同室
部屋に戻って数分して、俊一の目覚ましが鳴った。それからすぐに、
「おはよう。塁」
とアコーディオンカーテンの向こうから声がした。
「起きたか?」
「うん……」
頷いてベッドから出ると、俊一がほっとした顔をした。
「どうしたの?」
「いつ部屋に戻ったんだ?」
ドキッとする。昨夜は雅人の部屋に泊まった。それを伝えていいものか、塁には見当がつかない。
「えっと……」
目を泳がせると、俊一は頭を押さえた。
「マジかよ……」
「何? 僕、何かとんでもない事しちゃった?」
目を潤ませると、俊一が困ったように腰に手を当てた。そのしぐさは同級生とは思えないくらい大人びていた。
「お前、昨夜どこにいたんだ?」
「雅人先輩の部屋に泊まっていた」
「雅人先輩っ? 何でそうなったんだ?」
塁は昨夜の話をした。
約束の時間に誰も現れなかった事。自分だけ仲間はずれにされて怖くなって部屋に戻ったら、部屋を間違えて雅人の部屋に行ってしまった事。
わけを話すと、俊一は呆気にとられた顔をしていた。
「何?」
「いや、普通は先輩と一緒に寝ないだろ」
変なツッコミをされる。
「どうして? 先輩優しかったよ」
「参ったな。ルールを破ると罰ゲームだぞ」
「大丈夫だよ」
心配顔の俊一をよそに、塁は自信満万に言った。
「雅人先輩に聞いたもの。幽霊なんかいないって言ってた」
「幽霊がいないのは分かってるよ。でも、真実がどうこうじゃなくて、みんなと行動したかどうかなんだ」
「だって、みんな俺だけを仲間はずれにしたんだよ」
納得いかない。口を尖らせたが、俊一の顔は晴れなかった。
「孝明先輩がどう動くかだな……」
ぽつりと呟いたセリフに塁は大丈夫だよ、と答えた。
「何が大丈夫なんだ?」
「だって、雅人先輩って、孝明先輩と同室だもの」
「バカ……」
俊一は額を押さえた。