勝利
斬られる! そう思った瞬間、一筋の光が迸った。
その光は龍也の刀に命中し、数メートル先まで弾いた。 タクトは辺りを見渡した。 ーー誰もいない。
そうこうしてるうちに龍也は弾かれた刀を拾いに行く。
痛みを堪えて、桜に駆け寄り耳元で囁いた。
「大丈夫か?」
「うん、大丈夫。タクトこそ大丈夫?」
桜は囁き返した。
それを聞くと桜の前に立ち塞がる様に立ち上がり
「大丈夫だ!」
と笑顔つくり応えた。
「なめるなよ、クソガキ共がー!!!」
刀を拾った龍也は叫び、タクト達向かって走り出した。
タクトは微動たりせずにその場で迎え撃った。
右側からの水平斬り。 イエローソードを縦向きにして受け止める。 上方向からの斬り下しに対して横向きで、次の下方向からの斬り上げを後ろへよける。
そんな攻防を何十回と繰り返していた。
「はぁ、はぁ、はぁ…。 やるなクソガキ…」
「はぁ、はぁ…。 お前もな、オッサン 」
2人は息を荒くして言い放った。 桜はその闘いに手を出すことができず、ただ龍也に追い込まれた場所に座り込んだままだった。
2人は見つめあったまま動かない。
不意にタクトは視線を桜の方へ向けた。 桜は戸惑った。
龍也はそれ見逃すことなく、タクトの視線の先へ目を向けた。
タクトは口元を釣り上げ、不敵な笑みと共に龍也との距離を詰めた。 視線を動かした龍也は反応が遅れた。
「くそっ、誘導か!」
悲鳴にも似た声を上げた。
「ふん、気付くのが遅かったな」
不敵な笑みを浮かべたままタクトは右斜め方向へ剣を振り下した。 綺麗に肩から右斜めに斬った。
その斬り口からはスパークが発生していた。 イエローソードのプラス効果だ。
「うぅ…」
疼き声を漏らしながらタクトを睨みつけた。
「そう、睨むな。 桜、いくぞ!火球弾だ!」
タクトは叫んだ。
「あっ、うん! 攻撃魔法 火球弾」
桜は魔法の杖を振った。 火の玉が龍也を襲った。
「うおぉーー、熱い!!」
悲鳴に近い声で龍也は言った。 そんなのお構いなしにタクトは走って近づき
「アッパースラッシュ!!!」
と叫び龍也を切り裂いた。
龍也は消えた。 デスペナルティだ。
ピコン。
多機能性レベリング測定器から音がした。
”Takuto Lv.6 Lv.7までモンスター2勝、人1勝”
画面上にそう表示があった。 タクトは満面の笑みを浮かべ桜に叫ぶように言った。
「やった、Lv.7だ!!」
桜はそれに対して笑顔で応えていた。
2人はネロシティの宿屋。 現在の2人の家に戻ろうとしていた。
その途中で桜は訊いた。
「私があの男に斬られかかった時助けてくれたのってタクト?」
「いや、おれはあの時動けなかったんだ。 桜が魔法使ったんじゃないのか?」
「うんん、私何もしてないよ」
「じゃあ、誰だったんだ、助けてくれたの」
「分かんない。でも、タクトが勝ててよかった!」
「1人じゃ、勝ててなかったかもな」
タクトは照れくさそうにそう言った。
2人はそうしてネロシティの宿屋へ戻っていった。
2人が会話しているはるか後ろ、手に銃を持った1人の影があった。
「タクトが勝ったか…。
まぁ、あいつが殺られるには早すぎるな。
いつかここまで来いよ、待ってるからな。」
1人で呟きタクト達とは逆方向へ消えていった。