VS ゾンビ族 Ⅲ
必死に走る桜を横にルールベットは、面倒くさいそうな顔つきで走る。
「関わらない方がいいと思うよ」
ルールベットはそう忠告する。しかし、桜は頭を振る。
「ここで見てない振りするほうが後悔するから」
桜は強い意志を見せつけた。
ルールベットは鼻で笑う。
「変わったね」
ぼそっと呟いた。
「ふんっ!」
龍也は刀を振る。ゾンビ族はそれに慣れてきたのか、ひょいとよける。
「こいつ、学習能力あんのかよ」
タクトは奥歯を噛みしめ、言い漏らす。
「ここまでできるとは思ってなかったわ」
ミカエルは額から流れ落ちてくる汗を拭いながら口走る。
「おぉーい!!」
そんな時、少し離れたところから女の子の声が響いた。
「援護?」
満緒は声のした方を向きながら呟く。
「おいっ!!」
タクトはゾンビから視線を逸らした満緒に叫んだ。
そして、一気に地面を蹴った。
「なによ……」
そう吐きながら視線を戻そうとした瞬間、自分の置かれている状況を把握した。
目の前にゾンビが来ており、今にも襲ってきそうな状態であった。
しかし、体は咄嗟のことであり反応しない。その場からピクリとも動くことが出来ないのだ。
激しい咆哮と共にタクトが満緒とゾンビの僅かな隙間に入り込む。
刹那、ゾンビが前にたれた手を振り上げて攻撃をした。
「うぅ……」
直撃したタクトはその場に倒れた。
荒々しい呼吸で、激しい痛みだということがひしひしと伝わってくる。
「タクトっ!!」
満緒は涙ながらに叫ぶ。
「だ、誰か倒れたわっ!」
その様子を離れた場所から見ていた桜に緊迫感のある声で言う。
「あれは……、タクトくんだわっ!」
恐れに支配されそうな、そんな声音で叫ぶルールベット。
それを聞くや否や、桜は目の色を変え、魔法を使う準備を始める。
「ちょっ、ここからだとまだ遠いわよ!?」
「問題ないわ」
桜は静かにそう言い放つ。
凄まじい速さで白い光が桜を包み込む。それは、すぐ隣にいるルールベットでさえも桜の姿をハッキリと見ることが不可能なほどの光だ。
「完全詠唱 絶対聖域!」
桜が怒気のこもった声で言うや、大理石のような白い石の上を透明感のある白い光が迸る。
瞬く間にゾンビがいる所へと辿り着き、ゾンビを飲み込む。
奇妙な、異質な声を上げ、今まで何をしても倒せなかったゾンビが完全に姿を消した。
その攻撃に巻き込まれなかった他のゾンビたちは顔を見合わせた。
元々顔色なんてないゾンビだけど、更に顔色を無くしたように見えた。
「タクトっ!!」
倒れたままのタクトに桜は呼びかける。
やっとの思いの再会。タクトは倒れたまま、力なく微笑んだ。