週末バトルロイヤル Ⅲ
光に包まれながらタクトはデスペナルティから開放された。
「何だったんだ…。訳わかんねぇーぞ」
タクトは1人で呟いた。
桜は周りにいない。
「桜も殺られたのか…」
自分の弱さを嘆くように呟きイエローソードを握り締めた。
ドサっ。
光に包まれた人が現れた。
「さ、桜!」
タクトは叫んだ。
「タクトっ!」
桜も叫んで、2人は互いに駆け寄った。まるで、遠距離恋愛の恋人同士が久しぶりに逢ったように…。
「大丈夫だったか?」
タクトは訊いた。
「うん、タクトこそ大丈夫?」
「あぁ。それよりもクリアネットは?」
「分かんない…。もうこの場を立ち去ったんじゃない?」
そう言うや否やまた光に包まれた人が現れた。
銀髪に目の色が青い外人だ。
「く、クリアネット!!」
2人は同時に叫んだ。
クリアネットは何も応えずに2人に歩み寄りはじめた。
そしてアニメ声でタクトを指差しながら言った。
「あんた、何者?」
「お、おれか?」
タクトはたじろぎながら訊くとクリアネットは頷いた。
「おれは桜のペアだ。それ以外に何者でもない」
強く言い張った。
「はぁ!? えっ、じゃあ…いや、何でもない」
気になる言い方をしながらもクリアネットは言いかけの言葉を飲み込んだ。
「何なんだよ」
ぶすっとしながら言った。
「何があったの? 貴女が私たちを殺ってから」
桜は冷静に訊ねた。
「な、何もなかったわよ!」
「何もないわけないでしょ? 貴女が殺られてたんだから!」
「不意を突かれたのよ」
目を泳がせながらクリアネットは応え続けた。
「今回の週末バトルロイヤル、私もあなた達と一緒に闘わせてもらっていい?」
突然の誘いにタクトは戸惑い桜を見た。
それに気づいた桜は訊ねた。
「何が目的?」
「目的、か…。あえて言うならタクト君に興味が出た、かな?」
クリアネットは可愛らしい笑顔を浮かべてそう言った。
2人はしぶしぶクリアネットの提案を承認して3人で動き始めた。
「なぁ、クリアネット。訊いていいか?」
タクトは言った。
「いいわよ」
クリアネットは応えた。
「お前の千年歌って一体何なんだ?」
「千年歌は広範囲に催眠術をかける技よ。 距離が遠くなればなるほど効力は弱まるわ」
タクトの問いにクリアネットは丁寧に応えた。
「チョッ、嘘でしょ!? 催眠魔法とかって天使しか使えないんじゃないの!?」
桜は慌てながら言った。
「そうね。でも、いるそうよ、何百人に1人っていう確率でね。私はたまたまその1人だったってことよ」
「へ、へぇ…」
呆気に取られながらも桜はもう一つ訊ねた。
「じゃ、私に使った天使声ってどんな技なの?」
「んー、あれも催眠術何だけど、範囲がかなり狭いの。けど、効力は最強よ。
千年歌の5倍以上はあるわ」
クリアネットはそう応えて立ち止まった。
「どうした?」
2人の会話を聞いていたタクトが会話が途切れたことに不信感を抱き訊いた。
「誰かいるわ」
クリアネットは短く応えた。
それを聞いた2人は剣と杖を構えた。
遠くから足音が聞こえた。
「そうそう構えるなよ」
少し高い男の声が聞こえた。
3人は無言だ。
「けっ、無視かよ!」
1人で話し続けるその男は3人の目の前に来た。
「さぁ、俺の喧嘩を始めよーか!!」
アシメがかった髪型のグラサン男は少し高い男の声でそう叫び3人に襲いかかった。