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影(シャドー)を制する英雄  作者: リョウ
第1章 〜影世界〜
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対人戦開始

「ねぇ、タクト?」


「ん?」


「今日、対人戦でいくの? それとも対モンスター戦?」


 ネロシティを出て少ししてから桜はタクトに訊ねた。

 タクトは悩みながら答えた。


「対人戦だな! モンスター戦はこの前やったし」


 それを聞いて桜は深いため息をつき、呆れ顔で訊く。


「どこに(サバイバー)がいるか分かってるの?」


「さぁ?」


 と応えた後「何とかなるさ!」と笑顔で言った。


 それに聞いてまた桜はため息をついた。


 しばらく歩いていると、少し離れた草の影の辺りで”ガサッ”と何かが動く音がした。


「来たみたいね」


 桜は言った。


「おいおい、嘘だろ。 気付かなかったらモロ不意打ちじゃねぇーか」


 少しパニックを起こしているタクトは早口で言った。


「当たり前じゃない、ゲームの世界じゃないんだし。

 もしかして、平等に向き合って戦闘開始(バトルスタート)とでも思ってた?」


 不意打ちに備えて周囲に気を配りながら桜は言った。


「悪い、マジでそう思ってた」


 バツが悪そうに応えた。


「いいわよ、もう! これからは覚えておいてよね!」


「おう…」


 短く消え入りそうな声で応えながら周囲に目をやった。



 黒い影? タクトの視界の隅に何か動くもの捉えた。

 タクトは音を立てないように腰に差してあるイエローソードを抜いて動くものが見えた方へ勢いよく走り出した。


 「ちょっ、タクトッ!!」


 桜は叫んだ。 しかしタクトはそれを無視して(スキル)名を叫んだ。


「アッパースラッシュ!!!」


 かけ声と共にともに光に包まれるイエローソード。

 タクトはその剣を斜め右方向へ持ち上げ、音がしたと思われる場所で振り下ろした。

 ”キンッ!”剣と剣の交錯音がした。


「くっ…」


 タクトはそう声を漏らしながら交わっている剣を戻し体勢を整えた。

 後ろから桜は駆け寄り「無茶しないでよ」と半べそで言った。


「悪い」


短く応えたタクトはイエローソードを構え直し叫んだ。


「さっさと出てこい!!」


 タクトが斬りかかった草の影から身長180センチほどで体には防具を身にまとい、右手には長い刀を持っている人が現れた。

 髪は長くもなく短くもない長さで、前髪は左に寄せていて左目が隠れる隠れないかという感じだ。

 目は細くつったような感じで、ヒゲも生えており武士って感じの顔だった。


「見つかっちまったな」


 笑いながら応える。


「お前は誰だ?」


 低音ボイスでタクトは聞いた。


「オレ様か? オレ様は榊原龍也(さかきばらたつや)。 みんなからはドラゴンって呼ばれてるぜ」


 高笑いをしながら龍也は応えた。


「何がドラゴンよ。 気持ち悪いわね!」


「そう言うなよ、嬢ちゃん」


「何が嬢ちゃんよ! ふざけないでくれる?」


 桜は叫ぶように言った。


「落ち着け、桜」


 できるだけ穏やかな声でタクトは桜に声をかけた。


「あぁ、ごめん…」


そう応える桜にタクトは首を横に小さく振り龍也の方を向いた。


「そう怖い顔すんなよ、兄ちゃんよ」


 腹が立つ心を抑えて「勝負しろ」と低く言った。


 桜は隣で目を丸くしていた。


「ふんっ、面白いやってやろうじゃんか。 ちなみにレベルは18だからな」


 嘲笑うかのように言った。


「おれは5だ。 だが負けることはない」


「ほーう。理由を聞こうか」


「桜がいるからだ!」


 強くタクトは言うのに対して桜は驚きが隠せない様子だ。


「面白い!」


 龍也はそう叫ぶと同時に地面を蹴りタクト向かって斬りかかった。

 タクトは間一髪で体を右側に倒しよけた。


「今のをよけるか。 レベル5にしてはやるな」


 そう言いながら倒れているタクトを追い込むように刀を振り下ろした。


防御魔法(ディフェンスマジック) 炎壁(ファイアーウォール)


 大きな魔法の杖を持った桜は叫んだ。


 タクトの周りは炎の壁で包まれた。


 龍也は近づけない。 その間にタクトは立ち上がった。


「けっ、そう言う事かよ」

 

 毒づきながら龍也は炎の壁が消えるのを待った。


 炎の壁が消えるか消えないかという微妙なラインの時、タクトは炎の中から龍也向けて走りだした。


  うおおおーー!

 イエローソードを面をくらっている龍也に振り下ろした。

 

 うわぁ!龍也が声をあげた。 肩をおさえている。


 タクトは肩を斬ったんだ、と思った。


 はぁ、はぁ、と息を荒くする龍也。


「調子にのんなよ、クソガキどもがー!!!」


 怒り狂ったように叫んだ。


 肩の辺りでバチ、バチと電気が弾ける音がする。

 イエローソードの効果なのであろう。 しかし、それを意にも介せずタクトと桜目がけて走ってきた。


斬矢張(きりやばり)!」


 自分の間合いに入ると龍也は叫んだ。


 するとタクトの剣技(ソードスキル)発動時と同様に龍也の刀も光に包まれた。


「やばいわ、刀技(カタナスキル)よ」


 桜は早口でタクトに伝わる程度の声の大きさで言った。 タクトは無言で龍也を見ていた。


 龍也は刀を自分の後ろに回してから思いっきり前にスライドさせた。 タクトはイエローソードで受けようとした。 が、龍也の(スキル)が早すぎてまともにくらった。


 ぐはっ!! タクトは後ろに吹き飛んだ。


 タクトが受けたために無事だった桜はタクトの元へ駆け寄った。


「ねぇ、大丈夫でしょ? やられないでよね?」


 涙を流しながら叫んでいた。

 タクトは左横腹を斬られていた。

 この世界の規則(ルール)上血は出ないが、痛みはある。 激痛のあまり立つことも難しいタクトは歪んだ笑顔で大丈夫だ、と応えていた。


「本当に?」


「あぁ、だが少しだけ休憩させてくれ」


 消え入りそうな声でそう言うと、うん、休んでて、と桜は応え、龍也に向かった。


「そろそろ殺させて貰えうぜー」


 血走った目つきでそう叫ぶ龍也に向かって


攻撃魔法(アタックマジック) 火球弾(ファイアーボール)


 と叫び火球弾(ファイアーボール)を飛ばした。

 

 龍也はそれをよけながら桜に近づく。 当たったのは1つだけで、桜の首を掴んだ。


 「これで終わりだ、嬢ちゃん」


「くっ、やめてってばっ!!」


 桜は苦痛の声をあげた。


 くそっ、動け! タクトは自分の体に言うが応えてくれそうに無い。

 そうしている内に桜は地面に投げ落とされていた。


 そして血走った目つきで刀を振り上げた。


「さようなら、嬢ちゃん。 オレ様のレベルアップに貢献できることを嬉しく思って死ね!!」


叫び声と同時に刀を振り下ろした。

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