"大天使 ミカエル" 登場
5秒間ほど輝き続けた白い光の中から小さな女の子が現れた。
背は140cmくらいで、艶のある金色の髪の毛をまっすぐおろしており長さは肩よりかは、少し長いくらいだった。
また服は白いワンピースを着ており、白い細い手と脚が惜しげなく出ていた。 そして、胸の前には小さな薄ピンク色のリボンが結んであった。
タクトは驚きのあまり口をぽかーんと開けたまま、その小さな女の子を見つめていた。
「こらこら、あんまり見つめないの」
ウインクしながら挑発するように女の子は言った。
タクトは、何がなんだか分からなくなり目を点にしていた。
「それじゃあ、ようこそ!! 影世界へ!!」
元気いっぱいのスマイルで女の子は、ハジけるように言った。
タクトは、自分の声とは思えないほどかすれた声でシャドーワールド、と呟いていた。
それに対して女の子は、無邪気な笑顔でこう言った。
「そうだよー。ここは脳死状態の人やお医者さんに『2度と目が覚めないでしょう』とか言われた人が誘われるところなの!!」
それを聞くや否やタクトは、
「ちょっ、ちょっと待て!」
自分でも驚くほどの反射スピードで叫んでいた。
それに対して女の子は、未確認生命体でもみたようにタクトを見つめ首を傾けた。
「脳死? 2度と目が覚めない? 何言ってんだよ!! おれはここで生きてるじゃねぇーか!」
タクトは、自分が今まさに死んでしまうのではないかという不安を消し去るために心の底から叫んだ。
女の子は、ゆっくりと目をつぶり小さく首を横に振った。
まるでタクトの存在意義を否定するかのように……。
「君がここで目覚める前の最後の記憶はどこ?」
小さくささやくように訊いた。
「えっと、クラスメイトとアイスを食べて補習だって言って別れたところ…」
語尾を濁らしながらタクトは答える。
「その後、君は大型トラックにはねられたの。
でも、君はその時のことがショックで記憶されてないの。
人間ってのは自分勝手な生き物でね、都合の良いように記憶を勝手に変換しちゃうの」
目尻にうっすら涙を浮かべながらもどこか呆れた様子で女の子は言った。
タクトは、鼓動が速くなるのを感じた。
「じゃ、お、おれは脳死なのか?」
「うん……。でも、この世界をクリアすると君は本当に目覚めることができるよ!」
女の子はできる限りの笑顔を浮かべてくれながら言っていたが、表情までは変えられず曇っていた。
「ど、どうすればいいんだ?」
タクトは、必死になり体を前に押し出して聞いた。
「それじゃ、今からこの世界のことについて説明するね」
「お、おう」
タクトは、反射的に反応した。
「まずは自己紹介! 私の名前は"大天使 ミカエル"です!」
元気を取り戻した女の子ことミカエルは、この短い間で1番輝いた笑顔を浮かべて自己紹介をした。