることは出来なかった。


だめ、『あの子』泣いたらいけないよ。

その涙は美しくないからーーーー。


君は私を許してくれたのかな。

あの子は私を許してくれたかな。





 覚えていますか?


 あなたが私のところへ来た時のことを。


 そんなにはやくには来ないでね


 その言葉を守って、君はあの子とずっといてくれた。


 おつかれさま


 ありがとう


 本当に、本当に、愛してるよ。






せっかく、私のところにきたんだから!


私の知らない記憶の全てを教えてね?


『あの子』のことも、あの夏の金魚のことも


全部、全部だよ?










覚えていますか?



君と私が出会った、あの日のことを。



皆様、ごきげんよう。中辺流音です。


今回は初の恋愛ものですが、いかがでしたでしょうか?


この作品には、文字にはしていませんが、たくさんの仕掛けや隠し事を入れてみました。


是非、是非この作品の奥深くの場所まで読んでみてくださいね?


ただ、この物語には決まった真実はないと思っております。

皆様の想像したものもれっきとした一つの答えなのです。



[皆様に考えて頂きたい項目]


・覚えていますか?

何故こうやって聞く?


・『あの子』泣いたらいけないよ

誤字ではないです!なんで、名前で呼ばないの?


・私の知らない記憶 『あの子』のことや、金魚のこと。

知らない記憶?『あの子』はともかく、何故金魚?


・『あの子』の夢

ってなんだろう?



[最後に]

もし、自分の考えは合ってるのかな?

と、思いましたら感想などに書いて下さればお答えします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] あえて登場人物を名前で言わないことで想像する幅が広い所。答えがないから色々と考えさせられる所。 話の内容が感動できるところ。 [一言] twitterから少し見に来たんですが完成度の高さに…
[良い点] めちゃいい話だと思います [一言] これを読んで泣きそうになったのは僕だけですか………??
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