週末バトルロイヤル Ⅱ
「私の名前はイサ・クリアネット」
クリアネットは短く名乗った。
それに続いてタクトと桜も名を告げた。
「さぁ、始めましょ♪」
アニメ声のクリアネットはそう言い、”短剣 ダガー”を構えた。
その様子を見て、タクトはイエローソードを桜は魔法の杖を構えた。
しかし、クリアネットはタクトたちを見つめるだけで動こうとしない。
タクトは焦った。
今までの戦闘で自分から攻撃を仕掛けたことがないからだ。
敵の攻撃を見てから弱点を見つけ出し攻撃する。
これがタクトの戦闘スタイルだったからだ。
対峙してからもう30秒程経つ。
タクトは痺れを切らし、地面を蹴った。
『大丈夫。クリアネットのダガーはどの武器屋でも売ってる安物だ。おれの剣が負けるはずがない! 勝てる!!』
そう自分に言い聞かせタクトは間合いを詰めていた。
そして、斬れる間合いに入った瞬間、クリアネットは目をつぶった。
「千年歌」
タクトはクリアネットを見た。
攻撃してくる様子は無い。ダガーも光っていない。
不思議に思いながらも剣を上方に振り上げた。
その時だった。不意に強い眠気に襲われた。
「うぅ…。なんだ、、。きゅ、急…に…ねむ…む…た…」
最後まで言うことなくタクトはその場で寝息を立て始めた。
桜はクリアネットが千年歌を放ったその場所から離れていた。故に効力が弱くなったものを受けた。
しかし、気を抜くと眠りについてしまうくらいの効力はある。
桜はその様子を驚きを隠せない様子で見ながら自分に襲いかかる眠気と戦っていた。
その戦いも虚しく、クリアネットは一瞬で桜に近づき耳元で小さく 囁いた。
「天使声」
回避することも、耐えることも出来ずに桜もその場で寝息を立て始めた。
クリアネットは手に持ったダガーを使い、タクトと桜の心臓を一突きした。
その瞬間2人はその場から消え、デスペナルティとなった。
2人の救いは今が週末バトルロイヤル中でレベルダウンがないことだった。
タクトと桜の両方を仕留めたクリアネットは次の獲物を狩りにその場から去ろうとした。
その時、遠くから一筋の光が迸った。
クリアネットは瞬時によけた。
カシャ、カシャと足音がクリアネットに近づく。
黒いフードで顔を覆いはっきりと見ることはできない。しかし、身長はかなり高い。
「誰?」
アニメ声のクリアネットは訊いた。
「君には関係ないよ。ただ、タクトとその友を殺すやつは許さない」
黒いフードの人はかなり低い声で言った。
男か、そうクリアネットは思いながら続けた。
「私が誰と闘い、勝とうと関係ないでしょ」
「本来は関係ないがタクトとその友だけは別だ」
そう黒いフードの男は応え、フードを外した。
「なっ、お前は…」
クリアネットは絶句した。
「そうだ、私はーーー」
黒いフードは応えてから、腰にさげた銃を抜き銃口をクリアネットに向けた。
「高速銃」
銃弾を放った。
クリアネットはよけようとした。
しかし、技名の如く速すぎてよけれず、撃たれて消えた。
「悪く思うなよ」
そう言いながらフードを被り直しその場を立ち去った。